知らないうちに異世界に来て、死にかけて、呪いをくらい、記憶も失ったけど、元気に地球まで帰ろうと思います。

第二章 異世界交流と地球人たちと邪神討伐

#45 脱女装と邪神と神殺し

［まずは小手調べだ］

そう言うと邪神は物凄い早さで接近し、俺に上段から大剣を振り下ろした。
避ける暇が無かったので『桜』で受け止める。

『ガッキン！』『ズズンっ！』

「うおっ！」

あまりの力に足が地面にめり込む。

［ほう、この早さと力についてくるか！］

邪神はそう言って今度は横凪ぎに降るって来たので、しゃがんで避けて、下から斬り上げる。

『ズバッ！』

手応えはあったが、直ぐに傷はふさがる。

［避けて反撃までするか、人の身でそこまで高めるとは、誉めてやろう］

「そりゃどうも、それよりも多少は痛がれよ、効いてないのかよ？」

［我ら神には痛覚は無いからな、多少は効いているのではないか？］

「多少ですか(笑)じゃあコツコツいきますか！」

そう言って今度は俺から攻める。
背中の魔道具も使って速度を上げる。

『ガキンッ！』

受け止められるが直ぐに魔銃を撃ち込む。

『ドカンっ！』

肩に当たったが大して効いてなさそうだな。
ちょっと吹き飛んでまた元通りだ。

その隙に更に刀で斬る、斬る、斬る。

『ズバッズバッズバッ！』『ガキンッ』

また阻まれるが魔銃と『桜』で攻めまくる！

『ズバッズバッガキンッ』
『ドカンッドカンッ』
『バキン！ガキンッ、ズバッズバッバキン！』

こちらも大剣を何度かくらい、鎧が一部壊れていく。
邪神の速度が徐々に上がり、こちらも限界まで身体強化をして対処するが、全く余裕がない。

どれくらい経っただろう、数分か十数分だろう。

［ハハハハハッ、これでもまだ凌ぐか！これぞ闘争だ、タツキと言ったか、お前も楽しいだろう！］

「あいにくそんな余裕はないよ」

鎧は肩当てが１つとスカートみたいなのが一部破損している。
体に傷は無いが目が回っているな。

「タツキ！そいつはおかしいわ！前の邪神の一部はそんなに強くなかったのよ」

［それは当然だ、我を足１つと一緒にするなよ］

「それはどういう事？何故あなたがそれを知っているの？」

［我らは全て繋がっている、そして我は頭、両手、両足が集まった姿だ、数千年前と同じではないが、それでも当時の力をかなり取り戻している］

「そんな！」
「・・・つーかそれよりも周りの被害がとんでもないな」

エリーさんと邪神が話している隙に周りを見回すと、召喚組は神殿騎士と戦っていた。
ざっと見た感じ問題ないだろう。
ただ俺らと邪神の戦いに巻き込まれたら、どうなるか分からない。
今も本気で動きっぱなしだから地面も本陣も目茶苦茶だ。
これで魔法まで撃ったらヤバそうだな(汗)

「テル、俺の援護出来るか？」
「誰に言ってるのよ、当たり前でしょ！今日は準備してきたからちゃんと見えてるよ」
「そうでしたね、なにせ『蒼炎の魔導神テルミーナ』だもんな(笑)」
「もう、タッチャン！」
「さて邪神さん、ちょっと場所を移していいかい？」

［闘争があるのであれば、場所は何処でも構わない］

「そいつは助かる、テル！さっき渡した魔道具に魔力を込めてくれ！座標は奴の足元だ！」
「了解！」

テルが魔道具に魔力を込めるとゲートに似た亜空間の入り口が邪神の足元に出てきた。
そのまま邪神が亜空間に入る。

これは人の入れる亜空間を作る魔道具だ。
普通に出入りは出来るが、亜空間の中は一面何も無い荒野になっている。
だが一度中に入ってドアを閉めると、もう中から開けるしか無いので、邪魔も入らない。
ぶっちゃけ魔法や兵器の実験の為に作ったものなので余計な機能は付いていないが、中はかなり広いので戦うにはうってつけだ。

『ゴクンッ、おっ！これは旨いんだな』

切り札の薬を飲んで俺も亜空間に入る。

「じゃあエリーさん後はよろしく」
「私もタッチャンと行ってくるね」
「・・・待ってるわ、早く戻ってくるのよ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

亜空間に入ると俺の体が輝き出す。
薬の効果が出てきたな。
胸が少し膨らみ、身長が少し縮む。
喉仏が無くなり、そして息子との暫しの別れだ(涙)

そう、俺が飲んだのは性別を逆にする薬だ。
エリーさんに鑑定してもらい、効果時間が12時間あったあの薬だ。

確か鎧を着たときは65%だったよな。
『可愛い呪い』の指数はどうなってるか見てみるか。

※※※※※※※※※※※※※※※※※
【可愛い呪い】(解呪不可)
呪い対象者に自身が可愛いと思う姿を強制する呪い。
呪い対象者自身が可愛いと思う姿をしないと身体能力全てを低下させる。
顔や体つきも『可愛い判定』に付随するため、美の成長補正も付いている。
下限は100分の1
上限は不明
現在の指数　150％
※※※※※※※※※※※※※※※※※

まぁそうだよな。
俺的には、男がどれだけ可愛い姿をしても、女には敵わない。
お陰で体が軽いし、目も回らない。

［貴様、一体何をした？］

「説明したろ、場所を移したんだ、俺らを倒して後ろのドアを開ければ戻れるよ」

声が少し高くなったな。
つーか前も女っぽい声だったけど、もう完全に女の子だなぁ(涙)

そして後ろのドアからテルが入ってきて、ドアを閉めた。
これで完全密閉だ！

［そうではない、貴様の気配が変わった、何をした？］

「・・・ちょっと性別を変えただけだよ」

［性別を？それだけか？］

「俺がやったのはそれだけだ、それとも性別が変わったら闘争とやらは終わりか？それだとありがたいんだけどな」

［闘争に終わりはない、これからは手加減無しでいこう］

「テル、適当に合わせてくれ！さぁ行くぞ邪神、こっちも掛け値なしの本気だ！」

性別を変えて一番変わったのは魔力だ。
他も２倍近く上がっているが、魔力は10倍近く上がった。
なので身体強化も内と外からやって更にパワーアップしたし、武器に込められる魔力も段違いだ！

「おらぁぁぁぁ」

『ガッキン、ズパン！！』

［ぐわぁっ、貴様！］

こうして大剣ごとぶった斬れる！
まぁ大剣は奴の体の一部らしくて、直ぐに再生されるんだけどね。
そして間髪いれずにテルの魔法だ。

「シャイニング・ジャベリン！」

『ドスッドスッドスッドスッ』

［ぐわっ、くっ動きが！］

そして少しでも隙が出来れば大ハンマーでぶっ叩く！！

「おらおらおらおらおら！」

『ゴンッゴンッゴンッゴンッゴンッゴンッ』

［くっ、舐めるな～！！］

邪神も大剣を振るい魔法を打ち砕く。

「おらぁ！」

［させるか！］

俺が斬りかかると邪神は大剣で受けずに、被弾覚悟で俺にカウンターで斬りかかってくる。

「ぐぁっ！」

鎧が砕けるが、体は無傷だ。
外からも強化しているからかなり丈夫になってるな。
多少痣になるくらいかな？

［貴様、さっきまでとは違うな！］

「くだくだうるせぇ、さっさとやるぞ！」

［フハハハハッ面白い！勝負だ！］

そうして数時間に及ぶ戦いが始まった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

かれこれ何時間戦ってるんだろうな。
もう俺の鎧は影も形もない。
破れたブラウスに傷だらけのホットパンツ、数ヶ所穴の空いた黒タイツだけになっている。
テルは被弾はしていないが、かなり疲労しているな。
俺と邪神の高速戦闘を見ながら、隙を見つけては援護してるから、頭も目も痛いだろう。

邪神はかなりダメージを与えたと思う、多分(汗)
攻撃が当たる度に段々黒さが無くなって、白くなってきたんだよな・・・。
傷は直ぐに消えるから他に判断基準が無いんだよ。

「タッチャン大丈夫、邪神をかなり追い詰めてるよ」
「その言葉を信じるよ！」

『スパンッスパンッスパンッドゴンッドゴンッ』

俺の動きは戦闘開始時から更に良くなっている。
『可愛い呪い』の指数はこんな感じだ。

※※※※※※※※※※※※※※※※※
【可愛い呪い】(解呪不可)
呪い対象者に自身が可愛いと思う姿を強制する呪い。
呪い対象者自身が可愛いと思う姿をしないと身体能力全てを低下させる。
顔や体つきも『可愛い判定』に付随するため、美の成長補正も付いている。
下限は100分の1
上限は不明
現在の指数　320％
※※※※※※※※※※※※※※※※※

まぁ女の子は鎧よりも服の方が可愛いよな。

・・・・そうだよ！服が破れるたんびに上がってるよ。
だって女の子は薄着が一番可愛いじゃん！！
でもタイツは必須だけどね！(俺基準)

そんな訳で邪神の攻撃はもうほとんど当たってないし、素肌に当たっても気合いと強化魔法で弾いてる！

［我をここまで追い詰めるとはな、いいだろう、これで最後だ！］

そう言うと邪神を中心に大きな魔法陣が地面に広がって行く。

「なんだこれ？・・・まさか自爆技か！」
「タッチャン一気に攻めるよ、発動する前に止めを！！」
「分かった！」

まずは時間稼ぎだ！

「『あーる』『える』『オールシールド』出ろ！テルは一番強いのぶちこめ！俺は時間を稼ぐ！」

『ドドドガガガガガガカガォォォォン！！！』

［ぐうぅぅ］

『ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ』

魔銃で牽制しながら邪神の廻りに盾を突き刺し、魔法の威力を内部に閉じ込めるように結界をはる。

『ドドドガガガガガガカガォォォォン！！』

「タッチャン行くよ！」

「おう！」

後ろに下がるとテルの魔方陣が見える。
3m級の魔方陣が宙にいくつも浮いている。
魔言語からして・・・炎だなぁ(汗)
本当に火が好きだなこの娘、本当にエルフなのか？

その間に俺は準備に移る。

「オリジナル合成魔法『公正な滅びの種火！』」

宙に浮いていた魔方陣がテルの人差し指の先で重なり、野球ボール程の青い火の玉が生まれた。

テルが指先を降ると火の玉は邪神に向かっていき、着弾すると様相が変わった！

邪神を中心に5m程の青い炎の玉が出来て中で炎が荒れ狂う！

［ぐわぁぁぁっ、これはっ！この身に熱さを感じるこの炎わ！貴様は『蒼炎』か！］

邪神の展開していた魔方陣もその速度が急激に遅くなる。
炎の玉も輝きを増し、邪神を包み込む。
魔法の効果が終わると、邪神が姿を表した。

再生がもう出来ないのか片腕が燃え尽きている。
その他にも傷が目立つな、効いてる効いてる。

［くくくっはははははっ耐えきったぞ！さぁ後少しだ、貴様らはもう終わりだ！］

「終わるのは貴方だよ、邪神さん」

邪神の問いかけにテルが答える。
すると邪神も俺が居ないことに気が付く。

まぁ気がついても遅いけどな！

「貴様！アイツは何処だ！」

「タッチャンはあそこだよ」

そう言ってテルは上を指差す！

邪神が上を見上げると俺は空にいた。
背中に10m級の魔方陣を3つ描いて、巨大な青い刀を突き出し、邪神に向かって行く！

「喰らえ～～～～！！」

［ぐっふ！］

蒼い刀が胸から背中まで貫き、地面に縫い止める。

「こいつはおまけだ！！」

『ドスドスドス！』

『銀』『桜』『蒼』を次々と邪神の体に突き刺していく！

［くっ！］

そして背中の魔方陣が2つ輝き出す！

「極大魔法『神殺しの紅雷』×2(多分)」

『ズッドーン、バリバリバリバリバリバリ』

［ぐわぁぁぁ・・・何故我が痛みを感じるのだ！ぐっふっ！］

テルの『神殺しの蒼炎』をアレンジした雷系の極大魔法だ！
効果範囲は狭くしてその分威力を上げてある。
紅い稲妻が盾の内側で荒れ狂う！
多分神殺しってついてるから邪神にも効くんだろう。

「大ハンマー出ろ！」

大ハンマーはヘッドの部分にアタッチメントを付けて、ドラム缶サイズの大ハンマーになっている。
『可愛い呪い』の指数が100%を越えたから振り回せる代物だ。

「『神殺しの紅雷』付与！」

最後の魔方陣が輝いて大ハンマーに紅い稲妻が帯電する。
大ハンマー自体がブルー製で青いので、赤と混じって紫色に輝く。
こいつは一発限りの付与になる、多分これが俺の最大火力だろうな。

「こいつでトドメだ、俺式必殺技！！！神殺しの紫電鎚！！！」

『ドゴズンッ！ズッドーン、バリバリバリバリバリバリ！！！！』

戦鎚を振り抜いた瞬間に轟音が鳴り響く！
俺も多少喰らってビリビリする。
大ハンマーを放してテルの近くまで退く。
自分の魔法だからこの程度ですんでるんだろうな。

「ヤベーな、ノリで必殺技とかやるもんじゃないな、まだビリビリするよ(笑)」
「あれノリだったの！？」
「そうだよ、本当は極大魔法３連発で行こうと思ったんだけど、ヤッパ最後はぶん殴りたくなってな」
「邪神の魔方陣も消えたしこれで終わりだね」
「長かったな～、つーかもうこんなの御免だ」
「ふふふっ、そんなこと言ってもタッチャン良い顔してたよ」
「そうか？まぁ少しは楽しかったかもな(笑)」

稲妻が収まるとそこには大刀、３本の刀と大ハンマー、そして巨大な魔石と神官のオッサンが倒れていた。

「しぶといオッサンだなぁ」
「何か出てきたよ」

オッサンの胸の所から白く光る玉が出てきた。
上に浮かんで行くので、取り敢えず掴む！
掴めたな・・・これなんだ？
何か動いて逃げようとしてるな？
更に魔力を込めて逃げられないようにする。

「テル、これなんだ？何か逃げようとするぞ」
「掴んじゃった(汗)・・・多分魂的なものじゃないかな？」
「このオッサン死んだのか？つーか死ぬと魂出るのか、初めて見たぞ！」
「高位の存在の魂は見えることがあるの、私もこれで２回目だよ」
「高位の存在？じゃあオッサンじゃないな、つーかこれどうしよう？」

取り敢えず武器をしまう。
何か武器も感触が違うがそれは後で調べよう。
それよりも、これ邪神の魂かな？・・・マジでどうしよう？

途方に暮れてると前方の空間に亀裂がはしる。
亀裂が広がり無理やり亜空間の入り口が開いた。

「おいおい何か来るぞ！！」

入り口から出てきたのは金髪ロングの女性だった。