転生したら血塗れ皇帝の妹のモブでした。

iBuKi

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第三章 クラウディアの魔力

あれ?アッサリ?

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「お兄様、おはようございます。」

起きてそんなに時間が経っていないというのに、眩しいくらい美しく天使感のある兄に挨拶をする。
シュヴァリエは、毎朝わざわざ月の宮まで出向いて朝食を共に摂ってくれている。

月の宮は代々この国の姫の専用の宮。
その姫が食事を摂るこの場所は、1人で摂っていただろうけれど、姫が使用するという事だからか大家族が使っても更に余裕がある広さだ。
細長いダイニングテーブルにはズラリと椅子が並び、そのひとつの椅子にシュヴァリエが座っていた。



そんな恒例となった朝食の席で、クラウディアは和やかな空気の中で、あるお願いをするつもりだった。


何かって?
例の『皇宮庭園お茶会攻略対象観察』への参加の許可ですよ!
コレ、言葉のチョイスを間違えたら、参加不可になる事が懸念されるデリケートな話題である。


シスコンはこういう時に非常にめんどくさいのである。
隣国の王子目当てだとは一切感じさせない態度と言葉が必須。
兄というよりもお付き合いしている恋人に説明するような感じで、何となく釈然としないが仕方ない。



「おはよう、クラウディア」


いつもの如く、何かの書状を読んでいたのか、それをテーブルに置き笑顔になる兄。


わざわざ立ち上がり、クラウディアを席までエスコートしてくれる。

こんな広いテーブルだというのに、シュヴァリエの席の横に座らせられるのはいつもの事。
……今日はやめて欲しがったが仕方ない。

クラウディアを席につかせると、指示を待つメイドに頷き朝食を運ぶように合図をする。
それからクラウディアの隣に座った。

朝食は、いつもクラウディアが来るまで食べずに待っていてくれるのだ。
勿論シュヴァリエは政務があるため、待てる時間まで待ったらってとこはあるのだろうけど。
それでも、そんな細やかな気遣いがくすぐったい気持ちにさせられる。
シュヴァリエにとても大切にされていると実感できる。


いい香りを漂わせながら運ばれた朝食は、いつもクラウディアが喜ぶ物ばかりが出されている。
これもシュヴァリエの指示だ。
正直、この気遣いの出来る男の子が本当に12歳なのか未だに信じられない。
前世の記憶が主人格みたいになってる私は、その前世基準の判断で12歳を判断してるのかもしれないけど。
小学校6年生ってもっとアホっぽいよね…?
あ、でも王族とか凄い資産家の跡取り息子なら、こんな感じだったのだろうか……
私は一般庶民だったから、そんな華やかな世界での子供と知り合った事もないしな。

…シュヴァリエがおかしいって事にしておこう。



美味しい朝食を口にしながら、クラウディアはシュヴァリエをチラリと伺い見た。

視線に気づいたシュヴァリエが、目線だけで“どうした?”と伝えてくるので口を開く。

「お兄様、数日後に開催予定でいらっしゃるお茶会、私も参加してもいいですか?
お披露目をまだしていないので、変装して参加しようかと思っているのですが。」


話を最後まで黙って訊くと、

「数日後に開催予定のお茶会は、隣国の王子二人を歓待する為のお茶会の為、我が国の貴族子息や令嬢もそれなりに参加する。その親もな。丁度いいからクラウディアのお披露目も済ませてしまうか。」

「え……?」

アッサリと許可が出たと思ったら、お披露目もついでにするという。

あまり仰々しくされるのは嫌だけど、隣国の王子二人も居る中で注目されるのは本意じゃないんですけど……
参加したいと言った手前、嫌だとも言えない。


壁際に控えていたアンナをチラと見ると嬉しそうに頷いている。

――やるしかない感じだ。

「はい、お兄様に恥をかかせぬよう頑張ります…」


お茶会、たくさんの貴族、王子二人…。
美味しく食べてた朝食の味がわからない程に緊張し始める。


「緊張する必要はない。お前はお前らしくあればいい。もし何か不敬な事を言われようものなら、そいつを見せしめとして思い知らせるいい機会ではないか。
お前の背後に誰が居るか分かってないヤツも、今度こそは分からざるを得ないだろうよ。」


天使だったシュヴァリエの顔が、意地悪な表情のせいか堕天使になった。


兄よ、隣国の要人も居る中でやめてください。
誰かに隙を見せないよう絶対に気をつけようと思うクラウディアであった。
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