転生したら血塗れ皇帝の妹のモブでした。

iBuKi

文字の大きさ
41 / 110
第三章 クラウディアの魔力

鬼教師アンナ。

しおりを挟む
「姫様、背筋は優雅に真っ直ぐと。いえ、そこまで頭をさげてはなりません。茶会の場では姫様陛下に次ぐ高貴な身なのですから、浅く下げるだけにして下さい。
 そう、指先まで意識して下さいね。」


 ―――アンナ、スパルタだわ…

 かれこれ二時間ほど初めの挨拶とカーテシーの練習をしている。
 休憩なしな為、慣れぬ動きと筋トレ並に筋肉を使うので、クラウディアの腕も膝もプルプルしている。


「さぁもう一度。」

 アンナの厳しい声が響いた―――








「有難うアンナ。」

 スパルタレッスンが一段落つき、優しいモードに戻ったアンナがお茶をいれてくれる。

 華やかな花の香りがする一口飲む。

「! アンナ、私の好きな薔薇のハーブティーだわ! 嬉しい! 有難う。」

 最近、紅茶の代わりによく飲むようになったハーブティー。
 その中でも特に好きな薔薇のハーブティーをいれてくれたのが嬉しい。


「どういたしまして。」
 アンナが微笑む。


 サクサクのショートブレッドが美味しい。
 このお菓子の作成を提案したのは私だった。
 帝国にはお菓子のバリエーションが隣国の乙女ゲームが舞台の国よりは乏しく、前世日本でスイーツパラダイスを経験していた私には残念な国だった。

 だから、私が分かる範囲で食べたい物を作って貰おうと考えたのだった。
 食べ物への執着はある。
 窮屈な皇族の幼い姫の楽しみなんて、食べる事くらいしかない。
 期待していた恋バナだって、あまり進歩してないようだし。
 イケメン鑑賞もやりすぎるとシュヴァリエが何故か不機嫌になるので、週に1回の騎士団訪問も週に2回になったし。

 ならばと、選りすぐりの美男揃いの我が護衛騎士達をニマニマして愛でていれば、
 最初は同室内で護衛だった筈が、アンナと3人娘だけになり、いつの間にかイケメン達は室外扉前で警護にあたるになっていた。

 私の視線に邪な想いがだだ漏れていたかもしれない。
 幼女の癖に捕食者の顔を見せちゃったかしら…ギラギラ?

 うん…気をつけよう。

 とまぁイケメンの話で横道に逸れたけれど、今の私の楽しみが食しか残されていないのであった。

 そんな訳で、色々思案した結果、この世界が、日本で制作された乙女ゲームの世界ならば、もしかしたら、日本で使用されていた食材も、そのままの名で存在する気がした。
 試しにアンナに訊いてみたら、嬉しい事にそのままの名で存在していたので、色々提案して、いくつか作って貰った1つがこのショートブレッドなのだ。

 分厚いクッキーのようなショートブレッドは、甘みを少なく設定している為、甘い紅茶に良く合う。
 今日はハーブティーだから甘味は抑えているけど、悪くない組み合わせだ。

 そうそう、このショートブレッドは、試食としてシュヴァリエにも口に押しこみ食べさせてあげたら、凄く嬉しそうに喜んでいた。

 あまりに喜ぶものだから、もしかしたら甘いのがあまり好きじゃないのかもね?ショートブレッドくらいなら好みなのかも。とアンナに話すと「そういう事でいいと思います」と言われ、困った顔で微笑まれた。

 …何故?





「ごちそうさま」

 満足の吐息がふうっと漏れる。
 身体はまだプルプルしてるけど、気力は回復した気がする!


「姫様、もうひと踏ん張りしましょうね」

 アンナが良い笑顔で私を抱っこしてくれた。


「ひゃい……(はい)」







「アンナは鬼だと思うの…」

 凝った筋肉を揉みほぐすという痛めのマッサージを終え、その後のお風呂から上がってグッタリタイム。

 冷たい果実水をグラスに注ぎ私に手渡しながら、

「明日は隣国の情勢をサラッと説明しますからね。その他の所作もチェックしますから。」

「まだやるの…」

「ええ、まだやります。私の姫様が誰に軽んじられることのないようにします。
 他国だけでなく自国の貴族も参加するのです。付け入る隙はない方が後が楽ですからね。」


「そういうものなの…?」
 あんなに恐ろしい兄がバックにいるというのに。そんな命知らずが帝国貴族にいるのだろうか。
 シュヴァリエなら、不敬を感じたらその場で首を撥ねそうだけど…

「シュヴァリエ様なら即刻首を狩りそうですが、他国もいますし。隣国の王子も参加しますから、なるべく血生臭い事はさけましょう。」


「そうだね……」

 シュヴァリエって、血濡れ皇帝だもんね…


「さあ姫様、お肌の為に良く眠っておきましょうね。お肌のマッサージもしましたし、明日はますます綺麗になりますからね。」


「うん…アンナ有難う。おやすみなさい。」

「おやすみなさいませ、姫様。」


 体を運動の後のような心地いい疲労を感じたせいか、枕に頭を乗せた途端にすぐに寝た。



 姫業って真面目にしたら結構ハードよね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

妖精隠し

恋愛
誰からも愛される美しい姉のアリエッタと地味で両親からの関心がない妹のアーシェ。 4歳の頃から、屋敷の離れで忘れられた様に過ごすアーシェの側には人間離れした美しさを持つ男性フローが常にいる。 彼が何者で、何処から来ているのかアーシェは知らない。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

攻略なんてしませんから!

梛桜
恋愛
乙女ゲームの二人のヒロインのうちの一人として異世界の侯爵令嬢として転生したけれど、攻略難度設定が難しい方のヒロインだった!しかも、攻略相手には特に興味もない主人公。目的はゲームの中でのモフモフです! 【閑話】は此方→http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/808099598/ 閑話は最初本編の一番下に置き、その後閑話集へと移動しますので、ご注意ください。 此方はベリーズカフェ様でも掲載しております。 *攻略なんてしませんから!別ルート始めました。 【別ルート】は『攻略より楽しみたい!』の題名に変更いたしました

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...