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第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。
ミルクティーの後は、ロシアンティー。
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ホーデンハイム伯爵家には、今、空前のミルクティーブーム旋風が巻き起こされていた。
朝食後にもミルクティー、昼食後にも、晩餐後にもミルクティー!
この世の飲み物はミルクティー以外存在しないのではないか!? と思い始めてしまいそう。
私だってミルクティーは大好きだ。
前世での私が、ミルクティー飲みたさに、わざわざネットで淹れ方を調べるくらいには大好きだ。
……けれど、四六時中は勘弁して下さい。
皆は思わないのだろうか……朝食にはちょっとアッサリ目なストレートティーで、お口の中をスッキリさせたいな~、とか。
昼食はミルクティー……は、まぁいいんじゃないかな。良さそうで。
たまには、レモンを浮かべてレモンティーでもいいけれど。
晩餐時にはさ……
とにかく、ミルクティー以外ならなんだっていい!
何杯も飲み過ぎて、ミルクティー以外であればただの水でもいい気分である。
そして、晩餐時に皆でお茶を頂いている時、ミルクティーの香りが鼻先を掠めた瞬間、とうとう我慢出来なくなった。
流石に「もう飽きましたので飲みたくない」と直球ボールを投げるのは失礼なので、代替え品を提案しよう。
私以外の皆さんは、カップを手に取り美味しそうにミルクティーを飲んでいるようだ。
シュヴァリエも朝から昼からミルクティーばっかり飲んでいるというのに、何の不満も無くコクコク飲んでいる所ヨを見ると、大好きなんだろう。
クラウディアは気合いを入れるように、自分の膝に置いていた手で拳を作ってギュッとした。
「伯爵家の皆さんも陛下もミルクティーをとってもお気に召して頂けたようで、嬉しいです。……ミルクティーはまたの機会に飲まれる事にして、今度はロシアンティーなるものを提案させて頂こうかなと――――」
「まぁ! また新しい飲み物をご教示下さるのかしら!」
伯爵夫人が手を叩いてはしゃいでいる。
(ジャムを口にして紅茶と一緒に飲むだけ、なんて言えない雰囲気……)
「ご教示だなんて、大層な飲み方でもないのですよ。お気に入りのジャムがあったら、それをスプーンなどで口に含んで紅茶と一緒に飲むだけ……という、少しお行儀が悪そうですよね……やっぱりやめておきましょう。」
口に含んだジャムをミックスするってイメージだもんな。
フレーバーティーっぽくなるのかもだけど。
いざ提案してみると、ちょっと微妙なやつだった。
話す前に仕事して欲しかった。私の脳みそさん。
「新しい試みですわね。ちょっと試してみたくなりましたわ! ジャムを持ってきて頂戴!」
伯爵夫人は何でも受け入れ態勢になっているようで、テンションが高く早速試そうとしている。
「……あ、あの、マナーとか大丈夫なのでしょうか? 提案しておいて何ですが斬新過ぎる飲み方のような気が致しますし……。」
ちょっと冷静になって考えて貰おうと夫人に声をかけたけれど「当初は戸惑うご婦人方もいらっしゃるかもしれませんが、これが新しい飲み方であっても、流行ってしまえばそれがスタンダードになったりしますのよ。
そうやって流行りは作られていく場合もありますもの。ご安心下さいな。
それより、私は教えて頂いた『ロシアンティー』なるものを飲みたくて仕方ありませんの。」
夫人の話にも一理ある気がした。
流行り前には「こんなもの」だったものが、流行り後に「素敵!」に変わってしまう事は良くある話である。
「そこまで仰って頂けるなら嬉しいです。皆さんに是非試してみて欲しいです。」
勿論、大好評であった。
フレーバーティーっぽくなる飲み方なので、使ったジャムの種類で色んな味を楽しめる。イチゴジャムであれば苺の香りのする紅茶になる。
フルーツの香りや味を楽しめる点では飽きの来ない飲み方かもしれない。
滞在四日目。
ここ二日程、お茶の話題ばかりしている気がする。
皆が喜んでくれるようだから、問題ないのだけれど、私としては岩山だった所に植える作物の話が知りたい。
候補の作物の種の中に、サツマイモがあるかどうかが気になっているのだ。
明日、シュヴァリエに直接訊いてみよう。
しばらくの間、ロシアンティーを皆と一緒に楽しんだ後、クラウディアは湯浴みや就寝の為に退室した。
――――夜半過ぎ、アレスからシュヴァリエへとある知らせが入る。
その知らせを受けたシュヴァリエは、視察を切り上げる事を決めると皇都に戻る事を翌日の朝食の席でホーデンハイム伯爵家の皆とクラウディアに伝えたのだった。
朝食後にもミルクティー、昼食後にも、晩餐後にもミルクティー!
この世の飲み物はミルクティー以外存在しないのではないか!? と思い始めてしまいそう。
私だってミルクティーは大好きだ。
前世での私が、ミルクティー飲みたさに、わざわざネットで淹れ方を調べるくらいには大好きだ。
……けれど、四六時中は勘弁して下さい。
皆は思わないのだろうか……朝食にはちょっとアッサリ目なストレートティーで、お口の中をスッキリさせたいな~、とか。
昼食はミルクティー……は、まぁいいんじゃないかな。良さそうで。
たまには、レモンを浮かべてレモンティーでもいいけれど。
晩餐時にはさ……
とにかく、ミルクティー以外ならなんだっていい!
何杯も飲み過ぎて、ミルクティー以外であればただの水でもいい気分である。
そして、晩餐時に皆でお茶を頂いている時、ミルクティーの香りが鼻先を掠めた瞬間、とうとう我慢出来なくなった。
流石に「もう飽きましたので飲みたくない」と直球ボールを投げるのは失礼なので、代替え品を提案しよう。
私以外の皆さんは、カップを手に取り美味しそうにミルクティーを飲んでいるようだ。
シュヴァリエも朝から昼からミルクティーばっかり飲んでいるというのに、何の不満も無くコクコク飲んでいる所ヨを見ると、大好きなんだろう。
クラウディアは気合いを入れるように、自分の膝に置いていた手で拳を作ってギュッとした。
「伯爵家の皆さんも陛下もミルクティーをとってもお気に召して頂けたようで、嬉しいです。……ミルクティーはまたの機会に飲まれる事にして、今度はロシアンティーなるものを提案させて頂こうかなと――――」
「まぁ! また新しい飲み物をご教示下さるのかしら!」
伯爵夫人が手を叩いてはしゃいでいる。
(ジャムを口にして紅茶と一緒に飲むだけ、なんて言えない雰囲気……)
「ご教示だなんて、大層な飲み方でもないのですよ。お気に入りのジャムがあったら、それをスプーンなどで口に含んで紅茶と一緒に飲むだけ……という、少しお行儀が悪そうですよね……やっぱりやめておきましょう。」
口に含んだジャムをミックスするってイメージだもんな。
フレーバーティーっぽくなるのかもだけど。
いざ提案してみると、ちょっと微妙なやつだった。
話す前に仕事して欲しかった。私の脳みそさん。
「新しい試みですわね。ちょっと試してみたくなりましたわ! ジャムを持ってきて頂戴!」
伯爵夫人は何でも受け入れ態勢になっているようで、テンションが高く早速試そうとしている。
「……あ、あの、マナーとか大丈夫なのでしょうか? 提案しておいて何ですが斬新過ぎる飲み方のような気が致しますし……。」
ちょっと冷静になって考えて貰おうと夫人に声をかけたけれど「当初は戸惑うご婦人方もいらっしゃるかもしれませんが、これが新しい飲み方であっても、流行ってしまえばそれがスタンダードになったりしますのよ。
そうやって流行りは作られていく場合もありますもの。ご安心下さいな。
それより、私は教えて頂いた『ロシアンティー』なるものを飲みたくて仕方ありませんの。」
夫人の話にも一理ある気がした。
流行り前には「こんなもの」だったものが、流行り後に「素敵!」に変わってしまう事は良くある話である。
「そこまで仰って頂けるなら嬉しいです。皆さんに是非試してみて欲しいです。」
勿論、大好評であった。
フレーバーティーっぽくなる飲み方なので、使ったジャムの種類で色んな味を楽しめる。イチゴジャムであれば苺の香りのする紅茶になる。
フルーツの香りや味を楽しめる点では飽きの来ない飲み方かもしれない。
滞在四日目。
ここ二日程、お茶の話題ばかりしている気がする。
皆が喜んでくれるようだから、問題ないのだけれど、私としては岩山だった所に植える作物の話が知りたい。
候補の作物の種の中に、サツマイモがあるかどうかが気になっているのだ。
明日、シュヴァリエに直接訊いてみよう。
しばらくの間、ロシアンティーを皆と一緒に楽しんだ後、クラウディアは湯浴みや就寝の為に退室した。
――――夜半過ぎ、アレスからシュヴァリエへとある知らせが入る。
その知らせを受けたシュヴァリエは、視察を切り上げる事を決めると皇都に戻る事を翌日の朝食の席でホーデンハイム伯爵家の皆とクラウディアに伝えたのだった。
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