転生したら血塗れ皇帝の妹のモブでした。

iBuKi

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第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。

帰城と発熱。

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 ホーデンハイム伯爵領を予定していた滞在期間を切り上げて、急遽皇都へ帰還する事になった。
 もっと推しについて盛り上がれそうだったのに残念だ。
 推しの姿絵は手に入れられなかったけど、私はヴァイデンライヒ騎士団はイケメン揃いだと思っているので、どなたであっても喜べる自信があった。
 だから、あわよくば姿絵を頂きたかった……けど。
 邪な考えでいると神様に邪魔でもされてるのかっていうタイミングで、突然、皇都へ帰る宣言されてしまった。

 それで伯爵家の方々や使用人の方々も慌ただしくなり、勿論こちら側も帰城の準備に追われて(私は何ひとつさせて貰ってないけど、周りが忙しい中で姿絵の話なんて持ち出せる雰囲気でもなかった)ねだるタイミングすら無かった――――

 これは、もういよいよ、お忍で市井計画発動せねばならないかもしれない。

 自分で動かず人頼りばかりしてるから一枚も手に入らないんだ、きっと。

 皇都に戻ったら上手いタイミングを見計らう事にしよう。
 アンナに相談したいけど、相談したら絶対行けなくなる気がする。




 皇都に戻って来て、三日程が過ぎた。

 ホーデンハイム伯爵領から皇都への帰りは全て貴族向けの宿に宿泊して移動していたので、宿泊施設は豪華ではあるものの何処も似たり寄ったりの宿だったので、少し物足りなかった。
 おまけに、帰りは海沿いを通る予定であった当初のルートではなく、別ルートに変更されたらしくて、海産物とは無縁のルート。
 行きで食べた美味しいカルパッチョ、また食べたかった……。

 馬車内は静か過ぎたの一言に尽きた。
 ちょっかいかけられるのも困らせられるけど、静か過ぎるのも寂しいものという。
 何とも複雑な気持ち。
 シュヴァリエは自分が座っている座席の空いた場所に箱が置かれていて、その中にこれでもかと書類が詰め込まれてた。
 仕事量がえげつない……。
 それをずっと読んで、何かを書いてた。
 物凄い集中してたので、静かにおとなしく存在を消すようにしてたけど。
 宿での食事でさえ共に出来なくなる程に忙しいなんて。
 翌日の移動時は、もっと邪魔しないようにしようと気を遣うよね。
 それで「私、別の馬車に乗ろうか?」と提案したくなるよね。
「は?」と言った時のシュヴァリエの顔が怖かったので「いいえ、一緒に乗ります。乗らせて下さい。」って言っちゃうよね。魔王だったもん。
 凄い気を使いまくった帰りだったので、帰城して自分の離宮に到着したらどっと疲れが出ちゃって……。

 熱が出て風邪をひいたという。
 三日目の今、やっとスープやパン粥以外の物が食べられるようになった。
 喉は痛いし、鼻が詰まって鼻声になるし、熱が高くて体が熱いし。
 シュヴァリエは大騒ぎするし。
 まぁそれは想定内なんですけど、机を私の寝室に入れてそこで仕事しようとしないで下さいっていう。

 アンナが「姫様は安静が一番大切なんですから、静かに寝させてあげてください」って必死に止めて、私も「ぐっすり寝たいから」と後押しして、何とか諦めて貰った。
 あ、マルセル様とレイラン様も「姫様のご様子に伺える時間はどうにか作りますから、陛下しか出来ない仕事をして下さい」と言ってくれてたのもあったのかも。


 ゲームの世界だからか、異世界だからか、前世の世界での十三歳とは思えないチートキャラである。
 能力的なのはもう完全無欠のスーパーチートキャラであり、時折サイコパスの気質があるよね? と突っ込みたくなる言動が見受けられるくらい。
 見た目もスーパーチートで大天使様仕様の美少年様だ。
 ただ、前世の十三歳と比べたらもう既に十八歳くらいの身体付きをしていると思う。
 私が東洋人しか実物見た事がないからか、そう感じるのかもしれないけど。
 私だって、見た目は九歳とは思えない程に成長している。
 精神年齢が高い(ハズ)から、それを考慮するとしっくりきます。多分。

 何が言いたいかというと、見た目が十八歳くらいの兄が取り乱すと私がイメージする年齢相応の十三歳になって、それがちょっと可愛くていいなぁって話です。

 お仕事中なのに、一時間に一回くらい顔を見に来るのは止めて頂きたいけど、
 その時の心配そうな顔が、何だか幼げな雰囲気で。
 いつもの意地悪な態度も、皇帝様っぽくしてる所作も雰囲気も全てなくなって。
 ただ妹を心配している優しい兄なのが嬉しい。

 五分程度しかお見舞い時間を与えられていない事に不満を漏らしてたけど、多分、執務室からの移動時間がそこそこあるから五分が限界だと思うよ……とは言えなかった。
 心配そうな顔で毎回「大丈夫か?」って言われるのが、くすぐったかったから。


 三日目の今日は随分と元気になったので、見舞いに来る回数は三時間に一度になった。
 心配かけたお詫びに何かあげようと、アンナに体を起こして貰って、ベッドの上でチクチク刺繍をしている。
 大きな刺繍はアンナに禁止されてしまったので、いつものハンカチに刺繍していた。
 今回刺しているのは、魚にした。
 ホーデンハイム伯爵領に行く時に食べた魚のカルパッチョを思い出して貰えるようにと思って。
 三時間に一度部屋に来るので、来る時間が迫ったらそっと枕の下に隠している。
 カルパッチョの事を思い出して、城の食事にも出してくれという、あわよくば的なのがあったりするけどね!

 アンナはクラウディアがニコニコしながら刺繍を刺す元気な姿に内心ホッとした。
 クラウディアに何かあれば、魔王の誕生待ったなしである。
 それだけでなく、アンナ自身も悪魔になってしまうかもしれない。
 私の配下の影の者たちも……。
 そう考えると、たかが風邪と侮れず厳戒態勢を敷き徹底して看病に明け暮れた三日間であった。
 この三日間はまともに寝れていないが、そんなもの姫様が元気になるのであればいくらでも報われる。

 何の刺繍を刺しているのだろうとクラウディアに近づき手元を覗く。
 青い糸が仕様されているが、なんだろう。
 蛇……? なのか?
 何故、蛇……?

 陛下に差し上げると言っていたが、陛下は実は蛇好きとかだろうか。

 アンナは内心で首を傾げつつ、クラウディアが刺繍する姿を見守った。
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