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11、『ざまぁ』、side勇者パーティー1、護衛失敗

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「『無限の水牙』達は?」

「……なんとか逃げ切ることが出来ました………」

「………助かったな」

劣勢になった勇者パーティー達は商人達を見捨てて、森の茂みを利用し、『無限の水牙』から逃亡に成功した。

「ーーークソ!!、なんで俺が盗賊なんかから逃げなきゃいけないんだ!!!」

ロゴミスは苛立ちをぶつけるように木を殴りつける。

勇者パーティーの面々は金遣いが荒いので、すぐに懐事情が厳しくなってしまう、『終わりなき園』に挑むに先立つ資金が必要だ。

それをなんとかすべく、商人の護衛を引き受けた。

魔王軍幹部のような強敵はまず出てこない、常日頃から強敵と戦って旅をしてきた勇者パーティーからしたらなんの苦もなく、町まで護衛して報酬を貰える………はずだった。

「お前何をしている!」

「ヒッッッ!!?」

ロゴミスは冒険者の男に詰め寄る、一応、リフィルが抜けた穴に増員をしておいた、俺が雑用などしたくないし、あいつ以上の無能はいないとタカを括って適当に選出した。

「さっきの無限増殖するスライム、俺とガンツの渾身の一撃で本体を倒すために、露払いをしろと言ったはずだ!!、何をえっちらおっちら一匹二匹退かす程度しかできてないんだ!!」

「む、無茶言わないでくれ、相手は数十から数百体はいたんだぞ?、上位職の竜騎士や専門武器職なら範囲攻撃の一つや二つ使えるが、俺は戦士だ!、器用貧乏に立ち回るのが基本なんだよ!、前衛はできて一匹か二匹を足止めするのが精一杯と事前に説明しただろ?!?、アンタ達がそれでも構わないって……」

「ふざけるな!!、戦士にはそれぐらいできて当然だろ!!」

リフィルがいた時に通用していた、大勢の敵に対する戦法が全く通用しなかった………雑魚処理は戦士に任せて、俺たちは最大の一撃の為に力を貯める、それが俺たちの必勝戦法だった……だが、無能が一人、入れ替わった程度で全ての歯車が噛み合わなくなった、力を溜めている最中にスライムが寄ってきて、せっかく溜めた魔力が散らされ、ショボイ一撃しか放てなかった、シャーリーの魔法やガンツの攻撃も途中のスライム達に威力を弱められ、本体へ届く事はなかった……スライム達が体を硬化させ、スライムと思えない防御力を誇っていたことも理由の一つだが………単体の攻撃では勇者パーティーといえど流石に数百体規模のスライムの壁を突破し、本体に致命傷を与えるなんてできるわけがなかった、せめて、数十体はどかしてもらわなければ最後まで届く訳がなかった………リフィルですら、ルーガスの強力な強化魔法と魔力を潤沢に貰わねば倒せなかったので当然と言えば当然だ。

「………相手は魔王軍の精鋭でもない、脆弱な盗賊とスライム達………戦士といえど数十体程度足止めくらいはできんのか?」

「だから何度も言わせるな!!、確かに戦う事はできるが、戦士がそんな大立ち回り出来るか!」

怒り散らすロゴミス………流石にここまでキレていたらお話にならないと、ガンツが間に入って聞くが、相手の返事は少しも変わらなかった、丁寧に聞いてやったのにと内心、ムカつくガンツ。

「あの鉄屑女ですら出来てたのに、そんな言い訳通ると思ってるの?」

「全く……ふざけないでください」

後衛職のシャーリーとイザベラが戦士の彼を糾弾する、同じ戦士で、あの役立たずの愚姉ですら、雑魚相手なら数十の魔物など、簡単に蹴散らしていた。

もちろん、強敵と戦う時や雑魚処理をした後は保有魔力量が少ないせいで大技を使うたびに後ろに下がってポーションでチビチビ回復するという手間がかかる無能だったが。

なのに、コイツときたら一人二人の足止めが限界だという、リフィル以下の役立たずではないか。

………しかし、四人は気づいていない、彼の言う事は至極当然の事実だという事に………本来、戦士という職業は器用貧乏な役割しかできないはずが、変異種の機竜人の力で上位職と遜色ない大立ち回りをして、前衛をしているリフィルが異常なことに……。


というかその作戦自体が杜撰の極みだ、リフィルの負担が大きすぎる事に気づかない四人、そもそも四人が息を合わせて、同時に攻撃するなり、順番に魔法や全体攻撃を放って連続攻撃するなりすれば簡単に倒せた……が、全員が全員、自分勝手、好き勝手に動いてるので息など合うはずがなかった………四人が気づいてなかっただけだが、実はリフィルがそれとなく息が合うよう、戦場にいる仲間の位置や何をするつもりなのか、常に反響定位エコーローケーションで把握し、四人がそれぞれ動きやすいように雑魚敵を倒していたのだ。

「………それより、報酬をくれよ………護衛に失敗しちまったから、予定よりは少ない銀貨10枚でいいから………」

「ああ??!!、そんな金あるわけないだろ!!!、あったところでお前みたいな無能に渡すつもりもないがな!!」

「ーーーふざけるな!!、失敗、成功に限らず、臨時メンバーには報酬を渡すのが基本だろ!!、俺が進んで参加したなら話は違うが、アンタたちが無理を言うから仲間との依頼を中止して付き合ったんだぞ!!、多少は貰わないと割に合わない!!」

「き、貴様、冒険者風情が生意気な事を………」

「………別に良いぜ、払わないってんなら、それならそれで…………ただし、町で勇者様達が商人達を見捨てて、決まりを守らないゴミって口を滑らしちまうかもしれないがな」

「「「「ーーーー!!」」」」

冒険者の男の言葉に四人全員顔を青ざめる。

「ロ、ロゴミス、流石にそれはまずいですよ………商人達だってもしかしたら生き残りがいるかもしれないし、もし、私達のした事が公に晒されたら……」

「勇者パーティーを解散させられてもおかしくはないな」

「でも、どうすんのよ、金貨なんて持ってないわよ?」

三人はコソコソと話し合う。

「………わかった、渡してやるからついて来い」

「……わかれば良いんだよ」

「ろ、ロゴミス金なんて持ってるの?」

「………一応な」

一気に落ち着きを取り戻したロゴミスはさっきとはうって代わって冷静に肯定する、ロゴミスと男は茂みの奥へ姿を消していく。

「………おい、そろそろいいじゃないか?、大体ただ金貨を渡す程度なのになんで場所を移す必要がーーー」

「ーーー死ね」

「ーーーッッッッッ!!??、な………んで………」

仲間達から かなり距離を離した後、腐っても勇者、神速の横薙で男を真っ二つに斬り裂いた…………余りにも突然すぎたため、男は断末魔の悲鳴すら上げられず、絶命する………。

「勇者である俺を脅すなんてふざけたことをするからそういう事になる………死体は魔物が食べてくれるだろう、早く戻らないと疑われるな」

…………死体を放置して、パーティーメンバー達のところへ戻るロゴミス。



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