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「僕は君が管理職につき、今よりもっと活躍するのを願っている」
シンパである私が役職の仲間入りをすれば、より仕事がやりやくなるだろう。企画書の丸暗記を指示される私は部長の傀儡(かいらい)か。
確かに部長の力になりたかった、側で働きたかった。でも、こんなお膳立てされてまで昇進したくない。
どうか見損ないで頂きたい。私にだってプライドはあるのだ。
「部長のお力添えは大変有り難いのですが」
ずいと企画書を彼の方へ押し戻す。
「成功は自身の力で掴み取らなければ意味がありませんので。私はあなたに営業部へ行かされてからーーあぁ、行かされたと言うのは語弊がありますね。今ではあの辞令に感謝している部分もあります」
真っ直ぐ見据えて告げた。
営業部に配属され、数え切れないくらい挫折を味わい、涙を流す。心が折れそうになる度、部長と肩を並べる未来を支えにして踏ん張ってきたんだ。
「部長からしたら私はまだまだ至らないのでしょうが、これでも強くなったんですよ。変われたんです。
私、遠回りしても必ず部長の場所へ辿り着きます。だから待っていてくれませんか?」
社内で味方が必要ならば、私が全力でサポートをする。まだ部長を見た目で判断する社員が居たら徹底的に分からせてやる。
「こちらをどうぞ」
企画書の上に小箱を乗せた。
「何、これ」
少し考える。
「早いですが、クリスマスプレゼントです」
「ーー開けても?」
どうやら部長は私の主張を聞いて諦めたようだ。企画書を雑にしまい、包みを手の平に置いた。
「どうぞ」
頷くと彼は無言で開封し、ネクタイピンを摘み上げる。さり気なくハイブランドのスーツを着こなす部長が自分では買わない品をあえて贈りたかった。
「……山猫のネクタイピン、しかもゴールドか……ありがとう。大切に使わせて貰うよ」
と言いつつ、すぐ箱を閉じてしまう。その反応は想定内だ。
「身に着けて下さるんですか?」
「そうだな、肝心な場面で素直にならなきゃいけない時にでも付けてるよ」
「ふふ、そんな時があるんです? 素直な部長なんて想像出来ません」
「あるだろ、割と近々に」
部長の軽口を話半分で聞き流し、ホットコーヒーを飲む。程良い苦味が広がり鼻から抜けていく。
あれだけ大見得を切ったのだ、やるしかない。次のコンペで挽回しよう。
決意を新たにする私はまだ知らない。
この時、部長が大きな決断を下していたのをーー。
シンパである私が役職の仲間入りをすれば、より仕事がやりやくなるだろう。企画書の丸暗記を指示される私は部長の傀儡(かいらい)か。
確かに部長の力になりたかった、側で働きたかった。でも、こんなお膳立てされてまで昇進したくない。
どうか見損ないで頂きたい。私にだってプライドはあるのだ。
「部長のお力添えは大変有り難いのですが」
ずいと企画書を彼の方へ押し戻す。
「成功は自身の力で掴み取らなければ意味がありませんので。私はあなたに営業部へ行かされてからーーあぁ、行かされたと言うのは語弊がありますね。今ではあの辞令に感謝している部分もあります」
真っ直ぐ見据えて告げた。
営業部に配属され、数え切れないくらい挫折を味わい、涙を流す。心が折れそうになる度、部長と肩を並べる未来を支えにして踏ん張ってきたんだ。
「部長からしたら私はまだまだ至らないのでしょうが、これでも強くなったんですよ。変われたんです。
私、遠回りしても必ず部長の場所へ辿り着きます。だから待っていてくれませんか?」
社内で味方が必要ならば、私が全力でサポートをする。まだ部長を見た目で判断する社員が居たら徹底的に分からせてやる。
「こちらをどうぞ」
企画書の上に小箱を乗せた。
「何、これ」
少し考える。
「早いですが、クリスマスプレゼントです」
「ーー開けても?」
どうやら部長は私の主張を聞いて諦めたようだ。企画書を雑にしまい、包みを手の平に置いた。
「どうぞ」
頷くと彼は無言で開封し、ネクタイピンを摘み上げる。さり気なくハイブランドのスーツを着こなす部長が自分では買わない品をあえて贈りたかった。
「……山猫のネクタイピン、しかもゴールドか……ありがとう。大切に使わせて貰うよ」
と言いつつ、すぐ箱を閉じてしまう。その反応は想定内だ。
「身に着けて下さるんですか?」
「そうだな、肝心な場面で素直にならなきゃいけない時にでも付けてるよ」
「ふふ、そんな時があるんです? 素直な部長なんて想像出来ません」
「あるだろ、割と近々に」
部長の軽口を話半分で聞き流し、ホットコーヒーを飲む。程良い苦味が広がり鼻から抜けていく。
あれだけ大見得を切ったのだ、やるしかない。次のコンペで挽回しよう。
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この時、部長が大きな決断を下していたのをーー。
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