みうちゃんは今日も元気に配信中!〜ダンジョンで配信者ごっこをしてたら伝説になってた〜

双葉 鳴

文字の大きさ
61 / 87

60話 マグロ! ご期待ください

しおりを挟む
「いやー、結局釣りに行くのに同行することになっちゃいましてね!」

 そう言いながら、志谷さんが帰ってきたのは夕方だった。
 顔が利くと言うのは本当のようで、クランには体格の良いおじさん達がでかい発泡スチロールを持ってきてくれた。
 中にはまるまる一匹のマグロがあった。
 冷凍技術の進歩で中までしっかり凍ってはいるものの、先ほどまで生きていたかのような迫力がある。

 流石にこんなものを病室に持っていくのはサイズ的に(生臭さも含めて)あり得ないので、調理場で吊るしてから病室に向けて配信をした。
 みう達はそれを見ながらコメントを打ち込んだ。

@みう:うわ、おっきぃね!
@理衣:よくこんなの持って帰ってこれたわね
@秋乃:すごく大きいです

「センパイ、約束は守ってくださいよ?」

「ああ、必要な部位はそれほどないからな。でもみうも食えばそれほど残らないかもしれないぞ?」

「そこなんですよねー!」

@みう:明日香お姉たん、まさか独り占めしないよね?

「し、しし、しないよー?」

 慌ててしないと言い切るが、これは黙って食べる顔だな。
 俺は詳しいんだ。

@理衣:私は見るだけでお腹いっぱいね

「理衣さんや秋乃ちゃんはそうだろうね。でも、少量ならいけると思うんで、そこら辺のレシピも考えておきます。料理っていうのは大量に食べる以外にも楽しみ方がありますからね」

@秋乃:そうなんですね
@理衣:瑠璃が招待したがっていたフレンチなんかをご馳走してもらえるのかしら?

「クランに誘致するんならできそうかもですけど、俺にそっちの技術はないですよ?」

@秋乃:それでも、すごいです

「ありがとうね。今日の食事で多少飲み込むことができるみたいだったから、ネギトロのように叩きでムース状にしてみようと思うんだ」

@みう:ムースってケーキの?
@理衣:ムースは泡という意味よ
@理衣:だからふわふわであんまりお腹にたまらないものを指して言うようね
@理衣:ケーキのムースもお腹にたまらないからそう呼ばれてるって話よ
@みう:へぇ、一つ賢くなった!
@秋乃:楽しみです

「楽しみにしてて」

「センパイ! 私にもご褒美が欲しいです!」

「そうだなぁ、なら俺と一緒に記念写真撮るか?」

「それでOKです!」

 マグロの前でピースしてる写真を撮った。
 ただ、その時に写真に写っては行けないものが映り込んでいて、お披露目の機会は無くなった。まさか写真で擬態が剥がれるなんてな。
 もしかして相当空腹だったか?

「志谷さん、あとで経費についてのお話がある」

「あ、はい」

「みう達はこのマグロと記念写真撮るか?」

@みう:最初はその気があったけど、病室に持ってこれないんなら別にいいかな?
@理衣:そうね。想像以上にグロいわ
@秋乃:ごめんなさい、私も正直……

 所詮はこんなものである。
 生臭く、ヌメヌメしてて、時価でいくらするかはわからないが、値段を聞くとみんな大好きになるから不思議なものだ。
 志谷さんのツーショットの他に俺だけで試す。
 こっちは特に写真で擬態が外れたりはしてない。
 そもそも生まれが人間だから、擬態以前の問題だしな。

「それじゃあ、病室のみんなはマグロ料理の完成を楽しみにしててくれ!」

@みう:はーい!
@瑠璃:それって私の口にも入るのかな?

「もちろんですよ。先に健常者である俺たちが毒味しないでどうします?」

@瑠璃:まさしくだ
@みう:あんまり食べ過ぎちゃ嫌だよ?

「みう、先に行っておく」

@みう:うん

「お前と志谷さん以外、この量を前に全部食べ切れるなんて考えはないから安心しろ」

@みう:そっか!

「逆に言えば、私のライバルがみうちゃんなんだよね!」

@みう:負けないよ!

「まぁ、色々作って試食会を開きますので準備ができたら呼びますね。先着10名で病院の先生方も誘って豪勢にいきましょう。その時の一部にマグロ料理を出す予定です」

@瑠璃:一部なんだね

「流石に全部マグロで作ったら飽きますからね。それにみうとの約束もある」

「私との約束は!?」

 志谷さんが忘れてもらっちゃ困るぜと名乗り出た。

「それもある」

「ついでかー」

「余物って約束だしな」

「マグロの目玉とか、兜も美味しいからそれでもいいんだけどね!」

「それを言える人だが果たしてどれくらいいるのかって話さ」

@理衣:想像するだけで胃の内容物を吐き出しそうよ
@みう:おめめって食べられるのー?
@秋乃:想像、できないです

「食べられなくはない、それを好んで食べる人もいるってだけの話だな。志谷さんはそれが好みだけともいう。無理して食べる必要はないからな?」

 若干、みうにもその素質がある気もするが。正直そればかり食べる姿がありありと浮かぶからおすすめしてないんだよなぁ。
 人前でやられたらとても困る。
 配信者としての絵面も悪くなるしな。

 撮影を切り上げて、志谷さんとお話し。

「志谷さん、これ」

「あ、さっきの写真ですか?」

「擬態解けてるから気をつけてな」

「あちゃー! って、驚かないんですね?」

「俺も特別な出自だからな。そこまで驚かないな」

「あー、お父さんから聞いた感じ?」

「俺の父親を知ってる時点でそっち側の有識者か。そっか、伝承ではもっと見境なく食い尽くす感じだと思ってたけど違うのな」

「あれはお腹が空いていたからですよ。食事中に呼び出されるんですよ? その上でろくに食べられないものばかり差し出されて。こんなのいらない! 私の食事を返して!って」

「だから暴れた結果が人類史に残された伝承だと?」

「そんな感じかな?」

「今回はうまく溶け込めてる感じじゃないか?」

「色々苦労はしたんですよ? まずはこのボディ!」

 どうです? とふりふりしながら見せつけてくる。
 俺を誘惑してんのか? その体で?
 ハッ(失笑)

「非常にちんちくりんだな」

「あー、あー、そう言うこと言うんですね!」

「冗談だよ。妹と似たような背格好の相手に欲情するわけないだろ。男舐めんな」

「先輩はそう言う人、と」

「何をメモってるんだ、何を!」

 ズビシ、と後頭部にチョップを軽く叩き込む。
 なんで嬉しそうにしてるんだ、こいつ?

「いや、私とこうやって漫才できる人って非常に貴重で」

「そんなことないだろ?」

「私の特性覚えてます?」

「あー、防衛捕食か」

「そうなんです。あれって自動で発動するから、こういった攻撃でも当然」

「あれ、もしかして今の俺の行動って」

「普通に捕食対象でしたよ」

「やべーな、もっと早く言ってくれないか?」

「でも、不思議と食べられなかったんですよねぇ。もっと大きな力に邪魔されたっていうか」

「ああ、Ubbo-Sathlaスーラの加護があるからかな?」

「そう言う精神的な問題じゃないんですよね。もっと物理的にガードされちゃいました」

「物理的に?」

「そうです。私の捕食行動そのものが発動しないなんて、もっと上位の命令権が働いてる以外にないんですよ」

「と、言うのは?」

「多分先輩って、出自が私の親戚なんですよね。この能力、同じ血筋には反応しないんで」

「また知らないところで親戚が増えた!?」

 最近ウィルバーと親戚だと判明した矢先だぞ?
 まさかBugg-Shash志谷さんとまで親戚だったとはな。

「そう言う意味でもここは私の理想の地! ハルちゃんとは喧嘩別れしちゃったきりなので、ここを追い出されたらもう本当に行く場所なくて! だから先輩! ここにおいてください」

「いや、お前すでにうちのクランメンバーだろ? お前がいないと理衣さんが起きてられないんだから、勝手に出ていかれると困るんだよ。Cthulhu理衣さんの契約先に対抗できるのはお前だけなんだ。それに、みうがお前に執着を抱いてるから、勝手に出ていくな」

「でへへ、そこまで言われちゃったら仕方ないなー。つまり私はこのクランに必要不可欠ってことですよね!」

 ニマニマと笑いながら、今回の出張で使ったレシート経費を差し出してくる。
 おい、こいつ。出先でマグロ入手以外で使い込んだのをうやむやにするために一芝居打ったな?

 値段を把握するが、どれも安いもんだ。
 極大魔石結晶の値段を見慣れすぎた弊害か?
 数百万規模を安いと思い込めるなんて、俺も頭がどうかしている。

「まぁ、そんじゃ解体するから手伝ってくれ。血抜き、お前の能力でどうにかできないか?」

「センパイ、私の能力便利に使いすぎじゃないですか?」

「まぁ、できないなら無理にする必要はないぞ?」

「で、できますー!」

 そのあとめちゃくちゃマグロの血抜きをした。
 厨房を血まみれにしなくて助かったぜ。
 サイズがサイズだからな。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。 仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて―― 「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」 「片手で抜けますけど? こんな感じで」 「200キロはありそうな大根を片手で……?」 「小麦の方も収穫しますね。えい」 「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」 「手刀で真空波を起こしただけですけど?」 その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。 日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。 「これは投擲用大根だ」 「「「投擲用大根???」」」

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

処理中です...