16 / 497
1章 お爺ちゃんとVR
015.お爺ちゃん、娘達に後のことを任せる
しおりを挟む
「でもここが序盤の街でよかったわ。今回はお爺ちゃんにとって慣れないルールだったかもしれないわね。でもこんなイベントまだ埋まってたのね。あらかた出尽くしちゃってたと思ってたわ」
うん、確かにそうだ。まさか画像を公開することで進行するイベントがあるだなんて知らなかった。
私はただ、よく撮れた景色をみんなに見て欲しくてブログを公開した。それがそんな結果を招くなんて知りもしなかった。孫からの私を見る目が厳しいものになっているのに気づいた時、とんでもないことをしてしまったと今になって思い至る。
「お母さん、敵のレベルはどれくらいだと思う?」
孫と娘が語り合う。緊迫した面持ちでありながらどこか緊張感はない。普通の食卓での会話風景と酷似していたよ
「今のマリンにはちょっと厳しいわね。特に今回は大型レイド。このレイドの特徴はね、単独での撃破がまず難しい類なの。例えばそうね、今回のイベント発生では特にログイン時間の制限解除が解かれていないわよね?」
「うん……あっ! 私がログインできない時間もあるってことだね?」
「そうよ。その間に倒されちゃうかもしれないし、街に被害が出るかもしれないの。だからたくさんの人員が必要なのよ。戦闘力が高いだけでは勝利に導けないわ。それを後ろから支える補給部隊も大切なの」
なるほどなと思う。大型レイドと聞くとHPゲージが軒並み高いか特攻武器が必須なイメージはあったが、向こう側から襲撃してきて街に被害が出る防衛戦の可能性もあるわけか。
「特に何かが復活する系列は強い意志を持って前回封印処置をした場所へ復讐しに行く。つまりその原因がどこにあるかを探さねばならない。この場合は近隣に分かりやすいこのファストリアがある事から、十中八九ここが狙われるわ。お父さんのブログ曰く、物見の塔なんてものがある時点で確定ね」
大問題じゃないか。しかも森から突き出るほどの卵の時点で嫌な予感しかしない。ああ、だからそれを想定してあの石の砦なのか?
孫から聞く通常モンスターのサイズはそれほどでもないと聞く。だから違和感はあったんだ。あの石壁はなんのために設計されていたのかわかった気がする。
「じゃあ街の防衛もしないとだ」
「一応まだ敵さんは復活はしてないようだからお父さんとマリンは普通に遊んでていいわよ。あとはうちのクランでなんとかするから」
「おう、任せとけって。互いに力は認めてるが、今まで組むことはなかったクランが今回は手を取り合うんだ。最序盤のレイドボスなんて返り討ちにしてやるさ」
ここでギン君が割って入る。
ジキンさんの前とでは態度が違うのが気になるが、悪い感情は漂っていない。そこでジキンさんから情報をいただく。なんと先月娘が誕生したばかりなのだとか。だからだろうか、マリンを励ますような意気込みを感じたのは。
「うぅ、お母さん達が仲間外れにするよ~」
それでも孫は仲間外れにされたと嘆く。イベント参加権を得たのに参加できなければそう思ってしまうのも仕方ないだろう。
「マリン、蛮勇と勇気は違うのよ? 以前第三の街サードウィルが半壊になったイベントがあったのを知ってると思うけど……」
「うん……あ、あれって大型レイドだったの?」
「そう、どこかのクラン連合が情報開示を秘匿した結果があれ。復興するのに大変だったんだから。うちのクランも復興に関わったのよ? 大型レイドってそれだけ大変なの。街が崩壊してもボスを倒さない限り終わりは来ないの」
「済まない、そんな大規模なイベントだなんて知らずに……」
本当に私は愚かだな。それでもこうして支えてくれる者達が居る幸せを噛み締めることしかできない。そんな自分が情けない。
「今回に限ってはお父さんに落ち度はないとは言わないけど、運は悪かったわね」
「……うん。反省はしている」
「でもお父さんとジキンさんが仲良くなってくれたおかげでこうして深まった縁もあるわ。だから安心して、今回はキチッと勝ってくるから」
腕をまくって娘がやる気を漲らせている。ギン君も、ジキンさんも。
若干一名不満顔を漏らすものもいるが、親としては子が心配なのだ。娘の気持ちもわかってしまう。
孫が可愛いと思う反面、彼女を後押しする力が今の自分にはないことを痛感する。それでも何かしたいと思ってしまうのはこのイベントを発生させてしまった私の責任からだろうか?
「そうか。私にも何かできることがあれば言ってくれ」
「取り敢えずはそうね、ブログのURLを公開をするから閲覧数が一気に上昇するけど気にしないでくれると助かるわ」
「それと知名度はまず間違いなく上がるだろうな。不特定多数の人物から見られる覚悟もしておいた方がいい。有名税ってやつだ」
それはなんとも覚悟を強いられる。
けどそれ以上に自分は始めたばかりの初心者で顔も広くないのだということを教えられた気がした。
うん、確かにそうだ。まさか画像を公開することで進行するイベントがあるだなんて知らなかった。
私はただ、よく撮れた景色をみんなに見て欲しくてブログを公開した。それがそんな結果を招くなんて知りもしなかった。孫からの私を見る目が厳しいものになっているのに気づいた時、とんでもないことをしてしまったと今になって思い至る。
「お母さん、敵のレベルはどれくらいだと思う?」
孫と娘が語り合う。緊迫した面持ちでありながらどこか緊張感はない。普通の食卓での会話風景と酷似していたよ
「今のマリンにはちょっと厳しいわね。特に今回は大型レイド。このレイドの特徴はね、単独での撃破がまず難しい類なの。例えばそうね、今回のイベント発生では特にログイン時間の制限解除が解かれていないわよね?」
「うん……あっ! 私がログインできない時間もあるってことだね?」
「そうよ。その間に倒されちゃうかもしれないし、街に被害が出るかもしれないの。だからたくさんの人員が必要なのよ。戦闘力が高いだけでは勝利に導けないわ。それを後ろから支える補給部隊も大切なの」
なるほどなと思う。大型レイドと聞くとHPゲージが軒並み高いか特攻武器が必須なイメージはあったが、向こう側から襲撃してきて街に被害が出る防衛戦の可能性もあるわけか。
「特に何かが復活する系列は強い意志を持って前回封印処置をした場所へ復讐しに行く。つまりその原因がどこにあるかを探さねばならない。この場合は近隣に分かりやすいこのファストリアがある事から、十中八九ここが狙われるわ。お父さんのブログ曰く、物見の塔なんてものがある時点で確定ね」
大問題じゃないか。しかも森から突き出るほどの卵の時点で嫌な予感しかしない。ああ、だからそれを想定してあの石の砦なのか?
孫から聞く通常モンスターのサイズはそれほどでもないと聞く。だから違和感はあったんだ。あの石壁はなんのために設計されていたのかわかった気がする。
「じゃあ街の防衛もしないとだ」
「一応まだ敵さんは復活はしてないようだからお父さんとマリンは普通に遊んでていいわよ。あとはうちのクランでなんとかするから」
「おう、任せとけって。互いに力は認めてるが、今まで組むことはなかったクランが今回は手を取り合うんだ。最序盤のレイドボスなんて返り討ちにしてやるさ」
ここでギン君が割って入る。
ジキンさんの前とでは態度が違うのが気になるが、悪い感情は漂っていない。そこでジキンさんから情報をいただく。なんと先月娘が誕生したばかりなのだとか。だからだろうか、マリンを励ますような意気込みを感じたのは。
「うぅ、お母さん達が仲間外れにするよ~」
それでも孫は仲間外れにされたと嘆く。イベント参加権を得たのに参加できなければそう思ってしまうのも仕方ないだろう。
「マリン、蛮勇と勇気は違うのよ? 以前第三の街サードウィルが半壊になったイベントがあったのを知ってると思うけど……」
「うん……あ、あれって大型レイドだったの?」
「そう、どこかのクラン連合が情報開示を秘匿した結果があれ。復興するのに大変だったんだから。うちのクランも復興に関わったのよ? 大型レイドってそれだけ大変なの。街が崩壊してもボスを倒さない限り終わりは来ないの」
「済まない、そんな大規模なイベントだなんて知らずに……」
本当に私は愚かだな。それでもこうして支えてくれる者達が居る幸せを噛み締めることしかできない。そんな自分が情けない。
「今回に限ってはお父さんに落ち度はないとは言わないけど、運は悪かったわね」
「……うん。反省はしている」
「でもお父さんとジキンさんが仲良くなってくれたおかげでこうして深まった縁もあるわ。だから安心して、今回はキチッと勝ってくるから」
腕をまくって娘がやる気を漲らせている。ギン君も、ジキンさんも。
若干一名不満顔を漏らすものもいるが、親としては子が心配なのだ。娘の気持ちもわかってしまう。
孫が可愛いと思う反面、彼女を後押しする力が今の自分にはないことを痛感する。それでも何かしたいと思ってしまうのはこのイベントを発生させてしまった私の責任からだろうか?
「そうか。私にも何かできることがあれば言ってくれ」
「取り敢えずはそうね、ブログのURLを公開をするから閲覧数が一気に上昇するけど気にしないでくれると助かるわ」
「それと知名度はまず間違いなく上がるだろうな。不特定多数の人物から見られる覚悟もしておいた方がいい。有名税ってやつだ」
それはなんとも覚悟を強いられる。
けどそれ以上に自分は始めたばかりの初心者で顔も広くないのだということを教えられた気がした。
12
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる
まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。
そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる