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2章 お爺ちゃんとクラン
061.お爺ちゃんはクランの足がかりを探る
私は早速パープルに連絡をする。
彼女はクランの顔であり、今一番連絡を取りやすい相手でもある。
オクト君の場合、ログインしていない場合もあるし、してればしてたで忙しそうにしてるからこういうことは娘が適任なのだ。
まずは近況報告も兼ねてVR井戸端会議の出会いで神保さんに出会ったところから話を膨らませる。
すると彼女は結婚式にアクセサリー類を紘子ちゃんから贈呈されて舞い上がったことを思い出してくれたよ。
そしてこのゲームにも在籍していると情報を得た。
お兄さんの健介君が率いるトップ生産クランだとかで、パープル達が唯一敵わないクランだと教えてくれた。
なるほどね。一体どんなガチ勢なのかと思ったらリアルでの実力者を揃えたパーフェクト集団だったわけだ。
健介君自身もお医者さんとして医療品や薬剤関連に精通してるし、ポーションを作らせたら右に出るものもいないとの噂だそうだ。
そりゃ勝てるわけないよね、と話を膨らませてからクランの話題を持ち出す。
『お父さん、もしかして陽介おじちゃんをお誘いしたの? あの人間国宝を?』
するとパープルがとんでもない言葉を放ってくる。
人間国宝って一体誰が?
キョトンとしていると捲し立てるようにパープルの口撃が続く。
『あれ、まさか知らないなんて事ないよね? ああでもお父さん陽介おじちゃんが国宝宣言された時海外に出張中だったし知らないかも知れないね。あの人ただの金物屋さんじゃないのよ。確か趣味で作ってた小太刀が鑑定されて素晴らしい出来栄えだって取り上げられたことがあったのよ。その時は作った本人もびっくりしてて、あれよあれよと有名になっていったの。新聞社とかあんな田舎町にいっぱい押しかけてそれはもうパニックになったものよ』
『そうだったのか。それで今度私たち三人でバザー的なものをしようと思ってね。彼、こっちではダグラスさんを中心にして私が写真を撮り、ジキンさんに執筆をお願いして精錬のコツみたいな本を作って売ろうと思ったんだ』
あまりの内容にパープルは開いた口が塞がらない、と無口になる。
まさかダグラスさんがそんな凄い人だなんてなぁ。
私としては幼馴染みとしての陽介さんしか知らないからつい誘ってしまったが、しかし嫌なら嫌だって言ってくれてもいいのにね。二人とも私の提案に乗り気で来るんだもの。
『取り敢えずお父さんがまた何かをしでかす前に知れてよかったわ。それで、話ってそのバザーの開催をこちらでサポートすればいいの?』
『いや、バザーは個人的に開きたいんで、クラン設立についての情報を知りたかったんだ。何でもかんでも君たちばかりに頼りきりってわけにもいかないしね』
『話はわかったわ。それで、メンバーは?』
『私とジキンさんにダグラスさんだね』
『それは人数が足りないわね。最低でもクランリーダーを入れて10人居ないと設立できないの。他にもギルドでランクを上げる必要があったりと戦力的なものを求められたり、お金……は今のお父さんなら余裕で払えるわね』
なんだって?
まさか人数が必要だとは思わなかった。
あと7人……どこかにいないものか。
『人数の件は分かった。しかし私は戦えないが、ランクはどうやって上げればいいんだい?』
『あ、それはパーティを組んでメンバーに倒して貰えば大丈夫よ。うちのオクトもそれで設立したし』
『了解した。それじゃあメンバーとランクが上がったらまた連絡するから』
『うん、一応オクトにも話を通しておくわね』
『いつも済まないね。また頼りにさせてもらうよ』
コールを切り、ダグラスさんに向き直る。
ジキンさんはまだまだコールで盛り上がっているようだ。時折怒声が聞こえるけど気のせいだよね?
やだなぁ、電話口とはいえ怒鳴る人って。
それはさておき今さっき仕入れた情報を話してしまいましょうか。
「いや参った。クランを発足するには人数がいるみたいですよ」
「ふぅむ。そいつは難儀だ。だが準備期間がかかるんなら、より良い一品を作れるってもんじゃないか、ハヤテ君」
ダグラスさんは金属をハンマーで叩く動作をすると歯を剥き出しにしてニカッと笑った。
あ、この人クラン発足を手伝わない気ですよ?
まぁ得手不得手があるので仕方がありませんね。
無理に誘った手前、つっぱねられても仕方ありません。
参加してくれただけでもありがたく思っておきましょうか。
いくらリアルで人間国宝と呼ばれようと、彼は没入型で私は散策型。
ジキンさんは……うーん、あの人だけよくわかりませんね。
万能型と認めたくない私もいますが、フリーランスとしておきましょう。どこに置いてもそつなく仕事をこなしそうなんですよね、あの人。
「おや、僕が最後ですか。ハヤテさんはどこまで情報仕入れました?」
「人数とギルドでのランクアップ、あとお金がかかるそうです」
「ですね。それと三つのクランからの紹介状が必要だそうです。これは聞いてなかったですか?」
「そうですねぇ。うちの娘夫婦とジキンさんの息子さんたちのクランで二つ。あと一つは……」
「それならワシんところの倅のクランに出させよう」
「おっと、ダグラスさんのお子さんもクラン持ちでしたか」
ジキンさんはわざとらしく驚いて見せる。
この人はいちいちアクションがオーバーなんですよね。
見ている分には面白いんですが。
「何、大した事のないクランじゃよ。物づくりに関しちゃ一家言あるワシから見たらおままごとみたいなもんじゃな。ちょいと脅せばすぐに言うことを聞くから一筆書かせるくらい訳ないわい」
「ダグラスさんはこう言いますけど、実質AWOのトップ生産クランらしいですよ? 娘が言ってました」
「ええ……そんな人達を手玉に取るなんてダグラスさんて何者なんですか?」
「何者なんでしょうねぇ」
面白いのでジキンさんには内緒にしておいたほうがいいですね。
「……なんかハヤテさん隠してませんか?」
「そんなとこないですよ。考えすぎですって」
「怪しいなぁ」
疑り深いジキンさんは横に置いといて、テーブルに手をついて席を立つ。
「さて、第一回桜町町内会AWO部の会合はこれで終わりにしますか」
「あ、逃げた」
「早速じゃが次の会合はいつにする?」
「と、その前にダグラスさんにフレンド申請しときますね」
「受け取った。ジキンさんにも送っとこうかの」
「おお、ありがとうございます」
フレンド申請をしてお互いにチェックし合う。
「おお、ハヤテ君はブログを書いとるのか。どれどれ……」
「まだ趣味ですが、いろんな場所で撮影させてもらってます」
何やら操作し始めたダグラスさんがほぅとため息をついて遠い目をした。一拍置いてこちらに顔を向けると、
「お前さんは変わらんの。ちと幼少の頃を思い出したわい」
どの写真が彼の心を射止めたのかはわからない。
だが、自分の撮影した物で目の前の人物の心を揺り動かせたのだけは間違いなかった。
「この人は行く先々でトラブルを起こして回りますからね。ダグラスさんも気をつけておいたほうがいいですよ?」
ちょっと、なんてこと言うんですか。
「言われんでも分かっとる。何年の付き合いだと思っとるんじゃ」
「そうでした」
ダグラスさんも乗らないでくださいよ。
それでも嫌味のない笑顔で笑い合える関係が築けているのはありがたいものだ。ジキンさんは後で覚えててくださいよ?
少し眼力を強め、それぞれの場所へと分かれていく。
三者三様のやる事をしに。
さて、私も同時進行して行きますよ。
次は領主邸ですね。
私はオクト君にコールをすると商業ギルドに足を向けた。
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