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3章 お爺ちゃんと古代の導き
122.お爺ちゃんとクラン協定3
「さて、君たちにとって新しい変化もあったと思うが、それはそれとして出発するよ。こっちだ」
手招きしながらメンバーを呼び寄せる。しかし雲の至った時に皆足踏みを始めた。私が先導しているのにもかかわらず、何処か浮き足立っている。無理もないか。
私も最初は足が突き抜けたものだ。物理的に乗れたからって、彼らの常識の中にそれらの情報はまだ入ってないのだ。
「大丈夫だよ、ゆっくりでもいいから足をのせてみなさい」
「お、おう」
「私のスキルが効いてる限り、君たちの安全性は保障される」
「切れたらどうなるんだ?」
「そりゃ勿論落ちるさ。君たちのスキルがどんな変化をしたか私は知らないからね。重力無視に似た何かを持ったのならともかく、そうでないなら落下するよ」
「そりゃやべーな。有効範囲は?」
「大体半径5メートル位かな?」
「このまま戦闘ってわけにはいかねーか」
「そうだね。そこら辺は君たちに任せるよ。今日は空導力の入手まで行きたいからさっさと進めるよ」
さっきまで強気だった金狼氏はすっかり借りてきた猫みたいに居心地悪そうにしている。
他のみんなもそうだ。雲の上という落ち着かない場所なのもそうだが、そんな場所で戦闘になったらと思えば気が気ではないのだろう。
だが戦闘組以外のはしゃぎプリったらない。
イスカ氏と山本氏はフワフワした雲の上を堪能しつつ、なんだか考え事をしていたようだ。
「やぁ、天使さん。今日も来たよ」
「いつもすまないね。それと後ろの方々は?」
「今後私の代わりにこちらへ顔を出すかもしれないメンバーさ。けれど名乗っても覚えてはくれないのだろう?」
「ふふふ。そうだな。では案内しよう。船はいるか?」
否定はしないんだね。その方が彼女らしいけど。
前回は鳥類と一緒だったから自力で行ったが、今回は飛べない人たちばかりなので船の申請を受理した。
そこで船に乗った山本氏が目の色を変える。
「おお! こいつが天空の技術か! 面白い!」
「空導力が手に入ればその手の知識は入手できそうです。ただそれらの情報はご自分で確認してください」
「そりゃ空力学を説き始めたら素人にゃ分からん話ばかりだしな。ウチにとって欲しい情報をアンタがピンポイントで獲得できるとは思えねぇ。了解した。むしろコレを体験させてもらえただけでもありがたいくらいだ」
「気に入ってくれたなら何よりです。取り敢えず聖獣様のお背中に着きましたので皆さん降りてください。微力ながら風のサポートもしておきますので、体を前にしてもらうだけでいいですよ。そうです、そんな感じです」
ちょっと強引な手段でみんなを送り出す。
滑り台のように送り出そうと思ったのだけど、体制を崩した金狼氏は遊園地にあるようなコーヒーカップのようにクルクル回りながら送り出されてしまった。
もう、余計な動きするから。
そんな様子を他のメンバーに笑われて……そして少しの時間移動して、空導石の前へとたどり着く。
「コレが例のヤツですか」
宙に浮く巨大な水晶を見据えてオクト君が感嘆とする。
その瞳は何処か子供のようにキラキラとしており、錬金術師の彼がそんな顔をするときは大概未知の素材に出会えた時だった。
「先に言っておくけど削っちゃダメだよ?」
「はっはっは。お義父さんは面白い事を言いますね。なんで僕がそんな事をすると思うんです?」
「そういう目をしていたからね」
「バレてしまっては仕方ありません。でも、本当にコレは綺麗ですね。見てるだけでも心が洗われるようです」
「そうですね。普通空色の水晶を見たってここまで感動はしません。でも心惹かれてしまうのは、コレがこのサイズで宙に浮かんでいるという事実だからでしょうか?」
少し悔しそうなオクト君にイスカ氏が言葉を被せる。
そうだね。普段の水晶を見たってここまで感動はしないだろう。そんなこんなしてるウチに順番に空導力を手にし、そして私達は青の禁忌を降りた。
「天使さん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ新しい人員を連れて来てくれて礼を言う」
「お互い様ですよ。ではまた」
「うむ」
片手を上げて持ち場に帰る天使さんを背に、他のメンバーにコレからどうするかを聞いてみる。
「さて、コレでこちらの都合は終わりました。このまま解散してもいいんですが、どうせだったら赤の禁忌にお邪魔してみてもいいと思うんですが、どうします?」
メンバーはあれこれ悩んだ挙句、すっぱりと私の言葉を払った。
「いや、これ以上は流石にもらいすぎだ。ここから先は自分達で切り開く。そうだろう、お前ら?」
「じゃな。早く帰って研究を進めたいわい」
「そうですね。ウチとしてもこれ以上は貰いすぎです。既にメンバーが世話になっているというのもありますが、翼がなくても飛べるんだと知れただけで儲け物です。今日の出来事を皆に自慢しつつ、モチベーションを上げていきたいと思います」
「ワシとしては残ってもよかったんじゃが、それと同じくらいにこの空導力を堪能してみたい気持ちでいっぱいになった。コレばかりは他の誰かとでなく、自分の力として扱っていきたいわい」
「本当はカケラだけでも空導石を欲しかったのですが、手に入らないものをねだっても仕方ありませんね。今は空鯨からヘイトが消えた事を喜ぶとしましょう。それとお義父さん、後でお話があります」
金狼氏、山本氏、イスカ氏、師父氏、オクト君の順番で本日の検証の答えをいただく。最後にちょっと不穏なフレーズを語るオクト君が気になるが、まぁ大丈夫だろうと現地解散した。
しかし私は忘れていた。
パーティーを解散すれば『輸送』の効果も切れる事を。
重力によるしがらみを思い出した人々から次々に悲鳴が上がったのはその直後だった。あーあ……みんなここが木の上だって忘れてたんじゃない?
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