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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
397.お爺ちゃんのドリームランド探訪9
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さて。山から興味を無くした私はまともに下山するつもりもなく、ストレージから取り出した蝙蝠傘を開いて崖から飛び降りる。
称号スキルの空歩を利用しながら足場を確保し、弾むように空を駆ける。
風操作で思うままに飛ぶのも良いが、自然風に身を任せるのもまた乙なモノだ。
蝙蝠傘で風を集めつつ、それを制御しながら地上へと降り立つ。傘を閉じて、懐のストレージにしまえば私は手ぶらとなった。
「さて、騒がしい人も居なくなったのでゆっくりと探索といきましょうか」
【騒がしい? まぁ間違ってないけど】
【アキカゼさん単体でも騒ぎ起こすからなぁ】
【それ】
不本意な噂話が持ち上がる。
やはり私の今までの行いが彼らをそう思わせるのか。
私なんてただ写真撮影が趣味なだけの老人なのにね?
「考察は任せますが、あのダンジョン。どんな効果をもたらしてくれるのか今から楽しみですね」
【それよりヨグ=ソトースと連盟組んだって本当ですか?】
「うん。クトゥルフさんも乗り気でね。じゃあついでだからご一緒しましょうとお話に乗りました。そもそもこの話、持ち出したのは私じゃなくてもりもりハンバーグ君の方だったんだよ? いつの間にか私がやらかしたことになってるけどね」
【そうなん?】
【ていうかあの人も大概暗躍してるよな】
【普通に高ポイントで2位なんやぞ】
【僕はお義父さんの世話になってただけなんですけどね】
【おっと本人登場】
【ハンバーグ氏おっすおっす】
【やあやあ】
なんだかんだこの人もコミュ強なんだよね。
フィール曰く、そこが気に入って付き合いだしたらしいし。
どちらかと言えば引っ込み思案な彼女が気にいる相手だからと任せたが、なんの因果か今では立場が逆転してしまってすっかり尻に敷かれているよ。まぁ女房を立てる彼のことだ。
それが本望なのは間違いない。
「それでもりもりハンバーグ君、ヨグ=ソトースさんとの面会はできた?」
【それがあいにく留守のようで。ダン・ウィッチ村にはたどり着いたんですがすれ違ってしまって】
「あらら。でもナイアルラトホテプは役に立ったんだ?」
【ええ、彼の能力で重要拠点まで一っ飛びでした】
「あ、じゃあこの世界のマッピングは……」
【残念ながら】
【結局進捗0%のままってわけね】
【そもそもマップはつぎはぎなんやろ? どことどこがつながってるかまで把握できるもんなの?】
「それは誰かがやってくれるとして」
【草】
【全部丸投げなんですね】
「正直こちらへ鳥類旅行記のメンバーの誰かが来るのを待った方が早い気もするんですよね。あの人達って趣味で地図作りしてるでしょ? 天空のフィールドマップも彼らの仕事だし」
【とんでもない労力かかる仕事押し付けんな】
【でも、まああのマップの完成度なら求める気持ちもわからんでもない】
【このゲーム、変わり者の方が目立つ活躍するもんな】
【登山部も飛行部も釣り部もみんな有名になったな、そういや】
【全部アキカゼさんが関わってから目立ったよな】
「偶然だよ。私はただ資金提供をしただけだよ? 熱意を受け取ってやれることをやっただけさ」
【それを思ったところで実行に移せる人が少なすぎる件】
【でも資金提供をしたからには見返りを求めるんでしょ?】
「どうかな。ただお金がなくて伸び悩んでいる人達が何をやり遂げるのか見てみたいと思った。スズキさんのアイドルデビューもその一環かな? 最初こそ乗り気じゃなかったのに今はノリノリじゃない? 私はね、そんな頑張る子の背中を押すのが生き甲斐なんだよ。老い先短い年寄りのちょっとしたお節介さ」
照れ隠しに戯けて見せると先程までの追及のコメントがぴたりと止む。代わりに私の就いてる陣営についての追及が上がった。
【やってる事が聖人で草】
【なんでこの人魔導書陣営なんですかねぇ?】
「クトゥルフさんに魅入られてしまったからね。私は誰が相手でも気にしないよ。それこそ袖擦り合うも他生の縁と言うだろう?」
【聖典にはこの人が必要だったのでは?】
【普通に悪役もこなせてる超人】
【悪役もハマってたしな】
「私も一介の人間だからね。自ら悪の道に走ろうと思ったことはないけど、誰かの成長を促せられるのならば喜んで悪役を引き受けようじゃないか」
山岳へと続く道は突然草原へと切り替わる。
ふと振り返った先にはもう山道の姿形もなくなっていた。
たん高く流れ行く雲。そして水平線の向こうまで切り揃えられた草原が広がっている。
今までとは違う作りにどこがフィールドの境目か全くわからない。つぎはぎであるにしろ、結び目くらいは見せてくれてもいいのにと思う。
「ん? いつの間にかフィールド切り替わった?」
【そういえば山どこいった?】
【あんな断崖絶壁、徒歩数分で見えなくなるものか?】
【もしかしたら霊樹と同じようにステルス機能があるのでは?】
【ああ、なるほど。聖典に侵入されないためのものか】
【侵入されてもショゴスまみれのダンジョンでSAN値ピンチになるだけやろ】
【今更ショゴス程度でSAN値は減らんやろ】
【それで狼狽えるような奴がドリームランドに来れるわけない件】
【なんだかんだこっち来れる条件きついのよな】
「何はともあれ、また謎が一つ浮上したわけだ。この手の謎は追いかけたところで要らぬ徒労をして終わりだ。だったら新しい謎の一つでも見つけた方が建設的じゃない?」
【それもそうか】
【丸投げするスタイルはこうして出来上がっていくわけか】
「そもそも私は門外漢だからね。得意な人がやればいいんだよ。視聴者の誰かで興味ある人は連絡くれたら融資するよ?」
【草】
【まぁお金くれるって言うんならやってやってもいいな】
【その前にライダーに選ばれてクリアする事が前提条件じゃね?】
【無理ゲー】
「別に誰かの映像を閲覧して点と点で結んでこことここはつながってるってコメント入れてくれるだけでもいいよ? 現地に来いなんて誰も言ってないし、そもそもこっちは特に治安が悪いし」
【治安どころか旧支配者が跋扈してる時点でアウトなんだよな】
【そもそもクトゥルフ神話は神様と正面切って戦うもんじゃないし】
【それ】
【人間のままでなんとかやり過ごす方よな】
「それじゃあマッピングの方はよろしくね? 本当、お金は使い道なくて困ってるくらいだから。情報抜くたびに増えていくから困ってるんだよ」
【戦闘捨てるだけで消耗品も武器も防具も必要なくなるもんな】
【何それ裏山】
【実質戦闘特化の金遣いの荒さときたら】
【まじストレージの枠が課金上限まで広げても足りない】
【一体いくら稼いでいるのか知りたい。知りたくない?】
「実は私も詳しくは数えてないんだけど99,999,999でカウントが止まってて、そこからいくら遣っても減らないんだよね」
【上限値って1億だっけ?】
【まずカンストしないから知らない】
【それ以前に素材でアベレージ払いしかした事ない奴が大半やろ】
【それな】
【ゲーム内マネーなんて幻想だって知ってるから】
【イベントで貰うけどすぐ消えるから】
【端金じゃあ足しにならんし】
【でもアキカゼさん、素材の方もやばいの持ってないっけ?】
「これ?」
不意に出したアトランティス鋼でまたもやコメントが湧く。
喉から手が出る人は未だ絶えない。
入手難易度は下がったと言うのに嘆かわしい事だね。
やはり空に上がる手間がそれを邪魔してるのだろうか。
「じゃあこれも報酬に上乗せするよ。あとはこう言うのもあるね。懐かしいね、今となっては思い出の品だ」
ストレージからは使い道のない天鋼シルファー、オリハルコン、ミスリル銀など他種にわたる。
そして視聴者も現金なもので、お金を出すと言った時より素材を出すと言った時の方が食いつきが良かった。
こう言うところはオクト君に通ずるところがあるね。
お金は欲しいと口では言うものの、実際もらえるとなるとそれほど欲して居ないのだ。
だが競争率の高い素材の場合はこれを逃したらいつ手に入るか分からないという焦りが生まれる。
最初こそ乗り気ではなかった視聴者たちも、やがて乗り気で食い入るように情報を漁り始めた。
それでもやってくれるだけでありがたい。
草原を歩く事数分。
何故か砂漠地帯へと突入する。
先程までの天高い空も雲さえも消え去り、今度は灼熱の太陽と砂力の照り返しが私を襲う。
こう言う場所は苦手だ。クトゥルフさんの力を手にしてから、殊更不快に感じるようになった。
すぐさま領域を練り上げ、展開する。
最近領域展開は息を吸うのと同じように纏えるようになった。
水の膜に覆われた空域。
照りつける太陽も少し弱まったような、そうでもないような。
ただ砂漠というだけではない何かの領域のような気がしないでもない。
【突然の領域展開】
【まぁ魚類は炎弱点だし】
「ゲームだとしてもこうも暑いのが続くと流石にバテますよ」
【まぁな。獣人も苦手やろ】
【しっかし便利な領域よな、他の神格の領域もこんな感じなのかね?】
【知らん。つーかアキカゼさん意外の領域見た事ないぞ】
【僕はまだ展開できませんね。未熟なもんで】
「あれ? そうだっけ」
【現状アキカゼさんがトップだという事がよくわかりますね】
【確かくま君が扱えた筈ですよ。聞いたことあります】
「へぇ、ナイアルラトホテプ絡みかな? 彼はあれで一皮剥けたようなものだし」
【かもですねぇ。僕はまだ失うものが多いので慎重に行く予定です】
【もっと大胆に行ってもいいのよ?】
【僕の神様はシャイなので扱いを間違えると身を滅ぼしかねないので勘弁してください」
「ガタトノーアさんとは意思疎通出来たところかな?」
【ええ。ヤディスを通じて少しづつ】
【やっぱ神格との意思疎通が肝かー】
【そうですね。そこがスタート地点で間違いないですよ。プレイヤーの能力だけあっても神格から見たら僕達なんてゴミクズ同然ですし】
【言い方www】
【実際、アトランティス陣営に与していてもアトランティス人ほど扱えてないもんな、俺ら】
「と、お客さんのようです」
砂漠地帯。そしてそのフィールドに関連する部族ときたら思いつくのはあの宗教くらいか。
人口の9割がその宗教に与していることから、誰がこの場所を支配したかは納得できる。
「お久しぶりですね、アキカゼさん」
「やぁとりもち氏。陣営は変えたかい?」
「ええ、ご提案いただいた通り。レムリアにしました。それで、立ち話もなんですので少し場所を移動しませんか?」
とりもち氏はそれほどまで敵対意識は持たず、されど波風立たぬように私の身柄を拘束する。
「既にご理解頂けてるように、ここは僕の支配地です。とはいえ、アキカゼさんに暴れられてしまうと僕では太刀打ちできません。ここは見逃しますので、こちらも見逃していただけませんでしょうか?」
【草】
【この人聖典陣営ですよね?】
【血の気の多い奴が多いのかと思ってたけど】
【いや、こいつチキンやぞ、前回もポイント低かったし】
【あーー、この人>>0001さんやん】
【でもある意味それが正解よな】
【アキカゼさんて見た目弱そうなのに戦うと普通に強いし】
【とりもちはなんら間違ってないぞ。それに拠点優先した方がポイント的にも上手いだろうし維持したい気持ちもわかるもん】
「うん、私も特に戦う意思は持ってないよ。どうりで少し鬱陶しい気配が漂ってると思った。そっか、とりもち氏の拠点だったか」
【やっぱ鬱陶しかったんだwww】
【拠点効果だっけ?】
「ええ、僕の幻影のスジャータがですね、導き手としてこの地で宣教してまして。僕はおこぼれでこの拠点を獲得する事ができたんです。本当、お恥ずかしい話で恐縮ですが」
「いやいや、幻影に好かれてこそマスターだよ? 私もスズキさんが好き勝手やってくれたおかげでダン・ウィッチ村を拠点化できたからね。そこに大した差はないよ。まずはおめでとうと言ったところかな?」
「ありがとうございます」
【こうやってみると陣地の奪い合いしてる仲だって分からんな】
【アキカゼさんの懐が深すぎるっピ】
「それじゃあ領域の展開は誤解を招くね。解くとしよう」
「そうしていただけるとありがたいです。ささ、大したもてなしはできませんが日陰にご案内いたしますよ。ここは暑いでしょう」
「うん、干からびるところだったよ」
「ははは、まぁ僕は神格の適正で状態異常はそれほどないんですけどね」
こんな場所でも汗ひとつかかずに佇むとりもち氏。
拠点効果もあるのだろうが、便利なものだね。
そういえばアーカムも今思い出せば少し息苦しさを感じたんだよね。
あの時は田舎と違って空気が澱んでるからと思ったけど、やはり相手陣営が拠点化してるのが原因だったか。
探偵さんの件もあるし、油断し過ぎないように私はとりもち氏の誘いに乗った。
称号スキルの空歩を利用しながら足場を確保し、弾むように空を駆ける。
風操作で思うままに飛ぶのも良いが、自然風に身を任せるのもまた乙なモノだ。
蝙蝠傘で風を集めつつ、それを制御しながら地上へと降り立つ。傘を閉じて、懐のストレージにしまえば私は手ぶらとなった。
「さて、騒がしい人も居なくなったのでゆっくりと探索といきましょうか」
【騒がしい? まぁ間違ってないけど】
【アキカゼさん単体でも騒ぎ起こすからなぁ】
【それ】
不本意な噂話が持ち上がる。
やはり私の今までの行いが彼らをそう思わせるのか。
私なんてただ写真撮影が趣味なだけの老人なのにね?
「考察は任せますが、あのダンジョン。どんな効果をもたらしてくれるのか今から楽しみですね」
【それよりヨグ=ソトースと連盟組んだって本当ですか?】
「うん。クトゥルフさんも乗り気でね。じゃあついでだからご一緒しましょうとお話に乗りました。そもそもこの話、持ち出したのは私じゃなくてもりもりハンバーグ君の方だったんだよ? いつの間にか私がやらかしたことになってるけどね」
【そうなん?】
【ていうかあの人も大概暗躍してるよな】
【普通に高ポイントで2位なんやぞ】
【僕はお義父さんの世話になってただけなんですけどね】
【おっと本人登場】
【ハンバーグ氏おっすおっす】
【やあやあ】
なんだかんだこの人もコミュ強なんだよね。
フィール曰く、そこが気に入って付き合いだしたらしいし。
どちらかと言えば引っ込み思案な彼女が気にいる相手だからと任せたが、なんの因果か今では立場が逆転してしまってすっかり尻に敷かれているよ。まぁ女房を立てる彼のことだ。
それが本望なのは間違いない。
「それでもりもりハンバーグ君、ヨグ=ソトースさんとの面会はできた?」
【それがあいにく留守のようで。ダン・ウィッチ村にはたどり着いたんですがすれ違ってしまって】
「あらら。でもナイアルラトホテプは役に立ったんだ?」
【ええ、彼の能力で重要拠点まで一っ飛びでした】
「あ、じゃあこの世界のマッピングは……」
【残念ながら】
【結局進捗0%のままってわけね】
【そもそもマップはつぎはぎなんやろ? どことどこがつながってるかまで把握できるもんなの?】
「それは誰かがやってくれるとして」
【草】
【全部丸投げなんですね】
「正直こちらへ鳥類旅行記のメンバーの誰かが来るのを待った方が早い気もするんですよね。あの人達って趣味で地図作りしてるでしょ? 天空のフィールドマップも彼らの仕事だし」
【とんでもない労力かかる仕事押し付けんな】
【でも、まああのマップの完成度なら求める気持ちもわからんでもない】
【このゲーム、変わり者の方が目立つ活躍するもんな】
【登山部も飛行部も釣り部もみんな有名になったな、そういや】
【全部アキカゼさんが関わってから目立ったよな】
「偶然だよ。私はただ資金提供をしただけだよ? 熱意を受け取ってやれることをやっただけさ」
【それを思ったところで実行に移せる人が少なすぎる件】
【でも資金提供をしたからには見返りを求めるんでしょ?】
「どうかな。ただお金がなくて伸び悩んでいる人達が何をやり遂げるのか見てみたいと思った。スズキさんのアイドルデビューもその一環かな? 最初こそ乗り気じゃなかったのに今はノリノリじゃない? 私はね、そんな頑張る子の背中を押すのが生き甲斐なんだよ。老い先短い年寄りのちょっとしたお節介さ」
照れ隠しに戯けて見せると先程までの追及のコメントがぴたりと止む。代わりに私の就いてる陣営についての追及が上がった。
【やってる事が聖人で草】
【なんでこの人魔導書陣営なんですかねぇ?】
「クトゥルフさんに魅入られてしまったからね。私は誰が相手でも気にしないよ。それこそ袖擦り合うも他生の縁と言うだろう?」
【聖典にはこの人が必要だったのでは?】
【普通に悪役もこなせてる超人】
【悪役もハマってたしな】
「私も一介の人間だからね。自ら悪の道に走ろうと思ったことはないけど、誰かの成長を促せられるのならば喜んで悪役を引き受けようじゃないか」
山岳へと続く道は突然草原へと切り替わる。
ふと振り返った先にはもう山道の姿形もなくなっていた。
たん高く流れ行く雲。そして水平線の向こうまで切り揃えられた草原が広がっている。
今までとは違う作りにどこがフィールドの境目か全くわからない。つぎはぎであるにしろ、結び目くらいは見せてくれてもいいのにと思う。
「ん? いつの間にかフィールド切り替わった?」
【そういえば山どこいった?】
【あんな断崖絶壁、徒歩数分で見えなくなるものか?】
【もしかしたら霊樹と同じようにステルス機能があるのでは?】
【ああ、なるほど。聖典に侵入されないためのものか】
【侵入されてもショゴスまみれのダンジョンでSAN値ピンチになるだけやろ】
【今更ショゴス程度でSAN値は減らんやろ】
【それで狼狽えるような奴がドリームランドに来れるわけない件】
【なんだかんだこっち来れる条件きついのよな】
「何はともあれ、また謎が一つ浮上したわけだ。この手の謎は追いかけたところで要らぬ徒労をして終わりだ。だったら新しい謎の一つでも見つけた方が建設的じゃない?」
【それもそうか】
【丸投げするスタイルはこうして出来上がっていくわけか】
「そもそも私は門外漢だからね。得意な人がやればいいんだよ。視聴者の誰かで興味ある人は連絡くれたら融資するよ?」
【草】
【まぁお金くれるって言うんならやってやってもいいな】
【その前にライダーに選ばれてクリアする事が前提条件じゃね?】
【無理ゲー】
「別に誰かの映像を閲覧して点と点で結んでこことここはつながってるってコメント入れてくれるだけでもいいよ? 現地に来いなんて誰も言ってないし、そもそもこっちは特に治安が悪いし」
【治安どころか旧支配者が跋扈してる時点でアウトなんだよな】
【そもそもクトゥルフ神話は神様と正面切って戦うもんじゃないし】
【それ】
【人間のままでなんとかやり過ごす方よな】
「それじゃあマッピングの方はよろしくね? 本当、お金は使い道なくて困ってるくらいだから。情報抜くたびに増えていくから困ってるんだよ」
【戦闘捨てるだけで消耗品も武器も防具も必要なくなるもんな】
【何それ裏山】
【実質戦闘特化の金遣いの荒さときたら】
【まじストレージの枠が課金上限まで広げても足りない】
【一体いくら稼いでいるのか知りたい。知りたくない?】
「実は私も詳しくは数えてないんだけど99,999,999でカウントが止まってて、そこからいくら遣っても減らないんだよね」
【上限値って1億だっけ?】
【まずカンストしないから知らない】
【それ以前に素材でアベレージ払いしかした事ない奴が大半やろ】
【それな】
【ゲーム内マネーなんて幻想だって知ってるから】
【イベントで貰うけどすぐ消えるから】
【端金じゃあ足しにならんし】
【でもアキカゼさん、素材の方もやばいの持ってないっけ?】
「これ?」
不意に出したアトランティス鋼でまたもやコメントが湧く。
喉から手が出る人は未だ絶えない。
入手難易度は下がったと言うのに嘆かわしい事だね。
やはり空に上がる手間がそれを邪魔してるのだろうか。
「じゃあこれも報酬に上乗せするよ。あとはこう言うのもあるね。懐かしいね、今となっては思い出の品だ」
ストレージからは使い道のない天鋼シルファー、オリハルコン、ミスリル銀など他種にわたる。
そして視聴者も現金なもので、お金を出すと言った時より素材を出すと言った時の方が食いつきが良かった。
こう言うところはオクト君に通ずるところがあるね。
お金は欲しいと口では言うものの、実際もらえるとなるとそれほど欲して居ないのだ。
だが競争率の高い素材の場合はこれを逃したらいつ手に入るか分からないという焦りが生まれる。
最初こそ乗り気ではなかった視聴者たちも、やがて乗り気で食い入るように情報を漁り始めた。
それでもやってくれるだけでありがたい。
草原を歩く事数分。
何故か砂漠地帯へと突入する。
先程までの天高い空も雲さえも消え去り、今度は灼熱の太陽と砂力の照り返しが私を襲う。
こう言う場所は苦手だ。クトゥルフさんの力を手にしてから、殊更不快に感じるようになった。
すぐさま領域を練り上げ、展開する。
最近領域展開は息を吸うのと同じように纏えるようになった。
水の膜に覆われた空域。
照りつける太陽も少し弱まったような、そうでもないような。
ただ砂漠というだけではない何かの領域のような気がしないでもない。
【突然の領域展開】
【まぁ魚類は炎弱点だし】
「ゲームだとしてもこうも暑いのが続くと流石にバテますよ」
【まぁな。獣人も苦手やろ】
【しっかし便利な領域よな、他の神格の領域もこんな感じなのかね?】
【知らん。つーかアキカゼさん意外の領域見た事ないぞ】
【僕はまだ展開できませんね。未熟なもんで】
「あれ? そうだっけ」
【現状アキカゼさんがトップだという事がよくわかりますね】
【確かくま君が扱えた筈ですよ。聞いたことあります】
「へぇ、ナイアルラトホテプ絡みかな? 彼はあれで一皮剥けたようなものだし」
【かもですねぇ。僕はまだ失うものが多いので慎重に行く予定です】
【もっと大胆に行ってもいいのよ?】
【僕の神様はシャイなので扱いを間違えると身を滅ぼしかねないので勘弁してください」
「ガタトノーアさんとは意思疎通出来たところかな?」
【ええ。ヤディスを通じて少しづつ】
【やっぱ神格との意思疎通が肝かー】
【そうですね。そこがスタート地点で間違いないですよ。プレイヤーの能力だけあっても神格から見たら僕達なんてゴミクズ同然ですし】
【言い方www】
【実際、アトランティス陣営に与していてもアトランティス人ほど扱えてないもんな、俺ら】
「と、お客さんのようです」
砂漠地帯。そしてそのフィールドに関連する部族ときたら思いつくのはあの宗教くらいか。
人口の9割がその宗教に与していることから、誰がこの場所を支配したかは納得できる。
「お久しぶりですね、アキカゼさん」
「やぁとりもち氏。陣営は変えたかい?」
「ええ、ご提案いただいた通り。レムリアにしました。それで、立ち話もなんですので少し場所を移動しませんか?」
とりもち氏はそれほどまで敵対意識は持たず、されど波風立たぬように私の身柄を拘束する。
「既にご理解頂けてるように、ここは僕の支配地です。とはいえ、アキカゼさんに暴れられてしまうと僕では太刀打ちできません。ここは見逃しますので、こちらも見逃していただけませんでしょうか?」
【草】
【この人聖典陣営ですよね?】
【血の気の多い奴が多いのかと思ってたけど】
【いや、こいつチキンやぞ、前回もポイント低かったし】
【あーー、この人>>0001さんやん】
【でもある意味それが正解よな】
【アキカゼさんて見た目弱そうなのに戦うと普通に強いし】
【とりもちはなんら間違ってないぞ。それに拠点優先した方がポイント的にも上手いだろうし維持したい気持ちもわかるもん】
「うん、私も特に戦う意思は持ってないよ。どうりで少し鬱陶しい気配が漂ってると思った。そっか、とりもち氏の拠点だったか」
【やっぱ鬱陶しかったんだwww】
【拠点効果だっけ?】
「ええ、僕の幻影のスジャータがですね、導き手としてこの地で宣教してまして。僕はおこぼれでこの拠点を獲得する事ができたんです。本当、お恥ずかしい話で恐縮ですが」
「いやいや、幻影に好かれてこそマスターだよ? 私もスズキさんが好き勝手やってくれたおかげでダン・ウィッチ村を拠点化できたからね。そこに大した差はないよ。まずはおめでとうと言ったところかな?」
「ありがとうございます」
【こうやってみると陣地の奪い合いしてる仲だって分からんな】
【アキカゼさんの懐が深すぎるっピ】
「それじゃあ領域の展開は誤解を招くね。解くとしよう」
「そうしていただけるとありがたいです。ささ、大したもてなしはできませんが日陰にご案内いたしますよ。ここは暑いでしょう」
「うん、干からびるところだったよ」
「ははは、まぁ僕は神格の適正で状態異常はそれほどないんですけどね」
こんな場所でも汗ひとつかかずに佇むとりもち氏。
拠点効果もあるのだろうが、便利なものだね。
そういえばアーカムも今思い出せば少し息苦しさを感じたんだよね。
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