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53.紹介したい人
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サフィーナが、アリスティアを連れてライラの元へ行くと、その様子を見ていたジェイデンが直ぐさま動き始めた。
その姿に、意思疎通が取れたサフィーナとライラは揃って扇子を開くとクスクスと微笑み合った。
「ねぇ、ティア!
是非とも紹介したい人がいるの!」
ライラは、優雅に扇子を閉じるとこちらに向かってくる兄を横目に捉えアリスティアに声をかけた。
「ライラ!サフィーナ嬢!
今日は、サポートをありがとう!
二人のおかげで全て順調だよ!」
「「「!!!」」」
ライラですら、滅多に見ることのない様な満面の笑みに、ライラとサフィーナは驚き、周りからは黄色い声が飛びはじめる。
それを気にすることなく、その微笑みは二人の側にいたアリスティアへと向けられる。
その視線に気づいたライラは、待ってました!とばかりに、ジェイデンにアリスティアを紹介した。
「お兄様!こちらは、サフィーナ様とセルジオ様の従姉妹で私の友人でもある、トラネスタ公爵家のアリスティア様ですわ!
結婚式の準備もお手伝いしてくださったの!」
「初めまして、ジェイデン殿下。
この度は、素晴らしいお茶会へ招待いただきありがとうございます。
トラネスタ公爵家が長女、アリスティア・リーン・トラネスタと申します」
「はじめまして…か」
「!?」
「アリスティア嬢、先のライラとセルジオの結婚式ではご尽力いただいた様で感謝します。
改めまして、ライラの兄でトロワ王国第三男ジェイデン・ユース・トロワです」
「今後とも宜しくお願い致します!」
「こちらこそ。では、また後で!」
そう言って、お互いの挨拶を済ませた後、ジェイデンはまた挨拶回りへと戻っていった。
「…あの、殿下がまたあとでですって!?
…信じられないわ。もう、殿下が別人に見えてきたわ~」
「クスクス!本当よね!あんなお兄様、初めて見るわ!」
「…二人が驚くほど、ジェイデン殿下は普段とは違うのかしら?」
「「ええ!!全く!」」
ライラとサフィーナの二人は、声をそろえて勢いよくアリスティアに振り返った。
「ほら、以前ティアには少し話したでしょっ?お兄様の女嫌いが酷くて困ってる!って」
「ええ、だから正直意外だったわ…」
「だから、私達も驚いているの!
だって、お兄様は基本的に家族以外には笑いかけないのよ!」
「…え?」
笑わないって…
とても満面の笑みだけど…?
アリスティアは、終始笑顔で社交を続けているジェイデンを見ながら不思議そうに首を傾げた。
その様子に、ライラは思わず苦笑いをする。
「トロワの令嬢達と違って隣国の令嬢方は騒がないから、お兄様も安心したのかしら?」
「でも、これ…殿下が下がられた後は大変なことになりそうよ~」
「そうね。でも、倒れないだけマシだわ!」
「…そんなによく倒れるなんて大丈夫なの?」
「ええ!いつもの事だから!」
「そう。でも、それが本当ならジェイデン殿下は精神的に参ってしまうわね…」
「「…!?」」
アリスティアの放った一言にライラとサフィーナは、はっ!とした。
確かに、今までも大変だとは思っていたが、それはあくまで"ジェイデンがモテるからだ!"と考えてきた。
しかし、アリスティアが言うように『ジェイデンが精神的に参る』とまでは考えたことが無かった。
王族である彼は、常日頃から誰かに見られる立場にいる。
王女の立場である、ライラもそれが当たり前だった。
だからこそ、ジェイデンは煩わしさから解放されたくて茶会に出なくなった…と、思っていた。
しかし、毎回自分の参加するお茶会で騒がれ失神者が相次げば、煩わしいどころか精神的に嫌になるだろう。
王族としては"仕方が無い"と考えてしまうが…
一人の人間として考えると、彼がされてきたことは明らかに"異常"だった。
ライラが、兄の境遇に思いを馳せていると、笑顔で社交を交わすジェイデンを眺めながらアリスティアがそっと呟いた。
「あの様子なら…本日のお茶会はきっと楽しんでいると思うわ。良かったわね!ライラ」
柔らかく微笑みながら『だから心配しなくても大丈夫』とでも言うかのように、優しい眼差しを向けるアリスティア。
その優しさに、ライラの胸が熱くなる。
そして、遠目に見える兄を見つめ強く願った。
"どうか、お兄様の恋が実りますように…"
その姿に、意思疎通が取れたサフィーナとライラは揃って扇子を開くとクスクスと微笑み合った。
「ねぇ、ティア!
是非とも紹介したい人がいるの!」
ライラは、優雅に扇子を閉じるとこちらに向かってくる兄を横目に捉えアリスティアに声をかけた。
「ライラ!サフィーナ嬢!
今日は、サポートをありがとう!
二人のおかげで全て順調だよ!」
「「「!!!」」」
ライラですら、滅多に見ることのない様な満面の笑みに、ライラとサフィーナは驚き、周りからは黄色い声が飛びはじめる。
それを気にすることなく、その微笑みは二人の側にいたアリスティアへと向けられる。
その視線に気づいたライラは、待ってました!とばかりに、ジェイデンにアリスティアを紹介した。
「お兄様!こちらは、サフィーナ様とセルジオ様の従姉妹で私の友人でもある、トラネスタ公爵家のアリスティア様ですわ!
結婚式の準備もお手伝いしてくださったの!」
「初めまして、ジェイデン殿下。
この度は、素晴らしいお茶会へ招待いただきありがとうございます。
トラネスタ公爵家が長女、アリスティア・リーン・トラネスタと申します」
「はじめまして…か」
「!?」
「アリスティア嬢、先のライラとセルジオの結婚式ではご尽力いただいた様で感謝します。
改めまして、ライラの兄でトロワ王国第三男ジェイデン・ユース・トロワです」
「今後とも宜しくお願い致します!」
「こちらこそ。では、また後で!」
そう言って、お互いの挨拶を済ませた後、ジェイデンはまた挨拶回りへと戻っていった。
「…あの、殿下がまたあとでですって!?
…信じられないわ。もう、殿下が別人に見えてきたわ~」
「クスクス!本当よね!あんなお兄様、初めて見るわ!」
「…二人が驚くほど、ジェイデン殿下は普段とは違うのかしら?」
「「ええ!!全く!」」
ライラとサフィーナの二人は、声をそろえて勢いよくアリスティアに振り返った。
「ほら、以前ティアには少し話したでしょっ?お兄様の女嫌いが酷くて困ってる!って」
「ええ、だから正直意外だったわ…」
「だから、私達も驚いているの!
だって、お兄様は基本的に家族以外には笑いかけないのよ!」
「…え?」
笑わないって…
とても満面の笑みだけど…?
アリスティアは、終始笑顔で社交を続けているジェイデンを見ながら不思議そうに首を傾げた。
その様子に、ライラは思わず苦笑いをする。
「トロワの令嬢達と違って隣国の令嬢方は騒がないから、お兄様も安心したのかしら?」
「でも、これ…殿下が下がられた後は大変なことになりそうよ~」
「そうね。でも、倒れないだけマシだわ!」
「…そんなによく倒れるなんて大丈夫なの?」
「ええ!いつもの事だから!」
「そう。でも、それが本当ならジェイデン殿下は精神的に参ってしまうわね…」
「「…!?」」
アリスティアの放った一言にライラとサフィーナは、はっ!とした。
確かに、今までも大変だとは思っていたが、それはあくまで"ジェイデンがモテるからだ!"と考えてきた。
しかし、アリスティアが言うように『ジェイデンが精神的に参る』とまでは考えたことが無かった。
王族である彼は、常日頃から誰かに見られる立場にいる。
王女の立場である、ライラもそれが当たり前だった。
だからこそ、ジェイデンは煩わしさから解放されたくて茶会に出なくなった…と、思っていた。
しかし、毎回自分の参加するお茶会で騒がれ失神者が相次げば、煩わしいどころか精神的に嫌になるだろう。
王族としては"仕方が無い"と考えてしまうが…
一人の人間として考えると、彼がされてきたことは明らかに"異常"だった。
ライラが、兄の境遇に思いを馳せていると、笑顔で社交を交わすジェイデンを眺めながらアリスティアがそっと呟いた。
「あの様子なら…本日のお茶会はきっと楽しんでいると思うわ。良かったわね!ライラ」
柔らかく微笑みながら『だから心配しなくても大丈夫』とでも言うかのように、優しい眼差しを向けるアリスティア。
その優しさに、ライラの胸が熱くなる。
そして、遠目に見える兄を見つめ強く願った。
"どうか、お兄様の恋が実りますように…"
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