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番外編
*シェリナス・ヒース(2)
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「…っ!お父様、私には婚約を考えている人がいます!今度、お父様にもご紹介できればと考えていたところでして!」
ハッとしたように、シェリナスは当主である父に弁明するかの様に訴えかけた。
しかし、その思いは父の一喝で無情にも一瞬で消える事となる。
「黙れ!シェリナス!」
「っ!…お父様!?」
「お前が、レオンハルト殿下とどの様な関係だったか…全て陛下より伺っている」
「!?」
「今回、お前を婚約者にと選ばれたのもそれが理由だと、陛下ははっきりと申された。
お前が、自ら進んで殿下の元へ訪れていた事実があるかぎり、こちらから意義を申し立てることはできぬ。
『悔やむなら、自らの行いを悔やめ』
そう、陛下は仰っていた。
これは、その方ら両方に課せられた責任だと…
そして、例えレオンハルト殿下であっても覆らせることが出来ないよう、その為の"王命"なのだ!と陛下は、はっきりと断言された」
そう話す父である侯爵は、頭を抱えるようにして大きく溜息をついた。
そして、向かいに座るシェリナスは唯々涙していた。
全ては、間違いなく自分達が侵した過ちのせいだと、理解しているからこその涙だった。
そして、シェリナスは瞬時に理解する。
自分は、婚約を約束した愛する人と一緒になることができない事…
そして、後から知ったことだが友人の好きな人はレオンハルトだったこと、その友人の想人と結婚しなければいけない事…
そして、全ては王命であり散々好き勝手してきた自分たちへの罰である事に、シェリナスは絶望する。
_______そして、その翌日。
シェリナスは、何年かぶりにレオンハルトの執務室を訪れた。
案の定、レオンハルトはシェリナスよりも酷い状態だった。
かなり暴れ回ったのだろう。
普段から整理整頓されていたはずの執務室は、足の置場もないほどに散らかっていた。
そして、当の本人からは殺気でも出しているかのような威圧をかけられる。
「…ご無沙汰しております、殿下」
挨拶をするものの、レオンハルトからの返しは無く視線だけが突き刺さってくる。
その視線に怯むこと無く、シェリナスは言葉を続けた。
「単刀直入に申し上げます。
私には、婚約を約束した人がおります。その人を愛しております。
ですので…殿下と婚約はしたくありません」
はっきりと前に座るレオンハルトを見据えて、シェリナスは宣言した。
すると、間髪入れずに返事が返ってきた。
「俺もだ」と。
それは、紛れもなく彼の本心なのだろう。
そして、苦しそうに顔を歪めて続ける。
「王命だ」と。
「…何とかなりませんでしょうか?」
恐る恐る、レオンハルトに問いかけるシェリナスに彼は答える。
「なんとかなるなら、すでにお前との婚約は無かったことにしているさ。
…しかも、勝手に人の部屋に押しかけてきては、俺の上で腰を振るような女が妻になるなんて、最悪でしかない。
俺の最愛は一人だけだ」
その言葉に、シェリナスも反論する。
「確かに、押しかけていたことは認めますが…
それを止めなかったのは殿下ではありませんか!
それに、私にとっても最愛は彼以外おりません」
自分たちが、似たもの同士であるというのは理解していた。
それ故に、今更夫婦としてやっていくなんて無理だとも分かっている。
しかも、お互い別の相手を愛してやまない。
そこまで、調べた上での"陛下からの罰"なのだろう。
結局、解決策を見つけられぬまま、正式にレオンハルトとシェリナスの婚約が国中に発表された。
ハッとしたように、シェリナスは当主である父に弁明するかの様に訴えかけた。
しかし、その思いは父の一喝で無情にも一瞬で消える事となる。
「黙れ!シェリナス!」
「っ!…お父様!?」
「お前が、レオンハルト殿下とどの様な関係だったか…全て陛下より伺っている」
「!?」
「今回、お前を婚約者にと選ばれたのもそれが理由だと、陛下ははっきりと申された。
お前が、自ら進んで殿下の元へ訪れていた事実があるかぎり、こちらから意義を申し立てることはできぬ。
『悔やむなら、自らの行いを悔やめ』
そう、陛下は仰っていた。
これは、その方ら両方に課せられた責任だと…
そして、例えレオンハルト殿下であっても覆らせることが出来ないよう、その為の"王命"なのだ!と陛下は、はっきりと断言された」
そう話す父である侯爵は、頭を抱えるようにして大きく溜息をついた。
そして、向かいに座るシェリナスは唯々涙していた。
全ては、間違いなく自分達が侵した過ちのせいだと、理解しているからこその涙だった。
そして、シェリナスは瞬時に理解する。
自分は、婚約を約束した愛する人と一緒になることができない事…
そして、後から知ったことだが友人の好きな人はレオンハルトだったこと、その友人の想人と結婚しなければいけない事…
そして、全ては王命であり散々好き勝手してきた自分たちへの罰である事に、シェリナスは絶望する。
_______そして、その翌日。
シェリナスは、何年かぶりにレオンハルトの執務室を訪れた。
案の定、レオンハルトはシェリナスよりも酷い状態だった。
かなり暴れ回ったのだろう。
普段から整理整頓されていたはずの執務室は、足の置場もないほどに散らかっていた。
そして、当の本人からは殺気でも出しているかのような威圧をかけられる。
「…ご無沙汰しております、殿下」
挨拶をするものの、レオンハルトからの返しは無く視線だけが突き刺さってくる。
その視線に怯むこと無く、シェリナスは言葉を続けた。
「単刀直入に申し上げます。
私には、婚約を約束した人がおります。その人を愛しております。
ですので…殿下と婚約はしたくありません」
はっきりと前に座るレオンハルトを見据えて、シェリナスは宣言した。
すると、間髪入れずに返事が返ってきた。
「俺もだ」と。
それは、紛れもなく彼の本心なのだろう。
そして、苦しそうに顔を歪めて続ける。
「王命だ」と。
「…何とかなりませんでしょうか?」
恐る恐る、レオンハルトに問いかけるシェリナスに彼は答える。
「なんとかなるなら、すでにお前との婚約は無かったことにしているさ。
…しかも、勝手に人の部屋に押しかけてきては、俺の上で腰を振るような女が妻になるなんて、最悪でしかない。
俺の最愛は一人だけだ」
その言葉に、シェリナスも反論する。
「確かに、押しかけていたことは認めますが…
それを止めなかったのは殿下ではありませんか!
それに、私にとっても最愛は彼以外おりません」
自分たちが、似たもの同士であるというのは理解していた。
それ故に、今更夫婦としてやっていくなんて無理だとも分かっている。
しかも、お互い別の相手を愛してやまない。
そこまで、調べた上での"陛下からの罰"なのだろう。
結局、解決策を見つけられぬまま、正式にレオンハルトとシェリナスの婚約が国中に発表された。
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