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番外編
*ロイド・キャンベル(1)
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完結後にも関わらず、お気に入り登録が増えていることに感動しております。
皆様、ありがとうございます!
以前書いていた番外編です。
軽く読んでもらえると嬉しいです。
*****
あの日、無理やり抱いた女は俺の初恋の相手だった。
キャンベル侯爵家嫡男ロイド・キャンベル。
騎士団長を父に持つ彼もまた、まだ若くして剣の腕前を認められた強者だった。
強面で体格のガッシリとした騎士団長とは、似ても似つかない、そのスラリとした体格から繰り出される剣技は、まるで剣舞ではないかと見惚れる程の美しさだと言われている。
また、そんな姿からは想像もつかないほどの力量で相手を薙ぎ倒していく姿は、年頃の女性達を虜にするには十分だった。
自ら、声を掛けずとも周りの女性たちが彼を放っておくことはない。
一歩外に出れば必ずと言っていい程、女達が群がってくる。
そんな状況が続けば、次第に一人一人を相手にすることは困難になり、纏めて相手をするようになっていった。
甘いマスクの彼が一言『脱げ』と言えば、彼女達は喜んで裸体を曝け出してくる。
『咥えろ』と言えば、もはや複数人で取り合いになる。
それが、彼にとっても周りにとっても当たり前だった。
ロイドが抱いた相手は数知れず…
上は高貴な令嬢から、下は老舗の商屋の娘まで…様々だった。
しかし、どんなに身分が高い相手と関係を持ったとしても、彼の中で忠実に守られていたことがある。
それは…
"自ら手を出すことは絶対にしない"
と、言うものだ。
相手がどんなに美しく魅力的な令嬢であっても、相手から求められない限り絶対に手を出さなかった。
ただ1人を除いては___
国中の女達を、一度は組み敷いたことがある!
と、比喩されているロイドにも"初恋"というものがあった。
幼い頃から、母親譲りの綺麗な顔立ちをしていたロイドは、よく姉達からドレスを着せられたり花冠を付けられたりとオモチャにされていた。
もちろん、本人は嫌がるのだが…
5つ上の姉と3つ上の姉に対抗すべき術もなく、子供ながらも黙って従うのが一番だと判断し、この日も、自称"お姫様ごっこ"というものに付き合わされていた。
普段となんら代わり映えのしない時間を過ごすはずが、珍しく3つ上の姉が友人を招いていたのだ。
そして、その友人と一緒に訪れたのが、友人の妹であるビビアンと、その幼馴染であるアリスティアだった。
2人は、不思議そうにロイドを見ると首を傾けた。
そして、隣の姉に問いかけた。
「…お姉様達、こちらは男の子よね?」と。
ビビアンの姉が、少し困った様に笑うと、ロイドの姉が楽しそうに答えた。
「そうよ!弟のロイドよ!この子、お母様に似てとっても綺麗なの~!だから、ついつい着飾らせたくなっちゃうの♪」
そう答える姉に、悪意は全くない。
心から、着飾らせたいだけなのだ。
それは、ロイド自身が一番よく分かっていた。だから、怒る事もせず楽しそうな姉達に付き合ってあげているのだ。
そう、思っていたところに意外な伏兵が降り立った。
「本当に、お綺麗だわ…
きっと男装であっても、男装の麗人として人気が出そうですわね!」
そう言って、ドレスを着せられたロイドの目の前に、顔を突きつけてキラキラとした目で上から下までを見回す令嬢。
彼女は、1人うんうんと納得する様に頷くと、ロイドを見てニコッと微笑んだ。
「___っ!!!」
その、見目美しい容姿から放たれた笑顔は、まるで天使のようで、幼いロイドの初心な心を刺激するには十分だった。
それからと言うもの…
アリスティアが発した【男装の麗人】と言うワードに刺激を受けた姉達が、あっという間にそっちに方向転換したのは言うまでもない。
ロイドは、すぐさまドレスから団服や礼服などの男性服で着飾られるようになった。
皆様、ありがとうございます!
以前書いていた番外編です。
軽く読んでもらえると嬉しいです。
*****
あの日、無理やり抱いた女は俺の初恋の相手だった。
キャンベル侯爵家嫡男ロイド・キャンベル。
騎士団長を父に持つ彼もまた、まだ若くして剣の腕前を認められた強者だった。
強面で体格のガッシリとした騎士団長とは、似ても似つかない、そのスラリとした体格から繰り出される剣技は、まるで剣舞ではないかと見惚れる程の美しさだと言われている。
また、そんな姿からは想像もつかないほどの力量で相手を薙ぎ倒していく姿は、年頃の女性達を虜にするには十分だった。
自ら、声を掛けずとも周りの女性たちが彼を放っておくことはない。
一歩外に出れば必ずと言っていい程、女達が群がってくる。
そんな状況が続けば、次第に一人一人を相手にすることは困難になり、纏めて相手をするようになっていった。
甘いマスクの彼が一言『脱げ』と言えば、彼女達は喜んで裸体を曝け出してくる。
『咥えろ』と言えば、もはや複数人で取り合いになる。
それが、彼にとっても周りにとっても当たり前だった。
ロイドが抱いた相手は数知れず…
上は高貴な令嬢から、下は老舗の商屋の娘まで…様々だった。
しかし、どんなに身分が高い相手と関係を持ったとしても、彼の中で忠実に守られていたことがある。
それは…
"自ら手を出すことは絶対にしない"
と、言うものだ。
相手がどんなに美しく魅力的な令嬢であっても、相手から求められない限り絶対に手を出さなかった。
ただ1人を除いては___
国中の女達を、一度は組み敷いたことがある!
と、比喩されているロイドにも"初恋"というものがあった。
幼い頃から、母親譲りの綺麗な顔立ちをしていたロイドは、よく姉達からドレスを着せられたり花冠を付けられたりとオモチャにされていた。
もちろん、本人は嫌がるのだが…
5つ上の姉と3つ上の姉に対抗すべき術もなく、子供ながらも黙って従うのが一番だと判断し、この日も、自称"お姫様ごっこ"というものに付き合わされていた。
普段となんら代わり映えのしない時間を過ごすはずが、珍しく3つ上の姉が友人を招いていたのだ。
そして、その友人と一緒に訪れたのが、友人の妹であるビビアンと、その幼馴染であるアリスティアだった。
2人は、不思議そうにロイドを見ると首を傾けた。
そして、隣の姉に問いかけた。
「…お姉様達、こちらは男の子よね?」と。
ビビアンの姉が、少し困った様に笑うと、ロイドの姉が楽しそうに答えた。
「そうよ!弟のロイドよ!この子、お母様に似てとっても綺麗なの~!だから、ついつい着飾らせたくなっちゃうの♪」
そう答える姉に、悪意は全くない。
心から、着飾らせたいだけなのだ。
それは、ロイド自身が一番よく分かっていた。だから、怒る事もせず楽しそうな姉達に付き合ってあげているのだ。
そう、思っていたところに意外な伏兵が降り立った。
「本当に、お綺麗だわ…
きっと男装であっても、男装の麗人として人気が出そうですわね!」
そう言って、ドレスを着せられたロイドの目の前に、顔を突きつけてキラキラとした目で上から下までを見回す令嬢。
彼女は、1人うんうんと納得する様に頷くと、ロイドを見てニコッと微笑んだ。
「___っ!!!」
その、見目美しい容姿から放たれた笑顔は、まるで天使のようで、幼いロイドの初心な心を刺激するには十分だった。
それからと言うもの…
アリスティアが発した【男装の麗人】と言うワードに刺激を受けた姉達が、あっという間にそっちに方向転換したのは言うまでもない。
ロイドは、すぐさまドレスから団服や礼服などの男性服で着飾られるようになった。
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