青空サークル

箕田 悠

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「この子、あたし達が見えるみたい」
 彼女の人差し指が僕を示し、隣に立った男子生徒の視線が僕の方に向く。
「……ここ、誰も来ないんじゃなかったのか」
 淡々とした口調で、彼――眼鏡くんが言葉を発する。
「おっかしーな。そのはずなんだけど……」
 オーバーなぐらいに首を傾げながら、彼女はうーんと唸る。
「ねぇ、君さぁ。なんでここに来たの?」
「なんでって……」
 まさか飛び降りに来たとは、言えるはずもない。
「……すみません。お邪魔しました」
 言い訳も思いつかず、それだけを上擦った声で言ってから一歩後ずさる。
 教室には戻れない。だったらいっそのこと保健室に行って、そのまま帰ろう。とにかく一刻も早く、この場所から立ち去るべきだった。
「逃げなくたっていいじゃん。ひどくなーい」
 彼女があからさまに頬を膨らませる。
「彼を巻き込むなよ」
 眼鏡くんがあからさまに顔を顰めている。どうやら彼は、話が通じそうだった。
「えー、だって、ずっとつまんなかったし。いいじゃん。ちょとぐらい、この子と話したって」
「でも、彼は困ってるみたいだぞ」
「そんなことないよ。この子だって、暇そうだし」
 どこからどう見たら、暇に見えるのだろう。それどころか、さっきまで自分の人生に終止符を打つという瀬戸際まで来ていたというのに。
「ね?」
 俯いていた僕の横にいつの間にか、彼女が立っていた。僕の顔を覗き込む彼女の顔に気圧され、僕は思わず仰け反る。その拍子に間抜けな声を上げて、僕は尻餅を付いた。
「ちょ、大丈夫?」
 彼女が手を差し出す。だけどすぐに「あっ、ダメじゃん」と言って、その手を引っ込めた。
「あたしてば幽霊じゃん。触れないんだった」
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