愛に縛られ、愛に溺れる

箕田 はる

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「好きだ、水瀬。俺の傍にいて欲しい」

 早速、久賀から思いの丈をぶつけられる。抑えきれない歓喜で胸を震わせている水瀬に、今度はもう片方の手を鳴河に掴まれる。

「縛って欲しいって、理玖さんはいつも言ってましたよね。俺ならいくらでも、理玖さんを縛り付けてあげますよ。身体だけじゃなくて、心も」

 鳴河の手に力が籠もる。両手の自由を奪われ、まるで、自由を奪われた鳥のようだった。だけどそれは、水瀬からしたら甘やかな拘束でもあった。

「どちらが手放したとしても、もう片方が繋ぎ止めますから。それなら理玖さんも安心でしょ。でもまぁ、俺はあり得ないですけどね」

 鳴河がさらりと言うのに対し、「俺も、そんなことは絶対ない」と久賀がきっぱりとした口調で後に続ける。

「ありがとう……こんな僕を受け入れてくれて……二人を好きになって、良かった」

 水瀬の頬に涙が伝う。二人に腕を掴まれてしまっては、涙を拭うことは出来ない。流した涙をそのままに、水瀬は思いを馳せる。
 もう二度と恋愛はしないと誓ったあの日以来、どこか自分は寂しさと諦めがあった。だからこそ、鳴河という執着の鎖が必要だった。
 でもそれだけでなく、久賀のように大人の包容力で自分を満たしてくれる人間も必要だったのだ。与え、裏切られるばかりでなく、受ける喜びを得ることが出来たのは、ひとえに二人のおかげだったのだのだから。

「……二人にわがままを言っても良い?」

 水瀬は二人の顔を交互に見てから告げる。
 同時に「当たり前だ」「当たり前です」という二人に、ぎこちなく口元を上げる。

「ずっと、僕を離さないで欲しい」

 水瀬の言葉に二人が顔を見合わせる。
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