少女のままで

一章 成井一美

危険信号

神さまや天使がいるかどうかはわからないけど
もしいたとしても彼らは前もって運命的な出逢いがあることをおしえてはくれない。




カラオケで2時間熱唱してメイクも崩れているし今日は誰にも会わないからと思って髪もまともにセットしていない。
おまけに小雨にまでふられ..






こんな姿でもし今日大事な出会いがあったらどうしようか。
少し不安になった。




ショーウィンドウのガラスには
雨で変な癖がついたヘアースタイルに
白いワンピースから伸びる白く細い自分の足が写っていた。




「あのアニメさぁ第2期がネットでは今年の夏にはテレビでやるって言ってたのに全然やらないんだよ～」






田部井さんの喋ってる声が耳を通り抜けてゆく。








なんでだろう。待ち合わせ場所に向かうだけなのに妙に緊張する。




まだどんな人なのかもわからないのに..





ただ昔からこの良いような悪いような予感はよく当たるような気がする。







静かに私の中で危険信号が鳴っていた。

「いらっしゃいませー。2名様ですか？」







「いや、先に1人来てるはずなんですけど..」







田部井さんは辺りを見渡したがお友達はまだ来ていないようだった。






私は一瞬胸をなでおろした。



今の私はなにか変だ。
もっと気楽にいけばいいのに。
田部井さんのお友達に会う。ただそれだけのこと。なにか深刻に考え過ぎている。いつもの悪い癖だ。



高鳴る胸を頭に浮かんだ言葉で必死に落ち着かせようとしてる自分がいた。


「おタバコは吸われますか？」



「成井さんタバコ吸わないよね？」




「はい。私ちょっとトイレに...」






化粧直しをしに行こうとした時
後ろの入り口のドアが開いた。






ガラン。



田部井さんは入ってきた男の人に手をあげた。





「おお、まっちゃん久しぶり！髪黒くしたの？」