チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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81 彼と搾取する者

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夜更けから降り出した雪が深々と降り積もる中、こんな時だと言うのに王家からの使いが訪れた。
それはつまり…、どこかの家門で発症者が出たと言う事…。
大公筋ではなかったか。不謹慎だが助かった…。
大公にああ言ったものの、血清の抽出サーダさんのスキルアップはまだ成し遂げていない…。


王宮からの使者はいつも決まっ白金の小部屋へと通される。小部屋といっても僕の実家、マァの村の家くらいはあるんだが…。
白金で飾られた小さな応接間。ここは毒公爵が最後を過ごした孤独の部屋。
この部屋にいるユーリを見るのは辛い。おかしいな…、挿絵は無かったはずなのにその光景がまぶたの裏に浮かぶんだ。



「ユーリがそれを見られたくないのは知ってる。けどお願い。今日だけは僕とノールさんを同席させて。」
「だが…」

「大丈夫。僕もノールさんもユーリの毒なんかなんとも思わない!もっとえげつないもの知っちゃったし…。あいや、それはいいとして、本当に。今回だけで構わないから。」

「ユーリウス様。大丈夫ですよ。僕もアッシュ君も、ユーリウス様の真実の姿、ちゃんとわかってますから」
「あんな醜い姿を…」

「醜くないよ。ユーリはいつでも綺麗だから。凄く凄く綺麗。その銀の髪も、その濃紫の瞳も…」

「アッシュ…」
「ユーリ…」


「あー、コホン。使者様がお待ちですよ。ユーリウス様、急ぎましょうか。」


はっ!僕は今何を…。引き込まれるかと思った、あの瞳に…。



ヴェストさんのアドバイスで、僕は下履きを履き替えている…短パンに。…何故なのか。
不満か不満じゃないかと言ったら不満だが、油断させるためと言われれば納得せざるを得ない。
この姿を見れば、ただの子供と思い侮るだろう。…不本意ながら…。


ガチャリ

「使者様すみません。私は専属教師のショーグレン。閣下は本日体調が悪く…こうしてお支えしないと立っていることもままならないのです。付き従う事をお許しください。」

「そ、そうであったか。構わぬ。さっさとこの銀の小瓶を持って奥の部屋に行くがいい。うん?この子供は?」

「閣下の慰め、小姓でございます」

こ、こしょー!小姓ってアレだよね。森蘭丸とかなんとか…。小姓…。小姓か、ノールさんめ、もっとこう、他に言いようが。う、いや、小姓には従者的な意味もあったはず。ばかっ!僕のバカ!い、イヤラシイこと考えんな!こんなのただの世話係で…、それにしても、こ、小姓か…。

「小姓とな。それにしても平凡な…。はべらすならもっとこう見目の良い…」
「失礼な!僕とゆ、公爵様はこう見えて熱々で」
「趣味が悪いのう」

なんだと!自分で言うのもなんだけど、けっこう可愛いじゃないか。このつぶらな瞳といい、ピヨピヨな髪といい、健康そうな肌といい…小柄な…、いやそれはいいとして。そこそこイケていると自負しているんだが?薄らハゲめ…


「まぁいいです。ねぇ使者様。王様と王子様ってどんなお方?僕平民だからお会いしたこと無くって。」

「うん?まぁお前の様な平民ごとき、聖王様の前に立つことすら出来ぬだろうからな。仕方ない、聞かせてやるか。聖王様は、そうだな。その名の通り非常に高貴なお方だ。その類まれな、卓越したスキルで我らを率いておられる。聖王様あってのこの聖王国だ。」

「へー、すごーい(棒)」

「聖王様の眼前に立つと、自然とこう、頭が下がるのだ。この方の為なら何でもしようと思えるのだ。あれは高貴なオーラがそうさせるに違いない」

「えー、すごーい(さてはスキルだな)」

「王子殿下は大変立派なお方だ。制約のスキルを持っていてな、聖王を助けておられる。次代の王となられるお方だ」

「わー、すごーい(お前かっ)」

「ついでに教えてやろう。姫殿下は、それはもう言葉に出来ぬほど美しい方でな、あの方を一目見て心を奪われぬ者などいないだろう」

「うそー、すごーい(ユーリ以上の美しさなんてあるわけないけどねっ!)」




そうこうしてたら小瓶を持ったノールさんが、僕を見て小さくうなずきながら奥の部屋から戻って来た。
そこにユーリの姿はない。


「使者様、閣下の毒の抽出が終わりました。こちらをどうぞ…」

「お、おお、そうか。漏れ出ぬよう、しっかりと封蝋はしてあるな?」

「大丈夫でございます」

「うむ。しかと預かった。では私はこれで。帰路を急ぐゆえな、失礼する!」


逃げるように帰っていくな。ただ急いでいるだけだと思っておくけどね。だけどムカつくな…。滑って転べ!


ドサッ ーう、痛てて…ー


…まさかね。




けど、重要なことが二つ分かった。王様と王子のスキル。支配のスキルと制約のスキル…。すごい組み合わせだな。それが何千年も受け継がれているなら、王家の座が揺るがないはずだ。たとえどれほど悪辣でも。

そして姫殿下…。誰もが心を奪われる…ってか。それはその美貌ゆえか、それとも魅了系のスキル持ちなのか…。
何にしても警戒はしてしかるべきだ。僕は油断をしない男。何があろうと決して、隙は見せない…



…チュッ

うん?

「アッシュ、しばらくこうしていても良い?気分が悪いんだ」
「ユーリ…、いいよ、もちろん。ごめん、無理をさせたね。ほらしっかり。僕につかまって。」

「…スタスタ歩いてましたよね?あ、いえ、僕の気のせいです…」


使者の退場を待って、いつの間にか真横に来ていたユーリ。
何か言おうとしたノールさんはユーリの方をチラッと見ると、サッと顔をそらしその言葉を止めてしまった。



「もうすぐ解放してあげるから…あと少しの辛抱だよ、ユーリ」

「頼もしいね。ふふ、実に頼もしいよ。でも君が私を解放しても、…私は君を解放しないよ?アッシュ。」

「解放?何言ってるの?解放も何も、僕はユーリの、ユーリは僕の一部だよ。解放って表現自体がもうおかしいよ。」



甘やかに緩められるその眼差しに、ドキドキして落ち着かない。
思えば初めて会ったときから、いつもユーリは僕をドキドキさせる。この動悸は『家庭医学 丸わかりブック』にも出てこない。発熱と発汗を伴う動悸…。

もしかしてユーリは毒を発してるんじゃなかろうか。
僕にしか効かない、特別な毒を…



そんな平常心を見失いがちな僕に、ユーリと別れた途端ノールさんは呆れたように言ったのだ。



「アッシュ君、きみ隙が多いよ。隙だらけだよ…」





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