チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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125 彼と新たな毎日

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これ以上進展は見込めないだろうと言うコーネイン侯爵の結論をもって、ようやく帰ることになった12家の面々。

その中で断絶家系の幾人かは、助力を申し出た誰かしらの領地にこのまま同行するようだ。
ちなみに大昔に断絶した元ルサンブール侯爵家の姪の姪の甥の姪の…以下同文…である、ビョルンさんと、元ペンハイム侯爵の血筋の姪の娘の夫であるイングウェイさんは、なんとこのリッターホルムに残るらしい。先見性があるな。将来が楽しみだ。

彼らは反省した聖王によって、一つでも功績を上げれば問答無用で子爵位を賜る事がすでに決定している。ぜひ頑張って復興への一歩を踏み出してもらいたいものだ。

ちなみにこれらの絵画は全て一旦このリッターホルムで預かることになった。いや、きっと返却無用だろうけど。
少し不気味だがユーリはすでに呪われの身だし問題ない。
今年のユールボックビア、絵画が目印なら隔離されたいま献納受けても大丈夫だろうか…。呪いを別の器に移しかえるにしてもすぐって事ないだろうし。

……

ま、まぁ、最悪ユーリの毒から血清を抽出してすれば何とか…。


それにしても〝郷愁”とは…
失われた闇の地、呪術師の里を指してつけられたタイトルだったか…。ならこれを描いたのは誰?








「いや~疲れた。ようやく静かになった。けど、高貴なる一族が真の悪人じゃなくて良かったよ。ユーリの祖先が極悪なんて考えたくなかったし…」

「ほんの少しの行き違いがこうまでこじれるとは…。古代とはかくも野蛮であることよ」
「子爵…、そうだね。理知と文明は比例するもんね。」

「前も言った通りだ。悪か善かは勝者か敗者か、その事実で変わるのだと。物事には多面性がある。おそらく闇には闇の言い分もあろうが、それに囚われ恨み続けるなど、その時点で善とは言えぬな」
「ほんとそうだね。教授…今回はありがとう。通算10日も居てくれて。」

「なに構わぬ。公爵閣下がミチュペチュの呪物を約束してくださったからな。」


え?ユーリ、いつの間に…。

そうして仲良し二人組が一つの馬車で帰っていき、今度こそ本当の静けさがリッターホルムに戻って来た。





それにしても高貴なる一族、長の末子。妙薬生成のスキルか…。それこそユーリが持つべき本来のスキル。呪いによって歪められた…誰からも崇められたはずの神々しいスキル。

呪術師め…。思い通り婿に迎えられなかったからって逆恨みも甚だしい…末子は関係ないじゃないか!にしても長兄、まるでケネスだな。見目麗しいけどただそれだけ。…酷い言い草だな。あ、またケネスが不憫に思えてきた。

…仕方ない。少し情も湧いてきたことだし、奴はノールさんと徹底的に鍛えなおして立派な王太子に育て上げるか。うっかり大公がユーリを後継に…なんて気にでもなったらもっと面倒だし。プリンスじゃダメなんだって、やっぱ肩書はじゃないと。分かるかな?

しかしケネス、…イケるか?…イケるって!この僕とノールさんの手腕をもってすれば立派な王太子に!




そうとなれば手配せねば…

ちょうど聖神殿で大司教にも会いたかったし…、難関はユーリの説得…。







「駄目だ。決まってるじゃないか。もう王都は結構だ。毎年毎年…、冬になるたび!」

「そうは言うけど、普通に貴族はみんな冬に王都へ行くんだよ?社交しに。うちはたまたまだったけど行動として間違ってはいない。」

「社交などどうでもいい。ましてや殿下を教育だって?放っておけばいい。大叔父上もコーネイン卿もついているだろう?宮廷で雇い入れた教師はどうしたんだ。」

「イルマリ先生とアンテロ先生だっけ。あー、手を焼いてるみたい…。ノールさんに手紙で泣きついてた。だからこそこの冬の間にビシビシ…」
「今度はどこに座るつもりだ!」


まぁね。絶対ゴネると思ってた。難癖の中身は置いといて…。
しかしどーしよっかな…





「なんだ相変わらずなのかい?」
「そうなんだってば。エスターまた前みたいにいい方法考えてよ」

「いい方法か…」


今ナッツとサーダさんは王都のレストランを回っている。食べ歩きをしながらついでにガラムマサラのプロモーションもちょっとだけ。それでスパイスの受注が上がれば僕の懐はウハウハだ。

そんなわけで久々にエスターと夕食作り。
セカンドシェフもサードシェフも「ユーリウス様の夕食はぜひアッシュ様が」そう言うからだ。

「方法…、そうだな、こんなのはどうだい?」
「ふむふむ…」






「ユーリ、はいアーン」

「ああ、とてもスパイシーで美味しいね。何だいこれは?」
「ジャンバラヤ。海鮮があったらパエリアにしたかったんだけどね。はい、キノコのサラダも。アーン」

「ふふ、久しぶりだ」


こうしてパーゴラの下で食事をするのは僕の誕生日ぶりだ。
すこぶるご機嫌なユーリ。例の話を切り出すなら今だな。


「ねぇユーリ。僕欲しいものがあるんだけど…」
「なんだい?君の為ならなんでも手に入れよう」

「あのね、王都の郊外に王家の直轄養蜂農場があるって聞いて」
「養蜂…蜂蜜かい?甘味ならうちは十分だろう?メープルもあるし、きみ新しくテンサイ?育てるって言ってただろう?」
「うん。でもそこで蜂蜜酒を作ってるって聞いて」

「蜂蜜酒…?まあいい、ならばちょうど今ナッツたちが王都に」
「王家の農場だよ?ナッツもサーダさんも平民だもの。いくら公爵家のシェフでもユーリ無しでは入れないよ!それにユーリの為のお酒だから自分で選びたい!」

「私の為のお酒…?」
「新婚だもん。当然知ってるよね?ねぇ、一緒に買いに行こ?」

「も、もちろん知っているとも。そうだね…、おっといけないハンカチを忘れてしまった。少し待っててくれるかい?」
「うん。早く戻ってきてね。あのね、ユーリが居ないとご飯が美味しくないの…」

「すぐに戻る!」


すごいなエスター…、ここまでのユーリの受け答え、すべてエスターの言った通りだ…。なんでわかるんだろう…。預言者?なにその才能…。
僕の台詞も一言一句、全部エスターに言われた通りにしたけど…上手くいくのかなぁ?こんなので?




「ヴェスト!アレクシ!どちらでもいい。蜂蜜酒を知っているか?」

「ユーリウス様…、また珍しい名前を…」
「蜂蜜酒がどうかなさいましたか?」

「アッシュが王都に、王家の直轄養蜂農場に買いに行きたいと。」
「それは又…一体何故?」

「わからぬが私の為の酒だと」

「ああ。」
「何か知っているのかヴェスト!」

「教会の古書に記されておりました。古代、新婚家庭の花婿には精力増強と種付けを期待して、多産の酒である蜂蜜酒が振舞われたと。」

「精力増強…!」
「種つっ…、馬鹿!ヴェストお前もっと言いようってものが…」

「ヴェスト。それは王都以外では買えないのか。」
「蜂蜜酒は現在〝神々の酒”とされ、聖王、つまり王家だけの酒となっております。ですがリッターホルム公爵家であれば血筋的に問題ないかと。」

「そうだったのか…、ああ!またしてもアッシュに教えられた!いつになったら彼をリードできるんだ!」バン!

「ユーリウス様、それよりも早くお戻りください。食事が冷めます」

「そ、そうだな。助かったヴェスト。アレクシも仕事に戻ってくれ…」





「お帰り~、もう!遅いよ!スープ冷めちゃうよ!」

「ごめんごめん。さぁ食事を続けよう?」


どうしたのかな?うっすら汗かいて。もう夜風はけっこう涼しいんだけど。そんなに汗かいてるのにハンカチはどこ?


「アッシュ、先ほどの件だけど…」
「 ‼ 」

「…雪が降り出す前に王都へ入らなくてはね。直ぐに準備に取り掛かろう」


エ、エスター様…、神様…




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