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128 彼の叡智な彼②
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公爵邸に住まう小さな守護者。その存在を耳にしたのはいつであったか…。
恐らく初めは大公領にある小さな教区の司祭より息子の新たな奉公先を聞いた時。
敬虔な司祭は末の息子がどれほど望まれて公爵邸に参じたかを嬉しそうに語っておった。子を想う親の姿に私も思わず笑みがこぼれた。その際耳にしたのが末息子に声掛けをしたのが幼子だということ。だがその時は気に留めることもなく時は過ぎた。
だがその後、謁見に訪れた神学校に通う司祭の息子までもが公爵邸の子供を話題にしたのだ。その子供によりどれほど公爵が、リッターホルム領が変わりつつあるのかと。
あの罪深きリッターホルム。我らですら手助けの出来ぬ忌み嫌われた公爵家。その公爵家が今どれほど生気に溢れているか。それが全てその子供のおかげなのだと、そう言うのだ。
子供と面識のある司祭の息子はその小さな子供のことを、叡智に溢れ見識に深く、とても子供とは思えぬ、まるで伝説の賢者のような振る舞いでリッターホルムを、…おのが弟を導いていると嬉しそうに語ってくれた…。
小さな叡智…、頭をかすめる微かな記述…。
いつかは会わねば、だが考えたところで王家のスキルにより私には何も出来ぬと諦めていたが…まさか聖王を退かせるとは…。あの強欲にして独善的な、〝洗脳”のスキルを持った聖王を…。
聖王はかの子供を「知識の神ミーミルの化身」そう呼び今では強く崇めている。いや、恐れてすら居る。自然を司るその強大な力を。
「王城を揺らしたと…?それではまるで…」
そのうえ今度は姫に与えられたという秘薬…。それが何かは王族以外には秘匿されている。が、私の考えが正しければ恐らくそれは…
「大司教様、公爵夫人がおこしになりました」
従者の声に体が竦む。いよいよ叶う…私の推察を確認するためのその対面が。
「初めまして大司教さま。その節はうちのエスターがお世話になりました。僕の名はアッシュ。公爵家の若奥様にしてユーリの守護者!ぜひお見知りおきを。」
「お、おお…、守護者と仰るのですな。そしてその小さなお姿…、まさか本当に…」
「え?なになに?ちいさ?え?良く聞こえませんでしたけどなんて?まさか小さいなんて言って無いですよね?そんな、いやいや、聞き間違いですよね?」
「賢者様!思った通りだ…、何と言うことだ!やはり賢者様であられたか‼」
「ひぃっ!な、何事⁉」
聖神殿の片隅にひっそりと奉られる石像。それこそが古の賢者。我が聖神殿の最初の主。
そのお方は誰よりも小さな身体に類を見ないほど大きな叡智を持つという、古代神官の記録誌に残されたこの国の始祖の一人。その人の名は…
「賢者って…そりゃ僕は天才だけど少し大袈裟じゃない?ま、まぁミーミルって言ったの自分だけど…」
なるほど。賢者ではなくあくまで神の化身と申されるのだな。然らば意に沿うまで。
「それより僕は大司教さまに質問があって…。王家は色々神殿を隠れ蓑にしてたでしょ?教えていただけますか?王家の事とかリッターホルムの事とか?」
「もちろんですとも。何をお知りになりたいのですかなミーミルよ?」
「いいんですか?そんなに簡単に。僕のこと何も知らないのに」
伝説の賢者であられるというに何と謙虚な…
「貴方様はあの聖王を制圧なされた。それだけで我らは胸のすく思いでございます。あの聖王、そして前王、彼らは恐れ知らずにも神殿すら駒のひとつと考え好き勝手をなさっておいででした。毒を使ったあの忌々しき目論見…あのような事をよもや神殿で行うなどなんたる罰当たりな!いずれ神の怒りに触れるだろうと思っておりましたが…、まさかミーミルの怒りに触れるとは。宮殿の半壊程度で済んで聖王も幸いでしたな」
私の返答は信頼を得るに十分だったらしい。彼は安心したかのように矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
その中心は主に古代の呪い、リッターホルムにまつわる事。
「それから神殿の割符。宝物庫と可惜庫に保管されてるものの他にはありませんか?」
「王都の主となる四方の神殿では宝物としてそのまま収蔵されておりますな」
「うそっ‼」
「お入り用ですかな?」
「み、見せてもらえればそれでいいです!大司教様にお手間はお掛けしません。許可さえくださればこちらから伺います。」
「では王家やリッターホルムに関して私が知る事、それらも書簡にまとめておきましょう。許可状と共に用意しておきますのでいつでも取りにおいでください。」
「やったぁ!」
賢者様が喜んでおられる!
そうであったか。賢者様はリッターホルムを救済する為に顕現されたのだな。
文献で知る限りかのお方はあの場所以外に現れることはなかったのだが…、そうしてあれが消えてからはかのお方も二度と顕現されなかったと…。では、あれが再び現れたと言う事か…!
「ミーミルよ。これだけお教え下さい。決して他言は致しませぬゆえ。貴方様のスキル、それは『種子再生』。そうではありませんか?」
「…ま、いっか、大司教様だし。正確には『種子創造』だけどね」
おお…やはり…!やはりそうであったか…。多少の違いあれど問題では無かろう。種子スキルを持つ小さき賢人。私の前に顕現なさるとは…この僥倖をどう言葉にすればよいのか!
聖王の口から語られた王城での出来事。奇妙な符合に何かの前触れを感じ、縁になればと公爵邸の修復師を呼んだのは正解であった…。
そうとも、我が国は今度こそ必ずやこの小さな賢者を守らねばならぬのだ。
誰よりも小さな身体に類を見ないほど大きな叡智を持つという、古代神官の記録誌に残された始祖の一人。その人の名は…〝クルポックル”
スキル『種子再生』を持ち、南の地に豊穣を与え時に地形を整え、そして北の地に叡智を伝え…あげく志半ばのままその北の地で命を落とした我が国の守護者。長の盟友、悲劇の賢者…
恐らく初めは大公領にある小さな教区の司祭より息子の新たな奉公先を聞いた時。
敬虔な司祭は末の息子がどれほど望まれて公爵邸に参じたかを嬉しそうに語っておった。子を想う親の姿に私も思わず笑みがこぼれた。その際耳にしたのが末息子に声掛けをしたのが幼子だということ。だがその時は気に留めることもなく時は過ぎた。
だがその後、謁見に訪れた神学校に通う司祭の息子までもが公爵邸の子供を話題にしたのだ。その子供によりどれほど公爵が、リッターホルム領が変わりつつあるのかと。
あの罪深きリッターホルム。我らですら手助けの出来ぬ忌み嫌われた公爵家。その公爵家が今どれほど生気に溢れているか。それが全てその子供のおかげなのだと、そう言うのだ。
子供と面識のある司祭の息子はその小さな子供のことを、叡智に溢れ見識に深く、とても子供とは思えぬ、まるで伝説の賢者のような振る舞いでリッターホルムを、…おのが弟を導いていると嬉しそうに語ってくれた…。
小さな叡智…、頭をかすめる微かな記述…。
いつかは会わねば、だが考えたところで王家のスキルにより私には何も出来ぬと諦めていたが…まさか聖王を退かせるとは…。あの強欲にして独善的な、〝洗脳”のスキルを持った聖王を…。
聖王はかの子供を「知識の神ミーミルの化身」そう呼び今では強く崇めている。いや、恐れてすら居る。自然を司るその強大な力を。
「王城を揺らしたと…?それではまるで…」
そのうえ今度は姫に与えられたという秘薬…。それが何かは王族以外には秘匿されている。が、私の考えが正しければ恐らくそれは…
「大司教様、公爵夫人がおこしになりました」
従者の声に体が竦む。いよいよ叶う…私の推察を確認するためのその対面が。
「初めまして大司教さま。その節はうちのエスターがお世話になりました。僕の名はアッシュ。公爵家の若奥様にしてユーリの守護者!ぜひお見知りおきを。」
「お、おお…、守護者と仰るのですな。そしてその小さなお姿…、まさか本当に…」
「え?なになに?ちいさ?え?良く聞こえませんでしたけどなんて?まさか小さいなんて言って無いですよね?そんな、いやいや、聞き間違いですよね?」
「賢者様!思った通りだ…、何と言うことだ!やはり賢者様であられたか‼」
「ひぃっ!な、何事⁉」
聖神殿の片隅にひっそりと奉られる石像。それこそが古の賢者。我が聖神殿の最初の主。
そのお方は誰よりも小さな身体に類を見ないほど大きな叡智を持つという、古代神官の記録誌に残されたこの国の始祖の一人。その人の名は…
「賢者って…そりゃ僕は天才だけど少し大袈裟じゃない?ま、まぁミーミルって言ったの自分だけど…」
なるほど。賢者ではなくあくまで神の化身と申されるのだな。然らば意に沿うまで。
「それより僕は大司教さまに質問があって…。王家は色々神殿を隠れ蓑にしてたでしょ?教えていただけますか?王家の事とかリッターホルムの事とか?」
「もちろんですとも。何をお知りになりたいのですかなミーミルよ?」
「いいんですか?そんなに簡単に。僕のこと何も知らないのに」
伝説の賢者であられるというに何と謙虚な…
「貴方様はあの聖王を制圧なされた。それだけで我らは胸のすく思いでございます。あの聖王、そして前王、彼らは恐れ知らずにも神殿すら駒のひとつと考え好き勝手をなさっておいででした。毒を使ったあの忌々しき目論見…あのような事をよもや神殿で行うなどなんたる罰当たりな!いずれ神の怒りに触れるだろうと思っておりましたが…、まさかミーミルの怒りに触れるとは。宮殿の半壊程度で済んで聖王も幸いでしたな」
私の返答は信頼を得るに十分だったらしい。彼は安心したかのように矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
その中心は主に古代の呪い、リッターホルムにまつわる事。
「それから神殿の割符。宝物庫と可惜庫に保管されてるものの他にはありませんか?」
「王都の主となる四方の神殿では宝物としてそのまま収蔵されておりますな」
「うそっ‼」
「お入り用ですかな?」
「み、見せてもらえればそれでいいです!大司教様にお手間はお掛けしません。許可さえくださればこちらから伺います。」
「では王家やリッターホルムに関して私が知る事、それらも書簡にまとめておきましょう。許可状と共に用意しておきますのでいつでも取りにおいでください。」
「やったぁ!」
賢者様が喜んでおられる!
そうであったか。賢者様はリッターホルムを救済する為に顕現されたのだな。
文献で知る限りかのお方はあの場所以外に現れることはなかったのだが…、そうしてあれが消えてからはかのお方も二度と顕現されなかったと…。では、あれが再び現れたと言う事か…!
「ミーミルよ。これだけお教え下さい。決して他言は致しませぬゆえ。貴方様のスキル、それは『種子再生』。そうではありませんか?」
「…ま、いっか、大司教様だし。正確には『種子創造』だけどね」
おお…やはり…!やはりそうであったか…。多少の違いあれど問題では無かろう。種子スキルを持つ小さき賢人。私の前に顕現なさるとは…この僥倖をどう言葉にすればよいのか!
聖王の口から語られた王城での出来事。奇妙な符合に何かの前触れを感じ、縁になればと公爵邸の修復師を呼んだのは正解であった…。
そうとも、我が国は今度こそ必ずやこの小さな賢者を守らねばならぬのだ。
誰よりも小さな身体に類を見ないほど大きな叡智を持つという、古代神官の記録誌に残された始祖の一人。その人の名は…〝クルポックル”
スキル『種子再生』を持ち、南の地に豊穣を与え時に地形を整え、そして北の地に叡智を伝え…あげく志半ばのままその北の地で命を落とした我が国の守護者。長の盟友、悲劇の賢者…
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