チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
96 / 277
連載

128 彼の叡智な彼②

しおりを挟む
公爵邸に住まう小さな守護者。その存在を耳にしたのはいつであったか…。

恐らく初めは大公領にある小さな教区の司祭より息子の新たな奉公先を聞いた時。

敬虔な司祭は末の息子がどれほど望まれて公爵邸に参じたかを嬉しそうに語っておった。子を想う親の姿に私も思わず笑みがこぼれた。その際耳にしたのが末息子に声掛けをしたのが幼子だということ。だがその時は気に留めることもなく時は過ぎた。

だがその後、謁見に訪れた神学校に通う司祭の息子までもが公爵邸の子供を話題にしたのだ。その子供によりどれほど公爵が、リッターホルム領が変わりつつあるのかと。
あの罪深きリッターホルム。我らですら手助けの出来ぬ忌み嫌われた公爵家。その公爵家が今どれほど生気に溢れているか。それが全てその子供のおかげなのだと、そう言うのだ。

子供と面識のある司祭の息子はその小さな子供のことを、叡智に溢れ見識に深く、とても子供とは思えぬ、まるで伝説の賢者のような振る舞いでリッターホルムを、…おのが弟を導いていると嬉しそうに語ってくれた…。


小さな叡智…、頭をかすめる微かな記述…。

いつかは会わねば、だが考えたところで王家のスキルにより私には何も出来ぬと諦めていたが…まさか聖王を退かせるとは…。あの強欲にして独善的な、〝洗脳”のスキルを持った聖王を…。

聖王はかの子供を「知識の神ミーミルの化身」そう呼び今では強く崇めている。いや、恐れてすら居る。自然を司るその強大な力を。


「王城を揺らしたと…?それではまるで…」


そのうえ今度は姫に与えられたという秘薬…。それが何かは王族以外には秘匿されている。が、私の考えが正しければ恐らくそれは…



「大司教様、公爵夫人がおこしになりました」


従者の声に体が竦む。いよいよ叶う…私の推察を確認するためのその対面が。




「初めまして大司教さま。その節はうちのエスターがお世話になりました。僕の名はアッシュ。公爵家の若奥様にしてユーリの守護者ガーディアン!ぜひお見知りおきを。」

「お、おお…、守護者ガーディアンと仰るのですな。そしてその小さなお姿…、まさか本当に…」

「え?なになに?ちいさ?え?良く聞こえませんでしたけどなんて?まさか小さいなんて言って無いですよね?そんな、いやいや、聞き間違いですよね?」

「賢者様!思った通りだ…、何と言うことだ!やはり賢者様であられたか‼」

「ひぃっ!な、何事⁉」


聖神殿の片隅にひっそりと奉られる石像。それこそが古の賢者。我が聖神殿の最初の主。
そのお方は誰よりも小さな身体に類を見ないほど大きな叡智を持つという、古代神官の記録誌に残されたこの国の始祖の一人。その人の名は…



「賢者って…そりゃ僕は天才だけど少し大袈裟じゃない?ま、まぁミーミルって言ったの自分だけど…」


なるほど。賢者ではなくあくまで神の化身と申されるのだな。然らば意に沿うまで。


「それより僕は大司教さまに質問があって…。王家は色々神殿を隠れ蓑にしてたでしょ?教えていただけますか?王家の事とかリッターホルムの事とか?」
「もちろんですとも。何をお知りになりたいのですかなミーミルよ?」

「いいんですか?そんなに簡単に。僕のこと何も知らないのに」


伝説の賢者であられるというに何と謙虚な…


「貴方様はあの聖王を制圧なされた。それだけで我らは胸のすく思いでございます。あの聖王、そして前王、彼らは恐れ知らずにも神殿すら駒のひとつと考え好き勝手をなさっておいででした。毒を使ったあの忌々しき目論見…あのような事をよもや神殿で行うなどなんたる罰当たりな!いずれ神の怒りに触れるだろうと思っておりましたが…、まさかミーミルの怒りに触れるとは。宮殿の半壊程度で済んで聖王も幸いでしたな」


私の返答は信頼を得るに十分だったらしい。彼は安心したかのように矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
その中心は主に古代の呪い、リッターホルムにまつわる事。

「それから神殿の割符。宝物庫と可惜庫に保管されてるものの他にはありませんか?」
「王都の主となる四方の神殿では宝物としてそのまま収蔵されておりますな」

「うそっ‼」

「お入り用ですかな?」
「み、見せてもらえればそれでいいです!大司教様にお手間はお掛けしません。許可さえくださればこちらから伺います。」

「では王家やリッターホルムに関して私が知る事、それらも書簡にまとめておきましょう。許可状と共に用意しておきますのでいつでも取りにおいでください。」
「やったぁ!」


賢者様が喜んでおられる!

そうであったか。賢者様はリッターホルムを救済する為に顕現されたのだな。
文献で知る限りかのお方はあの場所以外に現れることはなかったのだが…、そうしてあれが消えてからはかのお方も二度と顕現されなかったと…。では、あれが再び現れたと言う事か…!



「ミーミルよ。これだけお教え下さい。決して他言は致しませぬゆえ。貴方様のスキル、それは『種子再生』。そうではありませんか?」

「…ま、いっか、大司教様だし。正確には『種子創造』だけどね」


おお…やはり…!やはりそうであったか…。多少の違いあれど問題では無かろう。種子スキルを持つ小さき賢人。私の前に顕現なさるとは…この僥倖をどう言葉にすればよいのか!

聖王の口から語られた王城での出来事。奇妙な符合に何かの前触れを感じ、縁になればと公爵邸の修復師を呼んだのは正解であった…。
そうとも、我が国は今度こそ必ずやこの小さな賢者を守らねばならぬのだ。






誰よりも小さな身体に類を見ないほど大きな叡智を持つという、古代神官の記録誌に残された始祖の一人。その人の名は…〝クルポックル” 

スキル『種子再生』を持ち、南の地に豊穣を与え時に地形を整え、そして北の地に叡智を伝え…あげく志半ばのままその北の地で命を落とした我が国の守護者ガーディアン。長の盟友、悲劇の賢者…




しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。 本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました! 心よりお礼申し上げます。 ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。 よければお時間のある時にお楽しみくださいませ

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑) 本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました! 本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。