チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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135 ちびっ子の信奉者

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王都から戻ったアッシュが手にしていたのは大司教の手による王家と毒に関する数枚の書付け。
そして司教から閲覧を許されたという言う残りの割符と古代の記録を複製したもの。


その解析と知見の為、今この書庫には僕とノール二人だけだ。アッシュは置くものを置いたらすべて丸投げしてとっとと行ってしまった。「終わったら呼んでね」そう言い残して。


「まぁ別に構わないがね。それにしても彼は何をしてるんだい?帰ったばかりだろう?落ち着きの無い。」

「あの…、そのね、カレッジ、なんて言うか…平民が通える学術院を作ることになってね。成り行きで…」
「その様子…、原因は君か」


「あっ、そっ、そうそう!大司教様があれほどアッシュ君に恭順してるなんて…僕もう驚いちゃって」

「呆れたな。聖王じゃあるまいしまさかミーミルの化身とかいうホラ話を真に受けてるんじゃないだろうね?」

「どうかな?信じててもおかしくない様子であられたけど…。アッシュ君が笑うたびに、こう嬉しそうにニコニコして…まるで孫を見守るおじいちゃんみたいで…」
「それ恭順っていうのかい?」



アッシュの信奉者となり果てた大司教が気前よく見せてくれたという…割符はともかく問題はこの…、古代の神官が残したという記録の書だ。


大司教の書き上げた近代王家とリッターホルムの関係性。それらはつまるところ過去からの結果だからと、アッシュは大司教の許可の元ノールを連れてその古代の書を全てを手に取り、そして戻って…複製した。

実のところ彼はスキルもないのにパラパラと見れば全てを読破するというとんでもない秘技の持ち主だ。コツを掴めば誰でも出来得るらしいのだが…、スキルを持つ僕には急いで覚える必要もない秘技。だが身につけて損はない。まあいずれ。

その彼がパラリと見てノールに交代したと言う事は読めなかったと言う事だ…。


羊皮紙に残されていたのは当時の様子。それは主に神殿に関する事が中心なのだが充分すぎるほど興味深い…。
この地に初めて建てられた当時の神殿、それは石を積み上げただけの、今とは比べ物にならないくらいとても簡素なもの。
当然羊皮紙に残されたのも古代の文字で…、あれほど難なく石板と古文書を読んで見せたアッシュが、この羊皮紙の文字は読めないという…。


「おやおや、おかしなこともあるものだ。だがこれで僕と君の読みは正しかったと証明された。」

「彼はあの石板を読んだんじゃない。やっぱり知っていたんだ。」

「如何と言うこともないさ。…彼が何者であろうとどうでもいい。彼は僕らに楽園を与えてくれる。そうだろう?」

「隙間なく書物の積み上げられた羊皮紙の匂いが鼻をくすぐる薬園のこと?」

「貴重な美術品の数々に囲まれ思う存分勉学を楽しむ楽園じゃないか?おっと、予算を気にせず料理を極める楽園もあったな。実に愉快だ」

「さあ、その彼からの新たな依頼だよ。」
「さぞ面白いことが書かれているんだろうと期待してはいたが、これはまた…」




古代、まだこの地が国としての体をなさず人々が思い思いに暮らしていた頃。当然それは非常に無秩序で不調和なものであったが自然といくつかの集落が出来て行った。

その集落の一つ、ある家族とその親類がまとまり暮らす集落に、突如として驚異的な力を持つ者が現れ始めた。
一山向こうの鳥のさえずりを聞き分ける者、異常な跳躍力を持った者、睡眠を必要としない者、当初その大きな力は身体能力に限られていた。だがいつしかその力はより不可思議な力へと変貌を遂げていった。

いつからか彼らは高貴なる一族と呼ばれるようになった。その一族の統制のもと、人々は話し合い助け合い、僅かな恵みを皆で分け合い暮らしていた。

時を同じくして少し離れた集落でも不思議な力を持つ者が誕生した。
その者は自然を操る不思議な力を持った自然と共生する者。小さき身体に類まれな叡智を持つ…彼は救済者であり、哲学者であり、解脱者でもあった。
その小さき姿ゆえ皆からクルポックルと呼ばれ気安く慕われた救済者。彼は知恵と力を惜しみなく使い集落周辺の地形を整え一面緑と恵みで埋め尽くした。


「クルポックル!ナッツが話してた北の精霊!」
「へぇ、実在してたってわけか。時間と共に神格化する…、よくあることさ」


高貴なる一族、彼らの中でも最も強い力を持ち手腕に長けた中心となる男はその噂を聞きつけクルポックル様と対面を果たした。
彼らはとても意気投合し、瞬く間に強い友情で結ばれることとなる。高貴なる一族の男は彼の為に石の神殿を組み上げ、それを契機にかの人と同じ集落に居た我々は神官となりクルポックル様の教えを人々に広めることこそ使命であると考えた。


「神殿の始祖…、なるほど。その神殿を中心にいくつもの集落がさらに集まりいつしか一つの村となったようだね。だがまだ建国はしていない」

「ふぅん…、この頃からクルポックルは賢者と呼ばれ、一族の男は長と呼ばれるようになったんだね」


賢者クルポックル様は神殿に誰も見た事の無い特別な樹を芽吹かせた。その樹には不思議な実が生りそれは時に人々の苦痛を癒した。
長の末子が持つ妙薬を生成する不思議な力と賢者の木になる癒しの実。それらによって村人の心身は健やかに祝福された。


「ああ、だから救護院は必ず神殿や教会の敷地の中に建造されるようになったのかな?」

「そうじゃないか。そのおかげで彼らは短命な古代にあって随分長寿だったようだね。その村の民を中心にその地ではたくさんの子を持ちその子も育ち、どんどん栄えていったわけだ。そうしてスキル…不思議な力を持つものも一人二人と増えていったんだろう」

「それで土地の拡大を考えたの?」

「進言したのは賢者だ。長は賢者の助言に従い大きな川向こう、広大だが当時まだ今以上に荒れ果てていた北の地に白羽の矢をたてた。当時その地には怪しげな術を操る者達、つまり呪術師だね。彼らの住む小さくも良くまとまった里があり、その堅忍不抜な里人達によって実りの少ない北の地でもなんとか暮らしていたらしい。長はこの地と遊戯を結ぶべく、転移のスキル持ちを使ってその里人に大量の供物と使者を何度も送ったようだ。」

「…そうして交流を積み重ね、ようやく互いの子供を婚姻させ確固たる絆を結ぼうという段になって、その悲劇的な事件は起こったんだね…」

「この辺りから記述がちょっとした物語の様に熱く語られているね。書き手が代わったんだろう。」



年代が進むごとに書記が代わり文体が異なり、文字が進化し羊皮紙の質が上がりインクの原料が変わり…
ああっ、実に面白い!これだから書物への探究はやめられないのだ!





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