チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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142 彼に降りかかる新たな厄

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あれから特に何事もなく日々は過ぎていく…。静かすぎて気味が悪いくらいだ。

アデリーナはここには入れない。関所は厳重に整備したし人も増員した。
公爵領に手は出させない。何が何でも死守しなくっちゃ。ここは僕とユーリとゆかいな仲間の桃源郷なんだから!





春に行われた大公の戴冠式。
当然出席はしたけど…、王城から出ることはせず式典終了を待って2泊3日で早々帰路についた。

それにしても…会うたびごとにケネスはユーリに馴れ馴れしくなっていく。ユーリはケネスにとげとげしくなっていくのに。


「お、ユーリウス来たのか。どうだ、バカップルぶりは相変わらずか?」

「何だそれは。あなたの事だ、碌な意味じゃないんだろう」
「僕が教えたの。熱愛中で周りが見えてない二人の事だよ。ホント余計なことはすぐ覚えるんだから。聖王国法典もこれくらい覚えればいいのに…」

「お前…、王太子である私にもう少し敬意を払ったらどうだ!」

「殿下、今回ノールが居ないと思って随分気が大きいようだ。今すぐ呼んでも構わないが?」


ノールさんの名前聞いて逃げてくなんて…、どういうトラウマなの、それ。
とは言え最近の王子の口癖は「知っているぞ!ノールに聞いたからな」だ。いつか彼に心から感謝する日がやってくる。そう、きっと遠くない未来に…。


「にしても、もう許してあげたら?過去は過去だし水に流してあげてさ…。僕も王様になら今でもわだかまりはあるけど、ケネスと姫はさ、ある意味被害者でもあるよ?」

「だが彼が立派な男だったら女指導者の恨みは買わなかった」
「えっ?」

「長の長子が顔以外とりたててどうと言うことも無い男だったから女指導者は怒った、そうだったろう?」
「…それはケネスじゃないよね…」


すごい言い掛かりだ…。いや、ある意味これこそが全ての発端と言えなくもない…のか?マジか…


「と、とにかく…、大公だって「最近は殿下なりに次代の王となるべく頑張っておる」って。そう言ってたよ?ほらぁ、そんなに眉間に皺寄せて…、イケメンが台無し、…になってないな。何しててもカッコイイ」

「ふふ、そう?君はいつまでも可愛いよ。」
「小さいから?」

「…。」
「いいの。もう悟った。っていうか分かったの。マァの村の賢者は代々小さかった…、つまり…」
「つまり?」

「頭脳に身長は持ってかれるってことだよね。それなら仕方ない」


「…その理論で行くと長身の者がすべて馬鹿者になるな…」
「なんか言った?」

「いいやなにも。さあ、さっさとリッターホルムに帰ろうか」









そんなわけで季節は初夏。僕の一番好きな季節だ。緑は映えも花も咲き乱れ、風は心地よく、辺りには砕石の音やトンカチの音が鳴り響く。

トンカチ…、そう。ここはカレッジの建築場所。パワー系のスキル持ちが集められてどんどん形になっていく。
物を作り上げてくのってスゴイ。僕には出来ないからこそ尊敬する。
物作りを仕事にしていた前世の両親。本人たちに一度も言った事無かったけど…、密かに尊敬してたのは今さらな話だ。


「ノールさん、どう?って、あれ?ロビン?ヘンリックさんも!来てたならお屋敷に寄れば良かったのに。」

「お久しぶりですアッシュさん。今しがた来たばかりなのです。今日はカレッジの進捗を確認にきたのですよ。アンダーバーク教授からの特別なお役目なのです。公爵閣下には兄さんと合流して挨拶に向かうつもりでおりました。」
「僕がそうしろって言ったんだよ。数日しか居られないみたいだし時間を有効に使おうと思って」

「そっか。それにしても特別なお役目ね。庶民用の学校とは言え王家の鳴り物入りだもん、そりゃ学術院の教授たちも気になるよね。それでヘンリックさんは?ま、まさか…」

「違うよ。今回はシグリット姫に頼まれて来たんだ。完成の暁にはぜひ慰問に来たいと仰っていてね。安全の確認とか…まあ色々と。ノールの顔も見たかったし丁度いいと思って引き受けたんだよ。と、ところでユーリウス様は…?」

「屋敷に居るよ。アレクシさんと小切手にサインしてる。だから当分大丈夫。」


ホッとしているヘンリックさんが不憫だ…。けどきっとユーリは僕の目を盗んで呼び出すに違いない。これ以上夫夫の性生活が流出するのは阻止せねば!


「あれ?今日は馬じゃないんだ?」
「ロビンが居るからね。」

「あの…、同乗させていただきまして…。光栄です。」
「ふぅん。じゃぁカレッジの説明してあげる。一緒に行こう」



学舎が完成していない以上校内を案内することは出来ない。なので説明はもっぱら、履修内容やカリキュラムについてとなる。
ここで育成するのは頭脳労働者が中心となる。入学への狭き門その選抜の方法、前世で僕も何度か受けたIQテストとかね、教えてあげたらさすがに唸っていた。


「まあ…優秀な人材が市居にもっと増えて、一部の心無い貴族に搾取されることが減ると良いのだけどね」
「ヘンリック様の言う通りです。貴族としての義務を見失うなど、実に嘆かわしいことです!」

「う~ん、ロビンはヘンリックさんが大好きなんだね。お兄ちゃん妬いちゃうんじゃない?」
「もう諦めたよ。昔からこの子はヘンリックが大好きで…」

「ヘンリック様は私の理想とする貴族のあるべき姿そのものなのです。私もこうなりたいと常に思っております」

「そうまで言われると身が引き締まるね。ふぅ、…これくらいお兄さんにも好かれたいものだよ」

「何か言った?ヘンリック」
「大したことじゃないさ」


難聴気味のノールさんは置いといて、僕は聞き逃したりしなかったよヘンリックさん…。田舎の子の聴力を舐めちゃいけないな。

でもそうか。ヘンリックさんはノールさんを…
でも彼は準王族を除いた貴族の中では最高位、筆頭侯爵家の嫡男で…、そうである以上あまり未来は見込めないな。気の毒だけど時代背景がそれを簡単には許さない。

そう思うと益々ユーリの結婚強行は規格外の暴挙だったんだなぁ…



「アッシュさん、ここは随分山に近いのですね。」
「あっ?あー、うちは未開拓な土地が多いしね。ここなら随時プラグインできると思って。」

「拡張に備えているんだね。もっと大きくなると見込んでいるのか」
「見込みじゃないよ。するんだよ。それに山中でキャンプとか、学生時代の醍醐味じゃん?」


山を指さしながらロビン君相手にソロキャンの心得や遭難時のサバイバル術を片っ端から披露していく。
ノールさんは久々の友人との語らいに楽しそうだし、ヘンリックさんにも青春の甘酸っぱい思い出は必要だろうし、お邪魔虫は遠慮して。
それに何といっても、…一つ一つすごい勢いで食いついて目をキラキラさせながら聞いてくれるロビンが新鮮で…可愛いなぁ。

うちの屋敷にはスレたのしか居ないから…

いや、それ以前に負けず嫌いと言うか何と言うか、ノールさんもエスターも半分くらいは食い気味にかぶせてくるから…頼りにはなっても全然可愛くない!


でもこの時の、場合によってはウザがられる自分の言動を後で神に感謝することになるんだけど…、誰もが浮かれ気分で過ごしていたそんな一日のあと、それは起こったのだ…。







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