チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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173 彼に迫る影

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あの騒動に思うところがあったのかユーリはその後早々の帰宅を決めた。
まぁ警戒はしてし過ぎるってことは無いよね。充分見て回れたし満足だ。

そのうちに王子たちも戻ってきて僕はヘンリックさんから大絶賛を受ける事になった。そしてオトマールさんはカレッジの設備やカリキュラムに大変感銘を受けていた。王子は何考えてるのかよく分かんないけど、ちゃっかり学生たちと交流を楽しんできたらしい。何やってんだか…。


「いいか。妹が視察に来たいと言っておる。それまでに受け入れ態勢をしっかり整えよ。」
「受け入れって…、ここにお姫さまは泊められないよ。どうしようかユーリ?」

「それはご命令ですか、殿下…」


うわ…、ユーリの声がワントーン落ちた…そりゃそうだ。
いくらユーリが変わったと言っても変えられないものもある。それがまさにこの女性への不信感。
根深すぎるトラウマはきっと一生消えることは無い。そしてそれは相手がお姫さまでも同じこと。


「大丈夫だアッシュ君。実はね、以前も泊まった空き屋敷、その一つを母が手に入れたのだよ。別荘にするのだと言ってね。シグリット姫はそこで受け入れよう。どうだろうか?」

「ああ!あの修繕工事中のお屋敷、コーネイン家が買ったんだ?へぇー、アレクシさんは知ってたの?」

「あ、ああもちろん。立ち並んだ屋敷のうち、4邸はカレッジの開校に合わせてコーネイン侯爵、ユングリング侯爵、アルツフェルト侯爵、そしてファークランツ侯爵が別荘としたんだ。ヴェストの采配だよ。放置しておいたところで経費は掛かるのだから、いっそ手放して維持費は各々負担してもらえば良いとそう言ってね」

「へぇ~、やるなぁヴェストさん。まぁあそこら辺一帯は高級リゾート地化しそうだし…セレブの別荘群…それいいかもね。王子も買ったら?まだあるよ?」

「私はここでいい。いやここが良い!ここの食事は最高だからな。せいぜいもてなすがいい。そうだ。後でナッツに露天風呂まで桃のムースを運ばせろ。あれは美味い」

「満喫ですか、そうですか…。ムースは僕が運ぶよ。王子前来た時ナッツをお風呂に誘ったでしょ。サーダさんが警戒してる。やめてよね!」

「他意はないぞ。露天風呂とはそう言うものではないのか?だいたい私の好みは可愛いというより綺麗な方が…」

「ヴェストさんも駄目!どこ見てんの王子!お仕置きされたいの⁉あっ、ならノールさんと入っといでよ。ノールさんもキレイ目だよ?そうしよう」

「私は構いませんよ。お背中流しましょうか?」
「「駄目だ!」」

「…遠慮しておこう」


王子の遠慮はともかくヘンリックさんとアレクシさんの息の合ったハーモニー…。
なる…ほど?











「クレメル夫人、カレッジの開校の宴、言われたように騒ぎを起こしてきましたとも。先日話してた通りにあいつらに嫌がらせをしてやりました。ちょっとした騒ぎになって公爵夫妻は帰って行きましたよ。とにかくこれでペルクリット夫人に口をきいてもらえんですね?本当にこのお屋敷の庭師にしてもらえんでしょうね?…ああ大丈夫です。死人なんかは出しちゃいない。」

「ええもちろんよ。よくやってくれたわね。あの毒公爵、ユーリウスときたらすっかり王家を陥落させて…、どんな手を使った事やら恐ろしい事。とにかく奥様がお可哀そうだわ。あれのせいでうちの旦那様と奥様は王家や元老院が手掛ける新しい事業の数々からもことごとく外され、それにリッターホルムへの出入りも禁止されていらっしゃるのよ。旦那様は父親だと言うのにこんな…、蔑ろにするなんて!少しばかりの手当てで割が合うものですか!」

「そのペルクリット伯爵はどこに?」
「今は領地にいらっしゃるわ。奥様と離れるのを随分嫌がっておいでだったけど、仕方ないわね。ご子息であられるアルパ様の領主教育があるのですもの。その間は健気にもアデリーナ奥様がこの屋敷を采配なさっているわ。あんなお美しい奥様が社交界で冷遇されるなんて…あってはならないことだわ、ねぇそうは思わない?」

「確かに奥様はお美しい…」

「だからあんたに頼んだのよ。いつか奥様がつぶやいていた独り言…。従者が階段から落ちるか物でも倒れてきて怪我の一つもすれば平民はみな騒ぎになってユーリウスの宴に少しの水をさせるのに…ってポツリとね。奥様は誰もいないと思って言ったんでしょうけどわたしは陰から聞いてたの、だから代わりにやってやったのよ。その通りにね。」


ガチャン

「まあ…、クレメル夫人、それは本当なの?なんて言う事を…、なんていう事を。善良な彼にそんなことをさせるなんて…いけないわ」

「お、奥様…、その私は…、いいえ!こ、これくらい当然ですわ!あの毒素を振りまく毒公爵がまるで高貴な者かのように振舞うなんて…奥様も旦那様もこんなに不遇な思いをしていらっしゃるのに、許せませんわ!この程度の当て付け、神様だってお見逃し下さいますわ!」

「そうね、いいのよ。わたくしの為にしてくれたのですものね。分かっていてよ。ありがとうクレメル夫人。でもこんなことをしてはいけないわ。…だけどわたくしとても嬉しくってよ。何も言わずともこうしてわたくしの為に動いてくれる味方が居るなんて心強いわ。そうね…、こんな…、とてもわたくしには出来ない事ですもの…。少しだけれど気が晴れたわ。そこのあなた、当家への出入りを許してあげましょう。でももうこんなことはなさらないでね。それで…怪我人なんかはでていないでしょうね?どんな状態でしたの?」

「ええ大丈夫です。寸でのところで木材がこうピタッと止まりましたんで…」

「ピタッと…?それはどう言う事かしら?」

「わたしは庭師なんで葉音には敏感なんですがね、シュルリと音がしたんでよく見たら木材に蔓が絡んでまして…その蔓に引っ張られて止まったんですよ。実は思いのほか勢いよく何本も材木が倒れて惨事になるかとヒヤッとしたんですがね、胸を撫でおろしたと言うか…」

「まぁ!蔓…、そう、蔓ね…良かったわ、何事もなく…。クレメル夫人、後はよろしく。わたくし気分がすぐれないの。しばらく部屋で休むとするわ…」

「まあ奥様、きっと心を痛めて…。どうぞお休みくださいませ。あとでホットワインをお持ちしましょうね」

「お願いね…考えなければならないことがたくさんあるのよ…」






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