チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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161 彼と彼は夫唱夫随

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「ご来賓の紳士淑女の皆様、本日は記念すべき公爵家主催の茶会にご出席いただき誠にありがとうございます。また、この開催にあたり多大なご尽力を頂きましたコーネイン侯爵夫人には心より感謝申し上げます。」


僕の計画した王都での大切なお仕事。それは公爵家初の社交の会。
新たな公爵王都邸となった元大公邸でナッツには存分に腕を振るってもらった。

そして今日この日の為にコーネイン侯爵夫人ほか6家のご夫人方には誰を呼んで誰を避けるか、その選別に随分協力いただいた。だがその見返りはけっして小さくはない。


「さて、昨年この私アッシュと公爵家当主ユーリウスとの婚儀の際、リッターホルムにご来訪いただいた皆々様は既に承知のことではございますが、我がリッターホルムはいま、前例を見ないほどの急速な発展を遂げている最中でございます。ここでどうか皆さま後ろをご覧ください。」


そう。リッターホルムへの貢献具合によってどれだけの恩恵に預かれるか、それは大きな分かれ道。けど元老院までつとめる6家のご夫人方の目が節穴のはずが無い。
今ここにはそれなりの分別、それなりの社交術に長けた、尚且つ懐具合の暖かい夫人たちが集められている。


「多岐にわたる産業、そしてついに紳士の皆様にご満足いただける新しいお酒、ギンジョウ、ダイギンジョウ、淑女の皆様にお喜びいただける美容と健康のお酒であるアマザケ、それらが大公領の協力によって完成と相成りました。ですが今日紹介したいのはその副産物として誕生した、お集まりの皆様に月のような肌をもたらす米ぬかを使ったスキンオイル、米麹を使ったスキンローションなどの完全無添加、オーガニックスキンケアコスメ〝マーニ”でございます。」


『挨拶の仕方 納会挨拶編』から『コスメマイスターが教える販売のコツ』へのこの自然な流れ。すごくない?


「この聖王国南には夏の暑い日差しや冬の乾燥など、女性の皆様にとって多くの敵が潜んでおります。ですがどんな化粧も輝く素肌には敵わない…、そうお嘆きの方も多いことでしょう。その悩みを魔法のように解消してくれるのがこのオーガニックコスメ〝マーニ”。テスターも各種取り揃えておりますのでどうぞ皆様、歓談中にはぜひお手に取って自由にお試しください。」


一気にガヤガヤし始めるご婦人方。すでに何人かはその手の甲に延ばしている。美への欲求は古今東西変わらない。人間とは業の深い生き物である…


「夫夫共々若輩ではございますが今後も皆様からのご指導をたまわりながらリッターホルムの発展に邁進していく所存です。誠に簡単ではございますが、本日お越しくださった皆様のご健康とご多幸を祈り私からのお礼のご挨拶といたします。本日はありがとうございました。」


なかなかイイ感じのスタートを切れた気がする。公爵夫人としては満点じゃなかろうか…。
おっと、お目当ての人物が現れた。第二幕の始まりだ。


「まぁアッシュ様、お久しぶりでございます。相も変わらずプルプルのお肌…あまり突いてはまた閣下を不快にさせてしまいますわね。自重いたしますわ」
「ベルドナッテ嬢、ようこそお越しくださいました。ごめんね、ユーリってば心が狭くて。送った試作品のローションは試してくれました?」

「もちろんですわ。そう、それをお話したかったのです!あれとても良いですわ、しっとりして、すべすべして、ほんのりいい香りがして…毎日使っていますけどあんな良いお化粧品は初めてですわ!」

「あれ?もしかして肌白くなりました?」

「そうですの!ウェストン伯爵家のヘクトール様にも一層白く艶やかだと仰っていただいて…うふ。あれらはもう商品化されたのかしら」

「ええもちろん。ベルドナッテ嬢にでしたらサービスさせていただきますよ」

「まぁ嬉しい!でも…お高いんでしょう?」

「ところが今でしたら完成記念ということで1セットで3ゴールドのところ2セットで5ゴールド!さーらーにー!お手持ちのお化粧品を下取りに出されればそこから50シルバー引かせていただきます。」

「まぁぁぁ!お安いのね、少し多めにいただきたいわぁ!」

「あの…、ベルドナッテ様?その、そんなに良うございましたの?オーガニックスキンケアライン…」
「それはもう!皆さまもぜひお試しになって!絶対お使いになるべきですわ!」

「本当…すべすべだわ…。わ、わたくしもいただくわ!ここに在るもの全部お願いしていいかしら!そうね…3セットよ!」
「まっ!フレーゲル婦人まで…。わたくしにも寄こしなさい!素敵…吸い付くようだわ…。これは今日持って帰れるのかしら?4セットよ!4セット用意してちょうだい!」


入れ食い状態である。

用意してきた在庫はすべて空っぽ、僕は心の中でガッツポーズだ。


「ユーリ、やったよ!」


ちなみにベルドナッテ嬢はさくらである。仕込みって大切だよね…。








現元老院、その椅子を埋める12名の顔ぶれとは誇り高く老練な古き家門である6家に混じり、前王が指名した金満で老獪な新興貴族の侯爵たち。

彼らは私の議会参加を快く思ってはいない。分かっていたことではあるがここまで剝き出しの敵意を向けるとは…。

だがアッシュは言った。

「前の王さま選んだってことは財があり尚且つ処世術に長けているってことだし、新興でありながら財があるってことは良くも悪くもやり手ってことだよ。油断しないで」

そして続けたのは立ち回りのための助言。アッシュの言うそれは情報と制御だ。

「先に情報を集めることで相手より有利になる。政敵を誘導すことも制止することも、資源だったり人だったり、あらゆる供給を断つことも出来る。王都に入る前に出来る限りの情報を集めて精査して」


アデリーナとの闘いにおいても彼は同様の事を口にしていた記憶がある。

だが彼と殿下の関係を見ていて気が付いたのだ。
己の敵だとて排除するだけが最善ではない。誘導し再生し、使える者あらば使えばいいのだ、と。

財も能力もあるやり手の貴族…。排除するのは得策ではない…。


「既知の6家、そして初顔合わせとなる6家の諸侯、これからともに議会に籍を置く事となったリッターホルム公爵領主、ユーリウスである。良しなに頼む。前王による長きにわたる悪政、そしてその側杖によりこの議会から遠ざけられていた。だが前王の退陣された今、ここに復帰を宣言する。異論は無いな?」

「異論というほどではありませぬが…、公爵閣下は年若く、そのうえ随分と社交界からは遠ざかっておられた。いきなり政の場に出て何をなさるおつもりか」

「そうとも、かき回すしか出来ぬなら、しばらく黙って見ておられるが良かろう」

「コーヒーや綿花など、古き家門の侯爵家は名を連ねる事で懐柔しておられるようだが我らにその手は通用せぬ」


「ほう。メンドーサ侯、貴方は綿花の栽培に随分色気を出しておられたようだが?侯の領地は広大にして温暖、だがあれを栽培するには幾ばくか雨が足りぬ。おや、そういえばメンドーサ領は四方を山岳に囲まれていたな。ならば他に適したものが…いや、私の手など通用しないのであったな。有益な話であったが残念な事だ」

「む…」

「コルトバ侯、私が何をしようとしているか、そう問うのだな?簡単な事だ。私はこの聖王国を一切の邪神が入り込まぬ真の聖国へと導きたい。その為であれば私はあなた方とも手を携えよう。反目し合うなど下らぬ事だ。私の妻はこう言うのだ。物事は双方益になることが大切だと。私は富を一人で得ようとは思わぬ。あなた方の利を奪おうなどとも思わぬよ。威嚇するのはやめてくれぬか」

「真の聖国とな…。ふむ、しばらくは様子を見させていただこう。だがすでに我々が見知っておる閣下では無いようだ。成長されたのだな…」


そうとも、私は成長した。私の愛する守護者アッシュのために…



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