チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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178 彼と深夜の長電話

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予想通り3日たってもアデリーナから音沙汰はなかった。きっと大慌てで南東の端にあるペルクリット伯領へと赴いたんだろう。

あのアデリーナがアルパ君のことを溺愛していたことはユーリから聞いている。
それに貴族学院。ロビンからも教授からも、カレッジにやって来たアルパ君の元同級生からでさえ、良くも悪くもアルパ君の噂は聞いたことが無い。良い評判はともかく悪い評判もだ。どれだけ聞き込みしても出てこなかった。普通悪役の息子は悪役でしょうが!

そうじゃないってことは、アデリーナがアルパ君にはまっとうな愛情をもって接していた証拠でもある。

子供の非行、情緒の乱れは家庭環境に起因する事、特に母子関係に原因があることが多い。それは『非行と親子関係の相対図式』をはじめ様々な本でも論じられていることだ。
そしてそれは必ずしも虐待とは限らず、過干渉など偏った接し方からも起こり得る。

つまり、非行にも走らず情緒も安定しているアルパ君は家庭にも親子関係にも問題を抱えていないってことの証明だ。

アデリーナはこの国の滅亡を望んでいる。ならきっとその前にアルパ君を、もしかしたらマテアスも一緒にどこか他国へ逃がすんだろう。そうとしか考えられない。

でもそのときアデリーナは?




「アッシュ…、少しここで休憩していい?」
「いいよ。どうぞどうぞ」


神妙な顔して入って来たのはナッツだ。

ナッツはあの日あの話を聞いてからも、何もなかったかのようにいつも通り接してくれる。でもあれからずっとこんな感じだ。隙あらば側に居て何をするでもないけど僕を見ている。


「それで…、ユーリウス様にはもう話したの…?」

「3日過ぎたから明日話すよ。どう言おうかな。まだまとまってないけど、…考え中」

「早く考えて」

「ナッツ…、プレッシャーかけないでよ…」
「だってアデリーナは…」

「アデリーナがそのつもりだからって僕には関係ない」
「じゃぁそれも早く考えて」


こんな調子だ。





王子への献上品、ヨルガオのネックレスには〝常に身に着け、深夜、月の位置が最も高い位置に上った頃、誰もいない部屋でこっそり耳を澄ますと運命の相手の声が聞こえます”そうメモ書きを添えておいた。そろそろ受け取っているはずだからきっと今夜あたり実行するだろう。
ケネスが単純で良かった。絶対やるっていう確信がある。

万が一を考えタピオ兄さんにも手紙を一通出しておいた。
やっぱり…、どう考えても一部始終なんて説明できない。だけどでも、何かある時は言えって言ったから。大好きな兄さん…

「僕はしばらく帰れないけど父さん母さんの事お願いします。ユーリの誕生日にはぜひ来てください。そしてその時はユーリをお願いします。ユーリの兄さんとなって力になってあげてください。兄さんのスパルタが懐かしいです。なんだかんだであれらはいつでも僕の役に立ちました。ありがとう」

それだけ書いて送っておいた。これで充分だ。


フォレストは一回更地に還す予定だ。色々バレたらヤバイ植物も多いからね。塩もスパイス類も今ならノールさんが居る。自家消費分くらいなら困りはしないだろう…。無事戻ったら倍にして繁殖させてやる。絶対に!

それからここに居られる間に出来る限りの知識を書き残せるだけ書き残しておこうと思っている。
なんだかんだでやりっ放しにしていた僕のライフワーク。
もちろんエスターの手伝いありきだが、万が一にもこの知識が失われるのは残念過ぎる。

あっ、もちろん原子力とか半導体とか、はたまたレアメタル、とかそう言うのは無しでね。
あくまで領地にとって有用なものだけ。行き過ぎた進化は良くない結果を生むからね。


ヴェストさんやノールさんもなにやらごそごそ動き始めている。その相談に乗っていられるほどの心の余裕が今は無い…。けどあの二人は頭が良い。早まった真似はしないだろう。


そうして迎えた深夜12時。寝静まったユーリを寝室に残しそっと部屋を出る僕。ユーリが深く眠る様、今夜二人で何してたのかは二人きりの秘密だ。あぁもう…やんなっちゃうな。こんなことまで未練になっちゃうなんて。



「ふー、アレクシさんお待たせ。じゃぁ頼むね。」
「ああ」


小さな声で慎重に、それでもアレクシさんのスキルは間違いなくその道を繋いでいる。質量のない声の転移はアレクシさんにはやりやすいようだ。印をつけたヨルガオさえあればどこまででも送れそうな気がするってとても心強い言葉を言ってくれた。頼もしいねぇ。


「王子…、王子…、ケネスってば、聞こえる?」


念のためすごく小さい声で話しかけてるから聞こえてないんだろうか?もう少しだけ大きい声で、そう思った時、アレクシさんのヨルガオから戸惑う王子の声が、それでもはっきりと聞こえてきた。


「…まさか…アッシュか?どういう仕掛けだ…このヨルガオか…!」
「王子!ああ良かった。一応確認するけど今一人だよね?」

「一人で耳を澄ませと書いてあっただろうが…。じゃあ運命の人の声は…、し、信じてなどいなかったがな!で?なんだ。何の用だ」


おお!王子の適応能力が上がっている。そっか…。なんだかんだで長い付き合いになって来たもんな…。


「長話もなんだから単刀直入に言うよ。アデリーナが大公を狙ってる。方法はユーリの毒だ。ちなみにその毒は…聖王から手に入れたってさ」

「なんだと!ヴェッティを狙っているというのか!」
「しー!小さい声で!壁に耳あり障子に目ありだよ!」

「ショウジ?まぁいい。父王が毒を…?毒は全て聖神殿からリッターホルムへ戻したはずだが?」

「隠し持ってたみたい…。けどそれはいいんだ。もう今さらだから。それより辺境の神殿に居る全ての使用人を、ペルクリット家と関りが無いか調べてもらって、それから王宮にも何かの手が伸びてるはずだから王宮に居る人も調べて、あ、ううん、調べてることに気付かれないようこっそり調べてもらって。絶対に気付かれないで!警戒されたら厄介だ。…そのうえでケネス、大公から離れないで。事が片付くまで。」

「私がか?…私でいいのか?もっと腕のたつ屈強な騎士がいいのではないか?」

「誰を信用していいのか分からない。ねぇケネス。僕たちはいろいろあったけど…、僕が今王宮で一番信用出来るのはケネスだよ。僕はケネスを信じる!大公を守って!」

「お前……分かった。私に任せておけ。心配するな。もう日寄らない。私には自己制約がある!」

「はは…、頼もしいよ。…頼んだよケネス。大公は…、大公は…、僕の親友なんだ。」


うっかり眼の端が濡れたのはきっと疲れ目のせいに違いない…




そうして電話を終え部屋に戻ろうと振り返った時、僕達はそこにユーリが居る事に気がついたんだ…







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