チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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188 不本意な滞在 ④

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毒の捜索…。しかしこれまた一体どこから手を付ければ良いのか…、かといって無作為では時間も手間もかかりすぎる。使用人達の目を盗むのも簡単じゃない…

そう考えた僕はある程度まで絞り込んで捜索することにした。
当面探すのはよくある定番の隠し場所。そんなとこなんかに隠すとは思えないけど、万が一って事も考えられるからね。


実は僕が本命だと思ってるのは書棚の本の中か仏壇の中だ。
だけど本の中身をくりぬいて隠す…、なかなかの隠し場所だとは思うが文化背景的にどうだろうか。

この世界では紙、そして書物は超貴重品。骨董などの美術品と扱いはほぼ変わらない。

気軽に本を手に取れる書店なんてものがまず無いし、大抵は王家か裕福な領主の持つ図書館、そして神殿や教会などの場所でしか本に触れ合う事は出来ない。
すなわち屋敷内に大きな書庫を持ち、尚且つカレッジに図書館を建造したリッターホルムがいかに裕福かを物語っているわけだがそれはひとまず置いといて、…そんな世界で本をくり抜くなどという蛮行、お天道様が許しても僕は許さない。

それにアデリーナが本をくりぬいている姿がどうしても想像できない…
ではもう一つの本命、仏壇の中はどうだろうか。

仏壇…、つまりここで言ったら祭壇だ。
『元窃盗犯が教える隠して良い場所、悪い場所』、あの中にはこんな一文があった。

年寄りが金を隠す場合は仏壇の引き出しの奥とかが非常に多い。
へそくりや大事なものだからこそ、先祖に守ってもらおうと思うのか。
仏壇にセキュリティ効果があるなら田舎で泥棒など起きないだろうに。へそが茶をわかすとはこの事だ。

年寄り…

いくら若く見えた所でアデリーナは2000歳だ。これは間違いなく年寄りと言ってもいいだろう。少なくとも前世と合わせてもアラフォーの僕から見れば十分すぎるほど年寄りだ。
なるほど。隠し場所は祭壇だな。それが僕の結論だった。

だからといって祭壇狙い撃ちなんて真似はしない。油断はしない。それはいつでも変わらない僕のポリシー。






さぁ今日も朝の見回り点検が始まる。

日一日と見張りの増えた僕には今や5人のメイドが後ろから付いてくる。だが部下を引き連れているみたいでこれはこれで悪くない気分だ。
これが嫌がらせのつもりなら、むしろ本物の嫌がらせを見せてやらねばなるまい。

『嫁と姑100日戦争』あの嫁が泣いて嫌がっていた姑を、今僕は逆見本にしているわけだ。我ながらどうかと思うが…ごめんねメイドさんたち。でもアデリーナに心酔して僕を敵視してくる以上あなたたちにも容赦はできないよ。



「一昨日は地下のランドリーで作業効率、物置で道具類の手入れ状況、昨日は一階サロン、リビングやダイニングの清掃状態を全部チェックしたから…、今日はパントリーと厨房の確認に行こうか。整然としているか、無駄はないか、衛生状態はどうか、全部確認させてもらう」

「も、もうおよし下さい公爵夫人…。あなた様に洗濯指導をされた若いランドリーメイドはあれからずっと気が滅入っております…」

「どうして?洗濯は色柄で細かく分けろ、生地が傷むから赤ちゃんの肌を洗うように優しくかつ丁寧に洗え、もっとパンパンしわを伸ばして干さないとアイロンの手間が増える、当たり前の事しか言ってないけど?そもそも仕事が雑なんだよ。よくあれで奥様は何も言わないよね」

「お、奥様はあなた様と違って鷹揚なのです!」

「ひどい言われようだなぁ。僕はこの伯爵邸をより良くするための善意の助言しかしてないのに。一応ここは元公爵邸、言ってみれば元僕の屋敷とも言えるわけだ。元公爵邸として相応しいお屋敷の品位と状態を保ちたいと思うのはおかしいかな?」

「そう言う訳では…」

「あっ!ほらほらここ、」ツツー「埃が残っていてよセルマさん。掃除ひとつ満足にできないの?本当に最近の嫁は口ばっか達者で…」

「よ、よめ?いえ、すぐに掃除します…」

「そうしてちょうだいね。昨日のリビング窓が曇ってたわよ。顔が映るくらい磨き上げて!鷹揚な旦那様に甘えて手抜きしないのよ!」
「か、畏まりました…」


今僕は全力で小姑を楽しんでいる。


「あらあら、こんないい加減に収納して…、ちょっと!ここもっと食材ごとに分類なさい!こういう一つ一つで作業効率が変わって…って、うわっ!カビ!カビが生えてる!誰!これを管理してるのは!さっさと捨てて!」

「も、申し訳ございません…ですが皆カビを落として食しておりますので…」
「不衛生でしょうが!!」


誤解のないよう言っておこう。何も僕は嫌がらせの仕返しや暇つぶしでこんな嫌な奴に成り下がっている訳ではないのだ。
これも一つの策略。
小姑チェックに見せかけて僕は本邸の要所要所をユーリの毒が隠されてないか探索しているのだ。

皆はこれが僕の意趣返しだと思っている。ノリノリ過ぎてそれこそアデリーナまで…。
僕の嫌味に乗せられたら負けだと思っているのか、こうして見張りを増やしながらも口をはさむことは無い。が、4日目、書庫の雑多な整理、あまりの保管状態に散々ダメ出しをして3人ほどの使用人を涙目にしたあと、

5日目、ついにアデリーナが直接僕に物申してきた。


「あなた…、これ以上わたくしの使用人たちをいじめるのは止めて頂戴。みな夜な夜な泣いてわたくしに陳情に来ているのよ。あなたに泣かされていない使用人を数える方が早くてよ。ご存じだったかしら」

「へぇー、じゃぁこの屋敷が鷹揚な奥様のおかげで掃除も行き届かずに薄暗て埃っぽく、なんなら修繕の要らない個所を数える方が早い事はご存じだったかしら」

「その話し方も止めて頂戴!イライラするわ!」

「そうなの?イライラは美容と健康に良くないよ。僕の開発した米ぬか化粧品プレゼントしようか?あれ?そう言えば少しクマっぽい…?よく眠れてないのかな?あっ!髪にも艶が無い!ご、ごめんね!お年寄りには親切になさいって言われてたのに、ああ…僕としたことが…」

「誰か!誰かこの憎、…いえ、公爵夫人を自室に連れて行って頂戴。顔を見るのも不快だわ…。いいことあなた、もうこれ以上の暴挙許しがたい。3階のあの部屋から出てこないで!」

「連れてきておいて顔も見たくないとは勝手だなぁ…。僕は何なら伯爵夫人と夜を徹して語り合いたいと思ってたのに。主に2000年の歴史とか歴史とか歴史とか…」


バンッッッ‼


貴族の奥様があんな感情的にドア閉めちゃだめでしょうが…。
しかし、あれくらいで怒るとは、アデリーナもまだまだだね。

僕はこの世界に来てから、特にユーリの前ではかなりネコを被っているが、前世ではわりと口が悪かった。それはもう祖母にうるさく叱られるほどに…。
とはいえ、そもそも人に嫌われるほどの人づきあいが無かったわけだが…、物心ついた時から天才と呼ばれた僕は少し斜に構えていて…、とにかく人を煽るのは得意なのだ。


さてこれでおおよそ本邸階下のチェックはアデリーナの私室以外済んだわけだが、残りの探索、私室を先にするか離れを先にするか…。

でも早くしないと…。

兄さんのいう王都の泉、ホントにあそこに飛び込むのなら冬の寒さが本格的になる前じゃ無いと…


溺死の前に凍死が待っている…








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