チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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217 彼の辿り着いた結末

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「い、生命の樹…!いやぁ!!止めて頂戴!まだ駄目!まだ終われないのよ!」

「なんで?不死を捨て終わりにしたい…、これはお前の望みじゃないか!」
「ひ、独りで逝くのは嫌よ!嫌!どうして?どうしてわたくしばかりが!ユ、ユーリウスはどうして…、どうして絶望しない⁉ 忌み嫌われるこの世の異物…、あれとわたくしは同じだったではないの!」

「私にはアッシュが居る!」
「ユーリには僕が居る!」

「わたくしにだってあの人が居たわ!でも奪われた…。だからこんな世界消してしまおうと思ったのよ!わたくしから何もかも奪っていくこんな世界なんて…!それの何が悪いの?ユーリウス!お前になら分かるはずよ!独りきり暗闇に取り残されるのがどんな気持ちか…」


悲し気に歪むユーリの顔…。だけどゆっくり首を横に振ると静かに言った…。

「理解は出来ても共感は出来ない。私はこの世界を嫌いにはなれなかった。だからこそ私は自分自身に絶望したのだ。この世界にとって私は障りでしかないと。あなたとは違う…」


泣き叫ぶアデリーナにそっと近づく一つの影、アレクシさんだ…。


「アレクシよせ!」
「いいやユーリ君。彼は自分で決められるはずだ、今度こそ自分自身で」


それじゃぁまるで、アレクシさんがさっきまでは誰かの意思に従ってたみたいじゃないか?
あ、ああ…そうか…

〝あの人”


「アデリーナ…」
「あなた!あなた!止めさせて頂戴!早く行きましょう!わたくしをここから連れ出して!嫌っ!こんなのは嫌!一人ぼっちで逝くのは嫌なのよ!ずっと独りだったわ!もう長い長い時をずっと独りで生きてきたの!最期まで独り?そんなのは嫌!嫌よっ!!!」

「私はあの人じゃない。私はアレクシという別の生を生きる違う人間だ。例え生まれ変わりだったとしても同じ選択、同じ人生を歩むことは…できない。出来ないんだ…、どれほどこの胸の奥が痛もうと…。すまない…。」

「あなたっ!そんなことを仰らないで…、うぅ…お願いあなた…、わたくしを愛しているとそう言って…」

「愛している…、分かるだろうか?これは私の奥底に隠れた彼の言葉だ。だからこそ、今の私に出来る唯一のことを、彼の最期の心残りを私が代わろう…。アデリーナ、君の最期は私が看取る。ここでこうして、ずっと手を握っている。その瞬間まで独りにしない。だからもうやめるんだ。」
「あなた…」

「誰かを苦しめた先に幸せはない…。その一言をもっと昔、ずっと昔、2000年前に言えれば良かった…。愚かな優しさが君を苦しめた…すまない、すまなかった。彼に代わって私が詫びよう…。だからもう眠るといい…」

「あなた…あなた…ルパート、ああ…。ずっと手を…、手を握っていて下さるのね?…何処にも行かないで…もう、もう二度と…」


ルパート…、そうか、アルパ君の名前は…
そしてアレクシさん…、彼は本当に、どこまでも善性の人だ。そしてそれはきっと、アデリーナのあの人も…。
ここまで人は人を愛せるのか…。だけどアデリーナは愛し方を間違えた…。



「アデリーナ、お前は自分の人生がままならないと自分で自分を憐れんで…、それで人を犠牲にしてまで思い通りにしようとした。それだけじゃない。そもそも全てを忘れて大好きな彼とどこかでやり直す道だってお前にはあったんだ。それをせず復讐に執着したのは自分自身で、結局それが全てを失わせた。誰も奪ってなんかない!これは自分自身の選択で、これがお前の選んだ道だ。物語にはいつだって分岐があって…どの分岐を選んだとしてもその結果は自分に返ってくる…。与えられただけの運命なんか一つも無い!」


可哀そうな自分…、追いかけられて押しかけられて。だけどいつだって僕には選択肢があったはず。
号泣した母さんが僕の部屋から本を押収した時も、心配のあまり父さんがパソコンのパスワードを勝手に書き換えたときも、僕には一歩を踏み出すという選択肢がいつでもあった。それをしなかったのは自分自身で…

陽の光も無しにとじこもって人は生きられない。大好きな祖母は、いつでもそう教えてくれていたのに。


「……やりたいことをやれなかったのも、生きたいように生きられなかったことも、全部全部、自分が選んだ結果じゃないか!お前は何度も間違えた!僕は二度と間違えない!『生命の樹よ種となれ!』エスター!!」

「言ったろうアッシュ、僕は書物に関する事なら色々出来るんだ。『寄稿!』アデリーナの理に種子いのちを書き足せ!」


「あ、あなた!あなた!強く抱きしめて!放さないで!ルパート!」


驚きだ。エスターのスキル、これはまるで稿と同じじゃないか…。
エスターのスキルで種は生活環の文字列となってアデリーナの体内に書き込まれていく…。そしてそのアデリーナは…







アレクシさんの腕の中でシワシワの老人になっていくアデリーナ。止まってた時計の針は急激に回り出し…2000年分の時は涙さえサラサラと風化させ…そうか…髪の毛の一本すら残さないんだな…。


「優しい貴方…アルパを…おねが…」
「アデリーナ…」




「…消えた……」
「終わった…のか?」


そこに居るのは静かに涙を流すアレクシさんが一人…。


「アレクシさん…」
「いや、これは私の涙じゃない。彼の涙だ…」


事の決着を見届けてやってきたノールさんは複雑そうな顔で…でもなんだか怒ってるみたいだ。
毒を呷ったアレクシさんの気持ちを聞き出した僕にもノールさんの怒りの理由は理解できた。


「ば、ばっかじゃないの!仮にアレクシさんが事実生まれ変わりだとしてもだよ?その人が末子を裏切ったからって、どうしてアレクシさんがユーリを裏切ることになるのさ!ここにいない誰かの感情に引きづられるなんてどうかしてる!」
「アッシュ、従者であった彼には自分を殺す教育がなされてるんだ。怒らないでやってくれ」

「いーや!過去の感情に飲み込まれるなんて!アレクシさんの意思はどこ!」

「それが最後のあの選択なのだろう…。アレクシ、彼はとても優しい男だ。私を何とか救おうと彼はいつも心を悩ませ…、そうしてあの日君の元へと連れ出してくれた。アレクシが居なければ私と君の時はすれ違ったまま私はマテアスによって闇に堕とされていた。違うだろうか」


うぐぐ…、それを言われると…。しかし予想外だ。ユーリは一緒になって怒るかと思ったのに…
仕方ない。ユーリがそう言うなら。でもこれだけは。


「じゃぁもう言わない!でもノールさんとのことは…、応援しようかと思ったけど止めた。アレクシさんに恋愛は10年早い!って言うか、どうせノールさんを好きなのも優しくされたから、とか、自分の話を聞いてくれるから、とかそんな理由でしょ? あーもう!少女マンガじゃないんだから!今のアレクシさんじゃちょっと衝突するたびに逃げ出しておしまいだよ。言っとくけどノールさんはアレクシさんより漢らしいから今のままじゃ太刀打ちできないね!それでもお互いにちゃんと言いたいことは言ってぶつかり合わなきゃ真の関係は築けない!だよねユーリ!ユーリ…?」


そこには眉間を抑えるユーリと驚きに目を見開き呆然となったノールさんが…。あ、しまった…


「ご、ごめ…」
「いやいいんだ。アッシュく君の言う通り、私に恋愛はまだ早い。今は自分を、心を鍛える事に専念するよ。」


そしてそれを少し離れた場所で聞いてた兄さんは満面の笑みで…、僕に向かって親指を立てていた…





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