コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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二人は仲良く初デート

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「えーとどれどれ…?」

昨日張り出した募集の紙はリコによりすでに剥がされている。なのに何しに来たかと言うと…

「イヴァーノ、その紙は?」
「あれ?来ちゃったの?えっとこれは求人票です」

僕のコス喫茶軍資金は追加二人分の人件費へと名前を変えた。
とりあえずしばらくの生活費は死守しているが…何かで増やさない事にはいずれ無くなる。

ということは、何をするにしても、先ずはお金を貯めなきゃ話にならないってことだ。

「あ、これとか良さそう。一応キープっと」ペリ
「もしかして君は市井で働くつもりかい?」
「そうですよ。とりあえずバイトしないと。うーん、これもキープしとこう」ペリ

目的に向かって必要経費を計算しそれに合わせてお金を稼ぐ。これは慣れ親しんだ僕のルーティーン。好きなことを好きなだけ楽しむためなら働くのに僕は何の抵抗もない。無いのだが…

「だが私が伯爵なら君は伯爵夫人だ。市井へ働きに出るなど社交界から笑われよう。コレッティ侯も許さぬと思うが…」

「わかってますよ。もしかして…嫌なの?」
「いいや。だが君の外聞が悪くなっては…」

「大丈夫です。心配いりません」

そう。伯爵夫人の僕が汗水流して働く…なんて、万が一あのお父さんにバレたら多分特大の雷が落ちる事請け合いだ。勘当どころじゃすまないかもしれない。
それに、それにだよ?
万が一にもあのパンクラツィオや他の攻略者たちにバレたりしたら…そしてあろうことか馬鹿にされでもしたら…

ちょっとそればかりは想像するだけでも…ムカつく。真面目に働いて馬鹿にされるって意味わかんないけど、それが貴族なら従うしかない。

そこであれだよ。ふっふっふっ、僕には奥の手がある。

「イヴァーノ、君にばかり苦労を掛けるのは忍びない。であればやはり私も何か…」
「ちょ!絶対止めて下さいね!面倒が舞い込む予感しかしない!それにこれは苦労とかじゃないですから。むしろ趣味と実益…とでも言うか…」

「イヴァーノ…」

まあ見てろって!


所変わってここは園芸の店。菜園に必要な種や苗、道具などは全部ここで揃うらしい。

「フラヴィオ、プラムとオレンジ、どっちがいい?」
「オレンジだろうか…。国に居る時から絞りたての果汁を楽しんでいたのでね」
「じゃあオレンジをシンボルツリーにしましょうね。後で植えるの手伝ってくださいよ?」
「もちろんだ」

実がなるまでは数年かかるが、フラヴィオはルイージ君が成人まではこの国に居ると言っていた。なら一緒に収穫できるだろう。できたらいいな。

さて、一番簡単なサツマイモとジャガイモは鉄板として…

「へー、庭に生えていたカブみたいなハーブ、フェンネルっていうんだ」
「またあのスープ作ってもらえるかい。茎が蕩けそうで美味しかった」
「じゃあ少し苗買い足しましょうか。フラヴィオは食いしん坊ですね」

あの夜フラヴィオは、あの野菜が庭に自生していた雑草ハーブだと知っても怒るでなくドン引きするでもなく、一言「雑草とは強いものだね…」としみじみ言った。
ああいうところがただの箱入りお坊ちゃんとは違うところで、僕がフラヴィオを「ポンコツだけど憎めないな」と思う部分だ。

さて、あとは茎の赤いチコリと、やたらカラフルなチャード、小松菜みたいなレタ…ス?の種を手に取るが、…うーん、紫色のキャベツや玉ねぎといい、野菜までやたらカラフルなのもキラキラゲーム仕様だろうか?
あとはズッキーニやトマト、パプリカといった実のなる野菜の苗を買い入れて、買い物終了っと!


----------------


「ゲッ!フラヴィオ隠れて!」
「な、何をイヴァーノ!」

園芸店を出た私たちは金物を扱う店を目指していた。イヴァーノが「鉄板が欲しい」と言ったからだ。
そんな最中、いきなり腕を掴んだイヴァーノは私を狭い路地に押し込めようとした。
だが彼は忘れている。私たちには荷車を引く馬が居るということを。

「あっ!イヴァーノ様!イヴァーノ様じゃないですかぁ?」

「ニコラ…」

「わぁ会いたかったぁ!パンクラツィオ様から婚約を解消され名もなき男爵子息に嫁いだとお聞きしましたが…お元気でしたぁ?」
「うるさい二コラ!僕が誰と結婚しようがお前に関係ないでしょーが。そもそも元凶がそれを言うな!」

馬と共に立ちすくむ私をよそに、イヴァーノはピンクブラウンの髪を肩まで伸ばした、まるで少女の様な青年と話し始めた。

元凶…ということは、この目の前に居る彼がコレッティ家の執事がお話しになられていた、学院内の男たちを、それも王子殿下や名門家のご子息たちを次々に陥落させていると言う…教会に住む魔性の青年、その名も二コラか。

「ひどぉい!そんなこと言わないでください。誤解があるみたいですけどぉ、僕は何もしていませんし言ってもいないですぅ。あれはパンクラツィオ様が勝手になさったことでぇ…僕はイヴァーノ様とも仲良くしたかったのにぃ!」
「はいはい。あーそうですか。てかその語尾ヤメロ。イライラする」

「えー、ひどぉい!でもぉ、僕イヴァーノ様に謝りたいって思っててぇ…」
「はぁ?」

「パンクラツィオ様が僕を好きになっちゃってぇ…ゴメンナサイ?」

「その語尾ヤメロっつっただろーが!!!」
ビクッ!「ヒッ!」
「熨斗つけてくれてやるわあんなもん!」
「…な、なんかイヴァーノ様…口調変わりました…?」

「いーや!とにかく僕はあんなモラ男予備軍少しも好きじゃないから。どうぞご自由に」

「イヴァーノ様?そんな風に強がりばかり言うから捨てられちゃったんですよ。もっと可愛く泣いてすがりつけば良かったのに。言ってくだされば教えて差し上げますよ?」

目の前の小柄な青年はイヴァーノと違い、どこか万人に親しみを感じさせる可憐さを漂わせている。
常に少し上目使いの目は己の魅力を十分に熟知したうえでそうしているのだろう。それはあの少しとがらせた唇にも言えることだ。
彼は全身から可愛らしさを振り撒いているが、その甘えた物言いに何か含みを感じるのは気のせいだろうか。

「出たよ本性、あざとっ!あの場に居ながら何が見えてたの。あれは捨てられたんじゃなくて僕が捨てたんだけど…その眼は飾り物かっ!!!」
ビクビクッ!「じ、次期公爵夫人の座にあれだけご執心だったのに誰が信じると思ってるんですか?」

「僕は態度のデカい浮気者は昔っから大っ嫌いだ!あんな奴一度だって好きだったことはない!」

イヴァーノは一貫してそう主張を続けている。そして私はその言葉を固く信じている。





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