コスプレ令息 王子を養う

kozzy

文字の大きさ
27 / 225

驚きの出会い

しおりを挟む
ガヤガヤガヤ…

「見ろよアレ…」
「可愛い子だな…」
「俺声かけてこようかな…」

ガチャ

「面接にお越しのエヴァさん。中にお入りください」
「ハーイ」

「新しいナースか!これはいい!」
「あ、アイタタタ。急に腹具合が…」
「俺も。頭痛が痛い…」

などという周囲の喧騒に気を良くしながら、ここは貴族街の中にある王立病院、その院長室である。目の前に居るのは男の院長、そして目の奥が笑っていない女性、多分…看護師長だ。

「あなたが看護助手に応募してきたエヴァさんね。ずいぶん可憐だこと。…言っておくけどこの仕事は楽でないわよ」

「はい!僕は今までも多くの式典祭典に参加し多くの緊急事態を目の当たりにしてきました。急病人の手当てにも携わった事があります。そこで培った経験をここで生かせれば、そう考えています。もちろん体力にも自信があります」

「その白い服は何なのかしら」
「僕の熱意を知ってもらおうと思って…どうでしょうか?」ニッコリ!

「ふむふむ。なかなか可愛い子じゃないか。なあ看護師t」
ギロリ「院長。仕事は顔でするのではありませんわ。血を見て倒れるような子では使い物になりませんの」

「あっ!僕血とか全然平気です!流血メイクで慣れてるんで」
「ほら看護師長、こう言っていることだし」
「院長!御覧なさいましこの細い腕を。これで暴れる大の男を抑え込めるとお思いですの?」

どうもこの看護師長は可愛い子を見ると目の敵にするタイプのようだ。厄介だな…

「こう見えて意外と腕力あるんですよ?見て下さいこのスプーンを。いいですか…ふん!」クニャリ

「おお!」
「まあ!」

こんなところで宴会芸が役立つとは…だがこのポイントはテコの原理である。

「看護師ty」
「いずれにしても昨日の面接で定員オーバーですわ。残念ですが次の機会にまたどうぞ」

ぐ…ここほど条件の良い職場は無いってのに…

場所は貴族街、患者は平民から貴族まで多岐にわたるが(病棟は分かれている)、少なくとも怪我した酔っぱらいとかケンカして運ばれる暴れん坊とか野蛮なのは居ないだろうし、何より時給がいい!その時給ときたら…庶民街で募集のかかるトラットリアとかの軽く倍だ!何より何より…堂々とナース服が着れる!こんな良い仕事があるだろうか?いや無い!

何とかならないか…


バターン!!!」

「馬鹿者‼面接中だぞ何事だ!」
「殿下が!通りがかりの王太子殿下が緊急で運ばれてございます!」
「なんだと⁉ 」

〝殿下”
その言葉に漏れなく廊下へ走り出る僕を含めた全員。と、そこには両脇を護衛騎士に支えられたプラチナブロンドが光り輝く王子殿下、アマーディオが居た!

こ、これは…!

そのとき僕の脳裏に浮かんだもの、それは二コラとアマーディオの仲をより深めるエピソード。

アマーディオは何かの後遺症に悩んでいた。そこで向かったのが二コラの居る教会だ。彼は教会で二コラの特別な治療を受ける。それにより体調が劇的に好転したことで運命的な何かを感じ(これはあれだ!逆ナイチンゲール症候群だ!)…それがきっかけとなって、それまであまり良い顔をしていなかった王妃や王の説得に成功するという…ラスト付近のエピ!

もしかしてあの後遺症が残った原因って…これか⁉

「ドクター!殿下が喉にマシュマロを詰まらせている!一刻も早く取り除くのだ!」

「な、何と言うことだ!誰か!長い鉗子を持て!早くしろ!」
「殿下!殿下しっかりなさって!」ドン!ドン!

えー!マジで緊急事態じゃん!これってマジでヤバい!もがいてるうちに何とかしないと!

「ちょっとどいて!」

背中を叩いたぐらいで取れるものならもう取れてるって!

「部外者は引っ込んでなさい!」
「一分一秒を争うんだってば!」ズイッ!
「きゃっ!」

ええいこうなったら腕づくだ!
僕はこの状況を見たことがある。お父さんが正月餅をのどに詰まらせた事があるからだ。そのときお母さんがやったのを僕は覚えてる!

「女!殿下に何をする!」
「いいから!」

お腹に腕を回して抑えながら…引き上げる!

グッ!グッ!グッ!

「不敬であるぞ!退かぬか!」
「黙ってて!」

グッ!グッ!

「ゲホッ!」ポロッ

「おおー!!!」

あ、息吐いた。ギリセーフ…

「なんという不敬者!殿下に対してなんという真似を…!誰かこの女を連れて行け!」

ゲッ!不敬罪アゲイン…、これがいくら人助けとは言えここは階級社会。王族を締め上げたら不敬罪は免れない。けど今度こそ情状酌量はききそうに…ない…万事休す…

「ま、待て!」

僕の腕を掴もうとした護衛を制止したのは未だ俯いて咳き込むアマーディオだ。

「これは必要な措置だ!不敬などと…お前たちは何を言っているんだ、下がれ!」

ホッ…、アマーディオが横柄なキャラじゃなくて良かった…
彼はしぶしぶ後ろに下がった護衛を確認すると、お付きの従者から飲み物を受け取り一息ついている。

「これは失礼したね。恩人になんと言うことを…、彼らは私から言い聞かせておこう。それより助かったよ君…、き…み…、き…」

すっかり落ち着きを取り戻したアマーディオは服を整えると僕の方に向き直った。そしてこの反応…。彼は何故かフリーズしている。もしかして…バレた…?

「あ、あの…」オロオロ…
「すまない、つい見惚れてしまった。その…君は随分可憐だ」ギュ

…セーフ…

って、なに!? 
セーフで良かったんだけど、何なの?この握りしめた手。死にかけたばっかりだって言うのに惚れっぽいなアマーディオ…

「殿下、特別室をご用意してございます。万全を期すため診察をどうか…」
「院長か。いいだろう、では君付き添ってくれないか」
「え…?」

困惑…
ゲーム内でも僕とアマーディオは大した接点をもたなかった。だってイヴァーノの婚約者はパンクラツィオだし、王子殿下のアマーディオには表向きだけでも一応敬意は払ってたし。なのに何この展開?

けどこれは千載一遇のチャ…ンス…?

「殿下!彼女は当院の看護士ではございまs」
「どきなさい師長!君!エヴァくんだったね。殿下がこう言っておられるのだ。失礼のないよう当院の看護士として相応しい振る舞いをするように。いいね」

あ、あれ?もしかしてこれ…

「はーい!院長」

無事お仕事ゲットだぜ!








しおりを挟む
感想 609

あなたにおすすめの小説

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日投稿だけど時間は不定期   【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸にクリスがひたすら愛され、大好きな兄と暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスは冤罪によって処刑されてしまう。  次に目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。    巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過保護な兄たちに可愛がられ、溺愛されていく。  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで新たな人生を謳歌する、コミカル&シリアスなハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々

月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。 俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

処理中です...