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新たな野望
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仕事が終わりフランコのシェアハウスに寄ってイヴへと戻り、ドン突きにある最近ちょっと拡張されたビアジョッティ家へ戻ってきたのは夕方四時。秋といってもこの時間はまだまだ明るい。
玄関の前には馬車に乗ったジュゼッペじいさん。彼はロデじいからもらった嗅ぎタバコを嬉しそうに嗜んでいる。
「お帰りなさいまし坊ちゃま」
「ただいま。ところで何してんの?」
「へぇ。旦那様がここで待つようにと」
「ふーん…」
ジュゼッペにエヴァの事はもちろん極秘だ。彼は僕のお出かけをイヴァーノのサロンだと思っている。
扉を開ければそこには話込むフラヴィオとロデじいの姿。
「ロデじい、その荷物なに?」
「フラヴィオ様が王城にしばらく泊まり込むと言われるのでその支度にございます」
「王城に?」
「君のおかげだ。そうだね?エヴァ」
「んー?ナンノことかな?わっ!」
ギュゥゥゥゥ…「君の口添えで議会への同席が認められた」
サバ折りのような熱い抱擁。フラヴィオがそれほど議会に興味があったとは…
どうやらアマーディオはエヴァのちょっとした何の下心もない思い付きを、ちゃーんと実行に移してくれたようだ。ニヤリ、けど…く、苦しい…
「は、放して…ふー…、ヤキモチは妬かなくていいんですか?」
「意地悪を言わないでくれ…」
「ウソです。後で何話してたか教えてくださいね」
経過報告、それこそが僕の目的…
「ああ。だがしばらくは城より戻れないだろう。イヴ、ルイージたちをよろしく頼んだよ」
「留守を守るんですね?ふっ、お安い御用です。お任せを!あ、待ってフラヴィオ」ンチュー!
「ふふ、これはこれは。元気が出たよ」チュッ
今日ばかりはお出かけのキッスが必需品。
だってフラヴィオが居ないのここに来て初めてのことだから…実はちょっぴり寂しい。言わないけどね。
「イヴ、その手に持ったものは何なのだい?」
「あ、これ」
馬車まで見送る僕の手荷物に気が付くフラヴィオ。これは今日の帰りにマルティノから渡されたコンタクト開発の副産物、試作品のオペラグラスだ。
この世界にも望遠鏡はある。けどコンパクトな双眼鏡はまだなかったらしい。
僕は本日これを使ってバードウォッチングをしながら帰宅したのだ。残念ながら名前が分かったのはムクドリとカラスくらいだけど。
「これはいい!内ポケットに入るのだね」
「良かったら持ってきます?」
「良いのかい?」
「どーぞどーそ」
マルティノのカラコン開発は一進一退を繰り返している。まあ物が物だけにこんなもんだろう。焦っちゃいない。科学とは日進月歩だ。
けどこのオペラグラスはマッティオ氏にプレゼンしようと思っている。
オペラに演劇…舞台観劇にオペラグラスは付き物。いずれコスプレカーニヴァルを開催するつもりでいる僕にしたら、ある意味…必須アイテム?
そしてもしこれが製品化されれば…マルティノ…彼の将来はわりと安泰である。
ガラガラガラ…
「あーあ、行っちゃった…」
「お淋しいですかイヴ様」
「まあね。けど…フラヴィオが居ないなら夜通し縫物しちゃおうかな?」
「ほどほどでお願いしますぞ」
「じゃ、今日は手抜きでカレーね」
「おお!カリですな!私は好きですぞ!」
みんな大好きカレー!は、スパイスカレーにナン、という本格仕様である。僕はパンと麺があればわりと平気な現代っ子だが、こんな時はさすがに…
「ああ…お米が食べたい」
「ライスでしたら私の国にありますな」
「ロデオ」
食事中ポロっとこぼした僕にロデじいが爆弾発言!
そしてそれを表情は変えず、それでも静かに諫めるルイージ君。なんで?
すっかり忘れていたが、この三人は外国からきた遠縁だったはず。けどブルボン王国の話をしていた時もブンデス皇国の話をしていた時もフラヴィオは反応していない。
このサルディーニャはたしか四か国と隣接していたはずだ。ブンデス…ブルボン…、あと二つはブンデスの姉妹国アンシュルス公国ととても小さなシュヴィーツ国。
ブンデスとサルディーニャは非常に良好な関係を築いている。そしてアンシュルスは音楽の都でシュヴィーツ国は絶対中立を掲げた国。
ブルボンも市民運動はともかく基本は享楽的な国だ。比較的沸点の低い国々に囲まれ、それはBL大国サルディーニャの平和主義に大きく貢献している。
詳しいでしょ?ゲーム内情報じゃないよ?
カタリーナ姫とヴィットーレのお勉強をBGMにしているおかげで、ちょっぴり睡眠学習になっていたりするのだ。
この三人のノーブルさとおっとり具合…フラヴィオはヴァイオリンが好きだし…
アンシュルス公国かな?アンシュルスの田舎かな?
「ルイージ君どした?あれかな?二人の国では稲作が門外不出だったりとかするのかな?」
「ふふ、いいえ」
はっ!この二人は訳アリだった…もしや生家が稲作の領でお家断絶の憂き目にあったとか…そういうこと?
思い出したくない過去でもあるんだろう。ここはスルー一択で。
「…イヴ様。ライスでしたらきっとこのサルディーニャでもいずれ手に入りましょう」
「そう思う?」
「ええ」
「ふーん」
そう言えば夏の家族旅行は延び延びになってんだよね…
お隣の国ぐらいならそれほど遠くないだろうし、いつ輸入開始になるか分からない米を待つよりいっそ買いに行った方が早いかもしれない。そうしたら念願のパエリアやリゾットなんかも作れるし。
それに音楽の国…
まさかね。まさかアニソン…とか無いのは分ってるけど…、…ちょっと気になる…
そうだよ!パンクラツィオが戻って来た以上、ノコノコ社交界に出たりしたら多分揉め事必至!けどイヴァーノ・モードがある以上、こっちも今までのようにコソコソ隠れているわけにはいかない。そもそもパンキーの妹もお母さんも顧客だからー!
かと言って面と向かえば恐らく僕のことだ。うっかり口を滑らせて拘置所アゲイン…
ならしばらく留守にして、その間にマッティオ氏とかコレッティパパに直接パンキーの逆らえない相手、タランティーノ公爵と話しをつけてもらうのはどうだろうか?そうだ!今ならカタリーナ様もいる!
これだけ女性陣が味方に付いた今なら…たぶんイケるっしょ!
「よし!約束だから二コラの夜会だけは勤務して…その後だな。何日ぐらい行こう?往復の移動にかかる日数と…わからん」
外国の休暇と言えばがっつり長期と決まっている。なら二か月くらい取っとけば公爵家とも話つくだろぅか?
いそいで休暇の申請しなくっちゃ☆
玄関の前には馬車に乗ったジュゼッペじいさん。彼はロデじいからもらった嗅ぎタバコを嬉しそうに嗜んでいる。
「お帰りなさいまし坊ちゃま」
「ただいま。ところで何してんの?」
「へぇ。旦那様がここで待つようにと」
「ふーん…」
ジュゼッペにエヴァの事はもちろん極秘だ。彼は僕のお出かけをイヴァーノのサロンだと思っている。
扉を開ければそこには話込むフラヴィオとロデじいの姿。
「ロデじい、その荷物なに?」
「フラヴィオ様が王城にしばらく泊まり込むと言われるのでその支度にございます」
「王城に?」
「君のおかげだ。そうだね?エヴァ」
「んー?ナンノことかな?わっ!」
ギュゥゥゥゥ…「君の口添えで議会への同席が認められた」
サバ折りのような熱い抱擁。フラヴィオがそれほど議会に興味があったとは…
どうやらアマーディオはエヴァのちょっとした何の下心もない思い付きを、ちゃーんと実行に移してくれたようだ。ニヤリ、けど…く、苦しい…
「は、放して…ふー…、ヤキモチは妬かなくていいんですか?」
「意地悪を言わないでくれ…」
「ウソです。後で何話してたか教えてくださいね」
経過報告、それこそが僕の目的…
「ああ。だがしばらくは城より戻れないだろう。イヴ、ルイージたちをよろしく頼んだよ」
「留守を守るんですね?ふっ、お安い御用です。お任せを!あ、待ってフラヴィオ」ンチュー!
「ふふ、これはこれは。元気が出たよ」チュッ
今日ばかりはお出かけのキッスが必需品。
だってフラヴィオが居ないのここに来て初めてのことだから…実はちょっぴり寂しい。言わないけどね。
「イヴ、その手に持ったものは何なのだい?」
「あ、これ」
馬車まで見送る僕の手荷物に気が付くフラヴィオ。これは今日の帰りにマルティノから渡されたコンタクト開発の副産物、試作品のオペラグラスだ。
この世界にも望遠鏡はある。けどコンパクトな双眼鏡はまだなかったらしい。
僕は本日これを使ってバードウォッチングをしながら帰宅したのだ。残念ながら名前が分かったのはムクドリとカラスくらいだけど。
「これはいい!内ポケットに入るのだね」
「良かったら持ってきます?」
「良いのかい?」
「どーぞどーそ」
マルティノのカラコン開発は一進一退を繰り返している。まあ物が物だけにこんなもんだろう。焦っちゃいない。科学とは日進月歩だ。
けどこのオペラグラスはマッティオ氏にプレゼンしようと思っている。
オペラに演劇…舞台観劇にオペラグラスは付き物。いずれコスプレカーニヴァルを開催するつもりでいる僕にしたら、ある意味…必須アイテム?
そしてもしこれが製品化されれば…マルティノ…彼の将来はわりと安泰である。
ガラガラガラ…
「あーあ、行っちゃった…」
「お淋しいですかイヴ様」
「まあね。けど…フラヴィオが居ないなら夜通し縫物しちゃおうかな?」
「ほどほどでお願いしますぞ」
「じゃ、今日は手抜きでカレーね」
「おお!カリですな!私は好きですぞ!」
みんな大好きカレー!は、スパイスカレーにナン、という本格仕様である。僕はパンと麺があればわりと平気な現代っ子だが、こんな時はさすがに…
「ああ…お米が食べたい」
「ライスでしたら私の国にありますな」
「ロデオ」
食事中ポロっとこぼした僕にロデじいが爆弾発言!
そしてそれを表情は変えず、それでも静かに諫めるルイージ君。なんで?
すっかり忘れていたが、この三人は外国からきた遠縁だったはず。けどブルボン王国の話をしていた時もブンデス皇国の話をしていた時もフラヴィオは反応していない。
このサルディーニャはたしか四か国と隣接していたはずだ。ブンデス…ブルボン…、あと二つはブンデスの姉妹国アンシュルス公国ととても小さなシュヴィーツ国。
ブンデスとサルディーニャは非常に良好な関係を築いている。そしてアンシュルスは音楽の都でシュヴィーツ国は絶対中立を掲げた国。
ブルボンも市民運動はともかく基本は享楽的な国だ。比較的沸点の低い国々に囲まれ、それはBL大国サルディーニャの平和主義に大きく貢献している。
詳しいでしょ?ゲーム内情報じゃないよ?
カタリーナ姫とヴィットーレのお勉強をBGMにしているおかげで、ちょっぴり睡眠学習になっていたりするのだ。
この三人のノーブルさとおっとり具合…フラヴィオはヴァイオリンが好きだし…
アンシュルス公国かな?アンシュルスの田舎かな?
「ルイージ君どした?あれかな?二人の国では稲作が門外不出だったりとかするのかな?」
「ふふ、いいえ」
はっ!この二人は訳アリだった…もしや生家が稲作の領でお家断絶の憂き目にあったとか…そういうこと?
思い出したくない過去でもあるんだろう。ここはスルー一択で。
「…イヴ様。ライスでしたらきっとこのサルディーニャでもいずれ手に入りましょう」
「そう思う?」
「ええ」
「ふーん」
そう言えば夏の家族旅行は延び延びになってんだよね…
お隣の国ぐらいならそれほど遠くないだろうし、いつ輸入開始になるか分からない米を待つよりいっそ買いに行った方が早いかもしれない。そうしたら念願のパエリアやリゾットなんかも作れるし。
それに音楽の国…
まさかね。まさかアニソン…とか無いのは分ってるけど…、…ちょっと気になる…
そうだよ!パンクラツィオが戻って来た以上、ノコノコ社交界に出たりしたら多分揉め事必至!けどイヴァーノ・モードがある以上、こっちも今までのようにコソコソ隠れているわけにはいかない。そもそもパンキーの妹もお母さんも顧客だからー!
かと言って面と向かえば恐らく僕のことだ。うっかり口を滑らせて拘置所アゲイン…
ならしばらく留守にして、その間にマッティオ氏とかコレッティパパに直接パンキーの逆らえない相手、タランティーノ公爵と話しをつけてもらうのはどうだろうか?そうだ!今ならカタリーナ様もいる!
これだけ女性陣が味方に付いた今なら…たぶんイケるっしょ!
「よし!約束だから二コラの夜会だけは勤務して…その後だな。何日ぐらい行こう?往復の移動にかかる日数と…わからん」
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