コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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アスタリア再び!

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「さあみんな!ここがアスタリアだよ!」

「わぁ!」
「空気が乾燥してる…」

「チームの中にアスタリアっ子はロシオだけだね?」
「はい」
「じゃ、ロシオとディエゴ、二人は荷物置いたらみんなを案内してあげてね」
「はい」
「え、でもエヴァさんは…」

「僕は公爵家にいるイヴァーノ様に挨拶してくるから」
「ああ…。わかりました」

ついにやって来たのは一年ぶりのアスタリア。
わーん、やっとルイルイに会える!

ファンクラブ会員はそれぞれ、マッティオ氏の手配した貴族街の宿泊先や、知り合いの知り合いの知り合い…みたいな知人宅に宿泊している。いつもの貴族互助会ね。

この遠征に関しイヴァーノは夫と先に来てることになっている。
なので僕はエヴァとしてホテルでチェックインを済ませてなんやかんやして…、その後フラヴィオの待つ公爵邸へ到着の報告に行って再度戻ってくる予定だ。
公演が終わるまで、それがまではエヴァのまんまで…



「エヴァちゃん!」
「よく来てくれたね!待ってたよ!」

「支配人…シェフ…会いたかった!」

「顔見知りの行商も何人か宿泊中でね」
「今夜は歓迎の宴だ!みんな集めとくからパーっとやろう!」

「わぁ嬉しい!」


ルイルイが手配してくれたのは以前と同じ庶民地区のホテル。
けど、あの時半分も可動してなかった客室は、現在全室開放のうえ満室である。

それに区画内の狭い路地には人が溢れ、トマト殺人現場になってたあの広場にもところ狭しと露店が並んでた。

「エ、エヴァさん…」
「なに?ロシオくん」

「こ、ここは僕の知ってる庶民地区じゃないです…なんか…賑やかです」
「そう?でもあの頃からポテンシャルは感じてたけどな」

まあ…物はレベチで増えたけど。

鮮度の必要なものはカステーラから。それ以外のものはサルディーニャからの支援物資なんだとか。
あ、あと商機を感じた他国の商会がいっぱい来たおかげね。

「ディエゴは出身外郭の向こうだったよね?王都は?」
「昔はよくお使いに来てたので多少は」

ディエゴは内乱が激化する少し前、すでに生活苦だった両親から「まだヨチヨチ歩きの弟を生かすためにお前は家を出ろ」と私設の孤児院に連れてこられたのだとか。

つまり…痩せた畑の働き手として残すより出ていく食い扶持のほうが負担だったってこと…

キツいな…

当時十一歳のディエゴが居たのは王都近くの孤児院。そこは成年前の子供に限り、働き口が見つかるまでの一時預かりみたいなことをしてたんだとか。
でもタイミング悪くその頃から内乱が激しくなって、結局働き口もないまま孤児院にくすぶってたみたい。

「ロシオ、街に出たら西からきた物売りの人に聞いてみよう」
「うん。ディエゴありがとう」

…いいもんだな、友情って。

「何か手掛かりあると良いな」
「うん…。でも…」
「でも何だよ」
「両親が見つかっても僕…」
「うん?」

「サルディーニャに居たいな、って思ってて」
「そりゃサルディーニャは町もキレイだし人も優しいし。暮らしやすいもんな」
「ううん。そーじゃなくて…、ディアゴが居るから」
「…あ、うん…」

……友情?


「エヴァさん?」

はっ!「あ、じ、じゃあみんなー?今から少し自由時間ね。外行くなり休むなり…リーダー!」

「はい!」
「パメラは十八…」
「先日十九になりました」
「最年長だね。みんなを任せたよ」
「はい」
「何かあったら僕かイヴァーノ様の名前を出して。みんな知り合いだから」
「わかりました」

「宴会は十七時から。それまでに戻ること。解散!」




入国の門から通達を受けたのだろう。ホテルの裏口には公爵邸の馬車がとっくにお待ちかねだ。

「おっ!エヴァちゃん、イヴァーノ様のとこに行くのかい?」
「良ければ宴に顔出してって伝えておくれよ」
「馬鹿かお前!イヴァーノ様は第三王子妃だぞ!無茶言うな!」

「あっ、でも帰りまでに一度は顔出すって言ってましたよ?」
「さすがはイヴァーノ様だ!」


エヴァはBKDの公演を見守って、終わり次第アスタリアにほど近い故郷に帰る、という筋書きになっている。
その後登場するのは、イヴァーノがアスタリアで見つけてきたやり手の女マネージャー、エビータ嬢だ。

この名前…実は命名フラヴィオである。

フラヴィオは〝スーパーアイドルエヴァ”が姿を消し、代わって”敏腕マネージャーエビータ”が登場することをとても喜んでいる。

「自分の妻が大衆に愛されている事実は嬉しくもあるが…それ以上に妬けてしまうのでね」

これがフラヴィオの言い分。テレテレ…
けどエヴァちゃんと違い、このエビータ嬢ではマニッシュなパンツスーツをはじめとした、かなり攻めのファッションを展開するつもりだ。
これは〝お姉さま”の男装というワンクッションあっての…思い切った挑戦ね。

女キャラのパンツスタイル…、そこをクリアーしないとコスプレの可能性は広がらない。女性の男性服…。アンチも多いだろうがこれは避けて通れない課題!エビータ頑張るもん!


さて、このコスサミだが、僕は概要と綿密な計画書だけをカタリーナ様に託し、全てをアスタリアへ丸投げしている。

って、仕方ないじゃん!そうそう簡単に出張なんて出来ないし、ましてやメールも電話もファックスもないんだから!
けど、僕の見聞きし体験した前世のイベント知識、その全てを計画書には注いでおいたからきっと大丈夫!

とは言え、本番の一週間も前に到着したのは色々打ち合わせがあるから。最後の詰めね。



「イヴァーノ!会いたかったわ」
「ペネロペ様?」

なんと!予想もしなかった公爵邸でのウェルカムコンパニオン!
宮殿への訪問を僕が嫌がると思って(良くお分かりで)フラヴィオと一緒に来てくれたんだとか。


「イヴ、彼らは何事もなくこの国に?」
「皆さんそれぞれ知人のお屋敷に向かいました。あっ、そうそう。アンドレア教授は新助教授ヴィットーレに新学期の準備全部任せて休暇取ってきたって」

「ははは、彼も大変だ」

一年で一番忙しい新学期早々に上司が二か月の休暇とは…、直属の部下となるヴィットーレもさぞ遣り甲斐があることだろう。

「それよりイベントの準備は?」
「万端だそうだ。何も問題ない」

「エントリーは?」
「大勢集まっているよ。それより優勝賞品は決まったかい?」

「えっと、トロフィーと来年のシード枠、今回に限ってはエヴァちゃん印の救急キット。それから…」

ここはやっぱり人の気持ちを爆上げするもっとも有効的なアレだ。

「優勝賞金百五十万リラです」
「これは…思い切ったものだ。ずいぶん振舞うのだね」
「今回成功したら来年はもっと上げたいと思ってます」

この金額は農民で月五から八金貨、王都の労働者でも平均して月十五金貨と考えれば、チームの人数で平等に割ったとしても、結構な金額である。

「他にも色々細かい賞を設定したから賞金合計は三百万リラです。これはサルディーニャの貴族家からクラファンで集めました」

クラファンの返礼品は次回コレクションの招待状。みんな快く寄付してくれたよ?

「それで君は何を着るのだい?」
「何…って?」
「君も仮装するのだろう?この〝コスサミ”に」
「フラヴィオ…?」

「私も仮装しよう。君のパートナーだからね」
「え」


愛する夫との…〝併せ”…だと? 







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