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2・6年後に再会
6年後、同僚とのトラブルと再会(2)
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「僕、ここにいたらいけないの……?」
「そんなことないよ。このお姉さんの話は、気にしなくていいからね」
「なんで否定するのよ。この子にも、わからせてやりなさい。いい? あんたに父親がいないのは、金沢さんと関係を持った男が、お前なんか産まれなければよかったと思っているから――」
「一体誰が、いつ、そんな心ない言葉を言ったんだ」
2人の会話に割って入った人物の声を、生涯忘れることなどないだろう。
なぜならば――。
「俺の気持ちを勝手に推し量り、己の都合がいいように捏造するのは、やめろ」
それはつぐみの最愛。
ここにいるはずがない、安堂清広のものだったからだ。
(どうして、彼がここに……?)
今までどれほど連絡を取りたいと願っても、音信不通だった。
そんな彼と実家から遠く離れた地で偶然再会するなど、夢にも思わない。
「清広、さん……」
つぐみは声を震わせながら、彼の名を呼び――息子とほぼ同時に、ゆっくりと後ろを振り返る。
「ママ……?」
そこには絢爛豪華な衣装に身を包み、目を見張る清広の姿があった。
(あれは……軍服……?)
最も印象的なのは、両肩にモップの清掃部分のようにしか見えない飾緒と、金のダブルボタンが縫いつけられた真っ白なジャケットだ。
手袋で覆われた右手には、特徴的なエンブレムが描かれた黒と白を基調とした帽子を握りしめている。
(どうして彼はスーツ姿ではなく、どこかの制服らしき純白の衣装に身を包んでいるの……?)
驚きすぎて開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだ。
つぐみはボーッと背の高い彼の凛々しい姿を永遠に見上げていたいという気持ちをどうにか心の内に押しやり、不安そうに瞳を潤ませる息子にどう説明しようか思い悩む。
(こんなところで、彼が広春のパパだよなんて打ち明けるわけにはいかないし……)
深い思考に沈みかけていたつぐみの意識が戻ったのは、広春の口から意外な言葉が紡がれたからだった。
「僕とそっくりな顔をした、王子様だ……!」
息子はキラキラと瞳を輝かせて、母親の指先から手を離す。
そうして、自らの意思で清広の元へ駆けていく。
「広春!」
慌てて制止したが、遅かった。
広春はあっという間に彼の足元に抱きついてしまう。
清広はその場にしゃがみ込むと息子の頭を優しく撫でつけ、少しだけ困ったように眉を伏せた。
「すまない。俺はそんなふうに呼ばれるような職種ではない」
「じゃあ、どうしてそんなに、キラキラでかっこいい服を着ているの……?」
「礼服だ」
「れ、ふく……?」
「制服なら、わかるか」
「うん」
清広と広春は今日初めて顔を合わせたとは思えぬほどに、次々と会話を成立させていく。
(人見知りの広春が、こんなにも早く清広さんに懐くなんて……)
やはり、血は争えないと言うことなのだろうか。
つぐみがなんとも言えない複雑な表情を浮かべてその光景をじっと見つめていると、山田が苛立ちを隠せない様子で親子に恨みがましい視線を向けているのに気づいた。
「なんで……? 新郎側の参列者に知り合いがいるなんて、聞いてないんだけど……?」
このままでは、つぐみに対する恨みがまったく関係のない2人に八つ当たりのような形で爆発する。
(どうにかして、止めなくちゃ……!)
焦ったつぐみは困惑の最中、必死に作戦を考える。
しかし、こんな状況では名案など浮かぶはずがなかった。
オロオロと視線をさまよわせて狼狽える最愛の姿を目にした清広は、足元にいた息子を軽々と抱き上げてから会話に割って入る。
「そんなことないよ。このお姉さんの話は、気にしなくていいからね」
「なんで否定するのよ。この子にも、わからせてやりなさい。いい? あんたに父親がいないのは、金沢さんと関係を持った男が、お前なんか産まれなければよかったと思っているから――」
「一体誰が、いつ、そんな心ない言葉を言ったんだ」
2人の会話に割って入った人物の声を、生涯忘れることなどないだろう。
なぜならば――。
「俺の気持ちを勝手に推し量り、己の都合がいいように捏造するのは、やめろ」
それはつぐみの最愛。
ここにいるはずがない、安堂清広のものだったからだ。
(どうして、彼がここに……?)
今までどれほど連絡を取りたいと願っても、音信不通だった。
そんな彼と実家から遠く離れた地で偶然再会するなど、夢にも思わない。
「清広、さん……」
つぐみは声を震わせながら、彼の名を呼び――息子とほぼ同時に、ゆっくりと後ろを振り返る。
「ママ……?」
そこには絢爛豪華な衣装に身を包み、目を見張る清広の姿があった。
(あれは……軍服……?)
最も印象的なのは、両肩にモップの清掃部分のようにしか見えない飾緒と、金のダブルボタンが縫いつけられた真っ白なジャケットだ。
手袋で覆われた右手には、特徴的なエンブレムが描かれた黒と白を基調とした帽子を握りしめている。
(どうして彼はスーツ姿ではなく、どこかの制服らしき純白の衣装に身を包んでいるの……?)
驚きすぎて開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだ。
つぐみはボーッと背の高い彼の凛々しい姿を永遠に見上げていたいという気持ちをどうにか心の内に押しやり、不安そうに瞳を潤ませる息子にどう説明しようか思い悩む。
(こんなところで、彼が広春のパパだよなんて打ち明けるわけにはいかないし……)
深い思考に沈みかけていたつぐみの意識が戻ったのは、広春の口から意外な言葉が紡がれたからだった。
「僕とそっくりな顔をした、王子様だ……!」
息子はキラキラと瞳を輝かせて、母親の指先から手を離す。
そうして、自らの意思で清広の元へ駆けていく。
「広春!」
慌てて制止したが、遅かった。
広春はあっという間に彼の足元に抱きついてしまう。
清広はその場にしゃがみ込むと息子の頭を優しく撫でつけ、少しだけ困ったように眉を伏せた。
「すまない。俺はそんなふうに呼ばれるような職種ではない」
「じゃあ、どうしてそんなに、キラキラでかっこいい服を着ているの……?」
「礼服だ」
「れ、ふく……?」
「制服なら、わかるか」
「うん」
清広と広春は今日初めて顔を合わせたとは思えぬほどに、次々と会話を成立させていく。
(人見知りの広春が、こんなにも早く清広さんに懐くなんて……)
やはり、血は争えないと言うことなのだろうか。
つぐみがなんとも言えない複雑な表情を浮かべてその光景をじっと見つめていると、山田が苛立ちを隠せない様子で親子に恨みがましい視線を向けているのに気づいた。
「なんで……? 新郎側の参列者に知り合いがいるなんて、聞いてないんだけど……?」
このままでは、つぐみに対する恨みがまったく関係のない2人に八つ当たりのような形で爆発する。
(どうにかして、止めなくちゃ……!)
焦ったつぐみは困惑の最中、必死に作戦を考える。
しかし、こんな状況では名案など浮かぶはずがなかった。
オロオロと視線をさまよわせて狼狽える最愛の姿を目にした清広は、足元にいた息子を軽々と抱き上げてから会話に割って入る。
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