エリート海上自衛官は秘密の息子ごと、保育士の妻に海よりも深い愛を注ぎ込む

桜城恋詠

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2・6年後に再会

6年後、同僚とのトラブルと再会(3)

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「俺とつぐみの関係は、誰にも伝えていないからな。身辺調査をしなければ、把握不能だ」
「わ、私は! 金沢さんに聞いているのよ!」
「つぐみが事情を説明したところで、聞く耳を持たないくせに」
「なんですって!?」

 2人が言い争っていた理由を知らないはずの彼は、同僚を挑発するような冷たい言葉を投げかけた。
 これにつぐみはますます驚き、絶句するしかない。

 (誰かに助けてほしいとは、願っていたけれど……)

 火に油を注いでほしいなど、頼んでいなかったからだ。

 (清広さん、すごく怒ってる……?)

 彼に言いたいことは、山程あった。
 なぜ連絡手段を絶ち、つぐみの前から姿を消したのか。
 6年後、なんの前触れもなく地元からは遠く離れた地で再び巡り合ったの
 か。
 こちらの事情を知らないはずなのに、当然のように息子を抱き上げて山田と口論を繰り広げる理由だって――。
 何もかもを一から説明してくれなければ、到底納得などできなかった。

「金沢さんの話を聞く限り、あんたは彼女を孕ませといて責任を取らなかった最低男ってことでしょ?」
「そうだな」
「ふーん。それは認めるんだ? 今さらどの面下げて、金沢さんの前に姿を見せたわけ?」
「あ、あの……。山田さん。落ち着いて……」
「あんたがはっきり、こいつに問いかけないのがいけないんでしょ!?」

 先程までつぐみを敵視していたはずの同僚は、もっと生理的に受けつけない人間を前にして戦闘スイッチが入ってしまったようだ。

 (これじゃどっちの味方をすればいいのか、さっぱりわからない……)

 彼女の目的が達成するまでは猪突猛進なところは見習うべきだとは思うが、上司の晴れ舞台を前にして声を荒らげて口論を続けるのは明らかにマナー違反だ。

「これには、海より深い事情がある」
「馬鹿にするのも、いい加減にしなさいよ! こんなところで元カレと偶然再会なんて、あり得るわけがないでしょ? これもあんたの、策略の一環に決まっているわ!」
「だったら、どうした」
「開き直ってんじゃないわよ」
「俺の最愛に心ない言葉をぶつけたかと思えば、掌を返したかのようにこちらを非難する……。貴様の言葉は、信用に値しない」

 清広は同僚に、強い怒りを隠しきれない様子で吐き捨てる。
 その姿を目にしたつぐみは、不思議な気持ちでいっぱいだった。

 (清広さんのほうから、別れてくれと言ったのに……。どうしてまだ、私のことを最愛なんて称するの……?)

 少しでも好意をいだいていたのならば、2人が悲しい別れを迎える理由などなかったはずだ。

 (彼の行動原理が、まったく理解できない……)

 つぐみがどれほど酷い目に遭っていたとしても、今の清広には関係ない。
 彼が別れを切り出し、己から離れていった時点で――2人の道は、違えたのだから。

 (広春の存在を当然のように受け入れているのも、気がかりだ……)

 いくら顔立ちが似ているからって、一目で血を分けた息子だとわかるものなのだろうか?
 つぐみには、それがよくわからない。

 (もう、優しくなんかしないでほしい。私は清広さんのことを諦めるために、地元を離れたのだから……)

 ――つぐみにまだ、気があるように見える。

「なんでそういう話になるのよ!? 私は、金沢さんの代わりに問い詰めてやってるだけだけど!?」
「それが、大きなお世話だと言っている」
「もういい! 話にならないわ!」

 顔を真っ赤にして髪を振り乱した同僚は、このまま言い争いを続けたところで、無駄に時間を消化するだけだと考えたのだろう。
 山田は捨て台詞を残し、会場の中へ入って行った。
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