エリート海上自衛官は秘密の息子ごと、保育士の妻に海よりも深い愛を注ぎ込む

桜城恋詠

文字の大きさ
8 / 12
2・6年後に再会

6年後、同僚とのトラブルと再会(3)

しおりを挟む
「俺とつぐみの関係は、誰にも伝えていないからな。身辺調査をしなければ、把握不能だ」
「わ、私は! 金沢さんに聞いているのよ!」
「つぐみが事情を説明したところで、聞く耳を持たないくせに」
「なんですって!?」

 2人が言い争っていた理由を知らないはずの彼は、同僚を挑発するような冷たい言葉を投げかけた。
 これにつぐみはますます驚き、絶句するしかない。

 (誰かに助けてほしいとは、願っていたけれど……)

 火に油を注いでほしいなど、頼んでいなかったからだ。

 (清広さん、すごく怒ってる……?)

 彼に言いたいことは、山程あった。
 なぜ連絡手段を絶ち、つぐみの前から姿を消したのか。
 6年後、なんの前触れもなく地元からは遠く離れた地で再び巡り合ったの
 か。
 こちらの事情を知らないはずなのに、当然のように息子を抱き上げて山田と口論を繰り広げる理由だって――。
 何もかもを一から説明してくれなければ、到底納得などできなかった。

「金沢さんの話を聞く限り、あんたは彼女を孕ませといて責任を取らなかった最低男ってことでしょ?」
「そうだな」
「ふーん。それは認めるんだ? 今さらどの面下げて、金沢さんの前に姿を見せたわけ?」
「あ、あの……。山田さん。落ち着いて……」
「あんたがはっきり、こいつに問いかけないのがいけないんでしょ!?」

 先程までつぐみを敵視していたはずの同僚は、もっと生理的に受けつけない人間を前にして戦闘スイッチが入ってしまったようだ。

 (これじゃどっちの味方をすればいいのか、さっぱりわからない……)

 彼女の目的が達成するまでは猪突猛進なところは見習うべきだとは思うが、上司の晴れ舞台を前にして声を荒らげて口論を続けるのは明らかにマナー違反だ。

「これには、海より深い事情がある」
「馬鹿にするのも、いい加減にしなさいよ! こんなところで元カレと偶然再会なんて、あり得るわけがないでしょ? これもあんたの、策略の一環に決まっているわ!」
「だったら、どうした」
「開き直ってんじゃないわよ」
「俺の最愛に心ない言葉をぶつけたかと思えば、掌を返したかのようにこちらを非難する……。貴様の言葉は、信用に値しない」

 清広は同僚に、強い怒りを隠しきれない様子で吐き捨てる。
 その姿を目にしたつぐみは、不思議な気持ちでいっぱいだった。

 (清広さんのほうから、別れてくれと言ったのに……。どうしてまだ、私のことを最愛なんて称するの……?)

 少しでも好意をいだいていたのならば、2人が悲しい別れを迎える理由などなかったはずだ。

 (彼の行動原理が、まったく理解できない……)

 つぐみがどれほど酷い目に遭っていたとしても、今の清広には関係ない。
 彼が別れを切り出し、己から離れていった時点で――2人の道は、違えたのだから。

 (広春の存在を当然のように受け入れているのも、気がかりだ……)

 いくら顔立ちが似ているからって、一目で血を分けた息子だとわかるものなのだろうか?
 つぐみには、それがよくわからない。

 (もう、優しくなんかしないでほしい。私は清広さんのことを諦めるために、地元を離れたのだから……)

 ――つぐみにまだ、気があるように見える。

「なんでそういう話になるのよ!? 私は、金沢さんの代わりに問い詰めてやってるだけだけど!?」
「それが、大きなお世話だと言っている」
「もういい! 話にならないわ!」

 顔を真っ赤にして髪を振り乱した同僚は、このまま言い争いを続けたところで、無駄に時間を消化するだけだと考えたのだろう。
 山田は捨て台詞を残し、会場の中へ入って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敏腕SEの優しすぎる独占愛

春咲さゆ
恋愛
仕事も恋愛も、兎に角どん底の毎日だった。 あの日、あの雨の夜、貴方に出逢うまでは。 「終わらせてくれたら良かったのに」 人生のどん底にいた、26歳OL。 木崎 茉莉 ~kisaki matsuri~ × 「泣いたらいいよ。傍にいるから」 雨の日に現れた、30歳システムエンジニア。 藤堂 柊真 ~Todo Syuma~ 雨の夜の出会いがもたらした 最高の溺愛ストーリー。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...