エリート海上自衛官は秘密の息子ごと、保育士の妻に海よりも深い愛を注ぎ込む

桜城恋詠

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3・つかの間の幸せ

結婚式とサーベルアーチ (3)

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 号令とともに、海上自衛隊の礼服を身に纏った参列者達が一斉に敬礼をすると、ヴァージンロードへ一糸乱れぬ行進を行い、歩み寄ったのだ。

 新郎神秘の前には先導する1名の男性と、左右に別れた6人の男性達が姿を見せた。

「これより、サーベルアーチを行います」

 式場スタッフの案内とともに、先頭の男性が何度か合図を送る。

 清広と同じ真っ白な礼服を身に着けていた男性達は敬礼後、腰元の鞘からサーベルを引き抜き、中央に掲げた。

 左と右から同時に勢いよく中央で掲げられたサーベルの剣先が空中でぶつかり合い、バツ印を描く。

 カチンと小気味のいい音が響けば、すぐに伸ばしていた腕が引っ込められてしまう。
 つぐみが驚いている間に胸元で構えの体制を取ると、彼らは再び剣を頭上に掲げた。

「つぐみ」

 ぼんやりとその様子を見つめていたつぐみは、清広に名前を呼ばれて我に返る。

 (ぼんやりしている場合じゃ、なかった……)

 はっとした様子で彼の腕に手を絡め、ゆっくりと一歩を踏み出した。

「愛し合う証拠を見せよ!」

 その時、1列目にいた男性達がサーベルの剣先を足元に下ろし、新郎新婦の行く手を阻んだ。

 大声で前方から怒鳴られたつぐみは思わず肩を震わせ硬直するが、清広は何事もなかったかのように彼女と向かい合うと、額へ口づけた。

 その姿を見た男性達は再び剣先を上空に掲げ、2人に先へ進むように促してくる。

 (即席の検問みたい……)

 2列目に歩みを進めれば、鋭い切っ先が足元に突きつけられてしまう。

「もう1度」

 1度目は手のひら、2度目は額。
 そして、3度目は頬だった。

 人前で何度も愛する人から口づけを受けることになるなど思わない。
 つぐみは顔を赤く染めて恥ずかしがりながらも、どうにか平常心を装い――行く手を阻む剣先が上空に掲げられたのを確認してから、順調に一歩ずつ前へと進んでいく。

「情熱的な口づけを……!」

 最後の剣先が、足元で行く手を阻む。

 誤魔化すことなくしっかりと唇同士を触れ合わせろと言わんばかりに迫られた清広は、露骨に眉を顰めた。

 1度ならず2度までも唇を触れ合わせる姿を、参列者に見られたくないのかもしれない。

 (キスをしないと前に進めないのなら、やるしか……ない、よね……)

 清広を見上げたつぐみは、彼と目を合わせて小さく頷く。

 妻の了承を得て向かい合った清広は、花嫁の背に力強く腕を回して抱き寄せると――唇に噛みついた。

「……っ」

 清広はつぐみの薄く開いた唇の中へ舌をねじ込むと、舌同士を絡め取り、情熱的な口づけを交わし合った。

 (みんなの前で口づけを交わし合うなんて、恥ずかしくて仕方ないはずなのに……)

 いざ唇同士を触れ合わせれば、周りの目など一切気にならない。
 結婚式の最中だと言うことも忘れ、二人は夢中で互いを貪り食らう。

「こほん」

 大きな咳払いを耳にしたことで正気を取り戻した2人は、どちらともなく自然に唇を離した。

「行こう」
「……はい」

 清広に促されたつぐみは顔を真っ赤にしながらも微笑み、行く手を阻むサーベルが空に掲げられたのを確認し、ヴァージンロードを歩いた。
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