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3・つかの間の幸せ
家族3人で(1)
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清広は披露宴もやりたがっていたようだが、急には会場を抑えられず、結婚式を終えた2人はその足で婚姻届を提出した。
「これからは安堂つぐみと、安堂広春だな」
「金沢じゃ、ないのー?」
「そうだな」
「なんで、変わったんだろ?」
「パパとママが、夫婦になったからだ」
「パパは、パパなのに?」
つぐみは愛の結晶である息子を抱きかかえながら、子どもの純粋な疑問に答える清広の隣で自ら率先して腕を絡め、幸せそうに笑っていた。
「細かいことなんて、気にする必要はないんだよ。今日からは、安堂広春。それだけ、覚えて?」
「わかった!」
母親の言葉を受けた息子は、元気よく返事をする。
その様子を目にして優しく目元を和らげた妻の姿を見捉えた彼は、優しく口元を綻ばせてこちらを茶化した。
「今日のつぐみは、ごきげんだな」
「人生で一番、最高な日だから……」
「俺の妻に、なれたからか」
「ほかに理由が、あるとでも?」
2人は互いに不思議そうな顔で見つめ合い、気まずい沈黙が流れる。
「なんで黙っちゃうの?」
つぐみは居心地が悪そうに視線を逸らす彼に苛立ちを隠せない様子で、追求する。
「ちゃんと教えてくれないと、わかんないよ」
清広の考えていることは何でも知りたい。
そんな願いを込めて凄めば、彼が観念したようにか細い声で告げた。
「つぐみが俺との結婚を、強く望んでいるとは思わなくてだな……」
彼に抱く愛を否定されたからか。
つぐみは先程までいだいていた幸せな気持ちが嘘のように、霧散していくのを感じる。
(何それ。酷い……。私の気持ち、嘘だと思っていたんだ……)
普段のつぐみであれば、黙って心の中で傷つき、彼と距離をとっていただろう。だが、今は違う。
楽しいことだけではなく、つらく苦しい時も彼と共有すると決めたからこそ、胸の内に秘めていた素直な思いを言葉にした。
「私の気持ち、信じていなかったの?」
「違う。つぐみが俺を好きだと言う気持ちは、よく理解している。だが、俺達は……。幼い頃から、一緒にいただろう」
「うん」
「婚約者ではなかったら、きっとつぐみは……。俺ではなく、他の男を……」
清広が身を引くような発言をした瞬間、彼女は腕の力を強めた。
つぐみが望むのは、自身の為を想って彼が目の前からいなくなる光景ではない。
ともに、夫婦として幸せに暮らす未来だ。
「私は清広さんだから結婚したんだよ。ほかの男性だったら、広春を生み育てることだって躊躇してた」
「つぐみ……」
「清広さんはもっと私を信頼して、感謝をするべきなんだから。普通、一緒にいる時間よりもいない方が長い男性と結婚しようなんて、思わないんだよ?」
「ああ。それは、本当に……。つぐみの海のように広い心が為せる技だと、実感している」
「私の心は、小さな水たまりくらいに狭いよ……」
清広はつぐみのことをよくわかっているような素振りを見せるが、本当は何1つ理解できていないのだろう。
それは、己が弱い自分を見せたくないと――心を閉ざして来た結果だ。
「仕事だから、仕方ないとは思ってる。でも、何も言わずにいなくなるのは酷いよ。せめて一言、メモ書きくらいは残せないの?」
「……そうだな。善処しよう」
「私達はもう、彼氏彼女じゃない。夫婦になったんだから。清広さんの顔色を窺って生活する気はないよ。本当の自分を曝け出して、生きていく。対等な関係になったの!」
嫌な出来事があっても黙って受け入れ、言いたいことがあっても伝えられない。
そんな自分とは、決別するのだ。
これからは、家族3人で幸せになれる未来だけを考え、生きていく。
「こんなはずじゃなかったと後悔しても、もう遅いんだから」
「何を言っているんだ。俺は金沢つぐみを世界で一番、愛している男だぞ。どんな君でも、海よりも深い愛で包み込む」
「もう……」
清広の言葉を受けたつぐみは、途端に恥ずかしくなる。
彼に顔を見られないように胸元へ顔を埋めると、彼のぬくもりを思う存分堪能する。
「これからは安堂つぐみと、安堂広春だな」
「金沢じゃ、ないのー?」
「そうだな」
「なんで、変わったんだろ?」
「パパとママが、夫婦になったからだ」
「パパは、パパなのに?」
つぐみは愛の結晶である息子を抱きかかえながら、子どもの純粋な疑問に答える清広の隣で自ら率先して腕を絡め、幸せそうに笑っていた。
「細かいことなんて、気にする必要はないんだよ。今日からは、安堂広春。それだけ、覚えて?」
「わかった!」
母親の言葉を受けた息子は、元気よく返事をする。
その様子を目にして優しく目元を和らげた妻の姿を見捉えた彼は、優しく口元を綻ばせてこちらを茶化した。
「今日のつぐみは、ごきげんだな」
「人生で一番、最高な日だから……」
「俺の妻に、なれたからか」
「ほかに理由が、あるとでも?」
2人は互いに不思議そうな顔で見つめ合い、気まずい沈黙が流れる。
「なんで黙っちゃうの?」
つぐみは居心地が悪そうに視線を逸らす彼に苛立ちを隠せない様子で、追求する。
「ちゃんと教えてくれないと、わかんないよ」
清広の考えていることは何でも知りたい。
そんな願いを込めて凄めば、彼が観念したようにか細い声で告げた。
「つぐみが俺との結婚を、強く望んでいるとは思わなくてだな……」
彼に抱く愛を否定されたからか。
つぐみは先程までいだいていた幸せな気持ちが嘘のように、霧散していくのを感じる。
(何それ。酷い……。私の気持ち、嘘だと思っていたんだ……)
普段のつぐみであれば、黙って心の中で傷つき、彼と距離をとっていただろう。だが、今は違う。
楽しいことだけではなく、つらく苦しい時も彼と共有すると決めたからこそ、胸の内に秘めていた素直な思いを言葉にした。
「私の気持ち、信じていなかったの?」
「違う。つぐみが俺を好きだと言う気持ちは、よく理解している。だが、俺達は……。幼い頃から、一緒にいただろう」
「うん」
「婚約者ではなかったら、きっとつぐみは……。俺ではなく、他の男を……」
清広が身を引くような発言をした瞬間、彼女は腕の力を強めた。
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「つぐみ……」
「清広さんはもっと私を信頼して、感謝をするべきなんだから。普通、一緒にいる時間よりもいない方が長い男性と結婚しようなんて、思わないんだよ?」
「ああ。それは、本当に……。つぐみの海のように広い心が為せる技だと、実感している」
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それは、己が弱い自分を見せたくないと――心を閉ざして来た結果だ。
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