エリート海上自衛官は秘密の息子ごと、保育士の妻に海よりも深い愛を注ぎ込む

桜城恋詠

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4・すれ違い夫婦生活と同僚とのトラブル解決

最悪な逆切れ劇(2)

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 つぐみが不安そうに上司の方を見つめながら告げれば、この場にいた職員達の顔色が変化した。

「あれって、山田さんが全部用意したんでしょ?」
「どう見ても、1人で用意できない量だと思ったから、手伝いを申し出たのに……。大丈夫だと自身満々に伝えた理由は、安堂さんに押しつけたからなの……?」
「ち、違うわ! こいつが! あたしの作業量を気の毒に思って! 自分でやるって、勝手に材料を持ち帰って……!」
「私に材料を押しつけてきたくせに。よくそんな嘘を、堂々と皆さんに言えますね」
「嘘をついてんのは、どっちよ!?」

 つぐみが冷たく言い放てば、山田は苛立ちを隠せない様子で激昂する。
 しかし、こちらだって一歩も引くつもりはない。

 (あの話をするなら、このタイミングしかない……)

 園長がこの場にいるのをいいことに、ずっと己のうちに秘めていたトラブルを打ち明けた。

「山田さんは延長保育を担当している際、園児が早く家に帰りたいと親御さん達へ打ち明けるように、わざと怒鳴ったり、強く手を引っ張ったりしていますよね」
「そ、それは……!」
「……お預かりしているお子さんを、傷つけたの!?」

 これにはさすがの目黒も、黙ってなどいられなかったのだろう。
 驚きを隠せぬ様子で問い詰めれば、山田は観念したように吐き捨てる。

「適当なことばっか言わないで! あたしはわざとなんかじゃない! そうなるように仕向けたのよ!」
「なんで、そんなこと……」
「あいつらが大人しく、親の帰りを保育園で待とうとするから! あたし達の帰りが遅くなるんでしょ!? 泣き叫ぶほど嫌がれば、残業なんてしなくて済む! あんたらだって、一石二鳥じゃない! 一体、何が悪いのよ!?」

 悪びれもなく語る彼女の告白を耳にしてしまえば、目黒の送別会など
 続けられるはずもない。

「皆さん。そこに座り直してもらえる?」
「あたしは何も、悪くないから! 全部、こっちの機嫌を損ねた……!」
「口を閉ざしなさい!」

 上司の怒声を耳にすれば、さすがの山田もまずいと思ったのだろう。
 その場にストンと腰を下ろしたので、つぐみもそれに倣ってその場へ座る。

「保育士として、恥ずかしいと思わないのかしら?」
「別に。あたし、子どもなんて嫌いだし」
「だったらどうして、子どもとかかわる仕事なんてしたの?」
「手っ取り早くお金を稼げて、食いっぱぐれる心配がないからに決まってるでしょ!?」

 山田の主張は子どもに携わる人間とは思えぬ、自分本意なものだった。
 さすがにその話を聞けば、上司も冷静でなどいられない。
 苛立ちを隠せない様子で、反論した。

「保育士はそんなに簡単な仕事じゃないわ!」
「簡単よ! 少なくとも、あたしにとってはね! 雑用は全部気の弱い同僚に任せて、適当に時間を潰してサボってればいい! 今までは、うまくやれてた。あんたが、結婚なんかして、こうやってあたしを責めるから……!」
「安堂先生に責任転嫁をするのは、止めなさい!」

 呼び水は自分のせいで起きたかもしれない。
 しかしこれほどまでに事が大きくなったら、こちらは口を挟むタイミングがない。

 (清広さんと連絡を取って、さっさと帰ろう……)

 つぐみはコソコソとスマートフォンを取り出し、夫へメッセージを送信したのだった。
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