異世界で、宿屋の受付は恋をする。〜モブですが、人生楽しみます!!〜

sora

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29.後方

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―――アルside―――
 
 ルカとディアボロスとの戦いの場から少し離れた平地に俺たちは待機した。怪我を負った人にポーションを分けたり、セラさんが回復魔法をかけている。様子次第では、あの場に戻る可能性があるということだ。出来るだけ人手は あった方がいい。
 それにしてもルカが人の姿になれるなんて…。くやしいが、俺たちでも使えない上級魔法を目にしては、後退するしかなかった。ルーナは、ルカが人の姿になれることを知っているのだろうか?
 
 街の方を、おもむろに見ると、一頭の馬が人を乗せて走って来ているのが見えた。…誰だ?追加で冒険者が来たのだろうか?
 その馬は、俺たちの近くに止まった。
「みんな無事か?」
 そう言って、馬の上から降りて来たのはルーナの友人のレイさんだった。
 「レイさん?!なぜ、ここに?それに…」
 後ろに女の子が乗っていたことに気がついた。レイさんが手を貸して、その子も馬から降りた。
「子ども……?」
 こんな危ないところになぜ?
 その子を見るとルーナの子どもの頃に そっくりなことに驚いた。
「ルーナさんの隠し子!?…にしては大きいか。ルーナさんの妹さん?」
 ジョンさんが冷静になって、そう言った。
「え?」
 ロイさんも、怪我人の手当てをしていた手を止め、その子を見た。ロイさんもルーナが好きなのだから、ルーナに似た子が現れたら 気になるよな。
 ルーナに妹がいるなんて聞いたことないけど……見れば見るほど、そっくりだ。
 
「えっと……、ルーナ本人です。」
 その子は、おずおずと答えた。
「は?!ルーナ!?なんで、子どもに…?!」
 驚いて、全員がルーナを凝視している。ロイさんも、立ち上がって、ルーナの近くへ来た。
「実はディアボロスに魔力を封印されて、なぜか この姿に…。それより!ルカは、どこにいますか?」
「ルカは今、一人でディアボロスと戦っています。ルーナは、ルカが人の姿になれることを知っていたんですか?!」
 俺が気になっていたことをロイさんが ルーナに聞いた。なんて答えるだろう……。
「ギルドに行く前に知りました。人の姿で戦うのは、本来の力が出せないって……」
 
ドォォンッッ
 
 言い終わる前に、遠くで大きな音がした。
 音がしたのは、ルカが戦っている方だ。全員が息をんだ。
 黒い影……それは、遠くにいるのに近くにいるかのような存在感。
 轟音ごうおんと共に、巨大なブラック・ドラゴンが姿を現した。ディアボロスと戦っているのか、空気が切れる音がして地面が揺れる。
「うそ……ダメっ、レイ!ルカを止めなきゃ…っ」
 ルーナが焦ったように、レイさんの腕に しがみついた。
「……わかった。私が行ってくるから、ルーナは、みんなといて?」
「私も行きたい!レイ、お願い!!」
 駄々をこねる子どものように、レイさんの腕を引っ張った。いや、子どもの姿だから そう見えてしまった、と言うべきか…。
「危ないからダメ。あいつからも、ルーナを守るように言われてるからね。」
「……っ」
 ルーナは目を潤ませて、今にも泣きそうだ。せめて、もう少し近くまで行けないだろうか…。
「レイさん、危なくなったら俺がルーナを連れて逃げるから、近くまで一緒に行ってはダメだろうか。」
「俺もルーナを守ります。」
 ロイさんも同意してくれたことに少し、ほっとした。正直、俺一人で守れるか不安があったからだ。
「……近くまでなら。危ないと判断したら、すぐに離れて。」
 チラッとルーナを見て、諦めたように 頷いた。
 
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