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政敵の娘
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王都外れの古い家屋に馬車が一台止まっている。周りは人影もなく、夜の暗闇にその家だけが存在していた。
「娘を連れて来たか。約束通りの金だ!受け取れ」
一人の男が馬車の御者に渡した。そして、馬車の扉を開きながら
「これで、貴女は俺のものだ。愛しいコーネリア」
だが、扉の向こうにはアレクセイの姿があった。
「まさか、お前だったとは、バーナード。親友だと思っていたのに…」
「なんで、お前がいるんだ。コーネリアはどうした?」
「ここにはいない。お前が雇ったゴロツキ共は今頃、牢屋で尋問されている。残念だったな」
バーナードは、腰の剣を抜き、アレクセイに襲いかかったが、剣ではアレクセイに勝てなかった。するりと交わし、潜んでいた騎士達に取り押さえられ、バーナードは敢え無くお縄になったのだ。
「何故、こんな事をした。バーナード。幼い頃からの友人で親友だったろう。違うのか?」
「ああ、確かに俺もそう思っていたさ。あの時まではな。お前が俺からコーネリアを奪うまでは」
「コーネリアを奪う?僕は君から彼女を奪った覚えはない」
「ふん、お前は本当に何も知らないのだな。いや知らされていないか?あのデビュタントの日に、俺はコーネリアに引き合わせられて、婚約を結ぶはずだったのに、お前が彼女を好きになったことで、状況が一変したんだ」
「そんな事は、侯爵から聞いていないし、何故、言ってくれなかったんだ。そうすれば、僕は…」
「言ってどうする。言えば、諦められたのか?俺がそうなのに、甘ちゃんのお前にそんな事が出来たのか?」
バーナードの言葉にアレクセイは押し黙った。彼の言う事には一理ある。もし逆の立場なら、自分はコーネリアを果たして諦められただろうか。だが、だからと言って、コーネリアの意志を無視してこんな行いを正当化しようとしているバーナードを許せるはずもなかった。
「僕達はお互いに愛し合っている。それの何がいけないんだ」
「お前は、貴族には向いていない。ギャロット公爵家とオルフェ侯爵家は政敵同士だ。そんな家が婚姻によって絆を結べば周りはどう見る。『王族派』で今は王太子に付き従っているギャロット公爵家と『中立派』で第二王子の母君、現王妃様の実家ローレン公爵家と姻戚のオルフェ侯爵家。誰もが王太子を退け、第二王子を掲げる気だと思っても当たり前だ。現にお前の兄は、国王に推挙された側近なのに、大部屋執務官の一人に過ぎない扱いを受けている。元々、第二王子の側近だった彼を煙たがっているという噂位、お前だって知っていただろう。なのにお前は、政敵の娘を妻にした」
「確かにそうだが、僕らはそんな政治の駒で結婚したのではない」
「だから、甘ちゃんで世間知らずなんだ。実際にお前が落とした波紋は広がり続けている。誰も彼もがお前達を祝福なんてしないんだ。今まで保っていた見せかけだけの平穏をお前はいや、お前達は壊したんだからな。お前に掛けられた呪いは当然の報いだよ」
バーナードは悲しげな瞳をしながら、アレクセイを嘲笑っていた。アレクセイも政治的な意味で最初から両家から歓迎されていないことは知っていた。だから5年もかけて、その誠意をオルフェ侯爵に見せて結婚したのだが、周りはその結婚を本当の意味での祝福をしていなかった。
僕はただ、コーネリアと一緒に幸せになりたかっただけなのだ。誰かを不幸にしたかった訳ではない。
もしかしたら、一歩間違えば僕が彼の立場になっていたかも知れない。
そう考えていた。憐憫の眼差しで連行されて行く、かつての親友を見送りながら複雑な思いが駆け巡るのだった。
「娘を連れて来たか。約束通りの金だ!受け取れ」
一人の男が馬車の御者に渡した。そして、馬車の扉を開きながら
「これで、貴女は俺のものだ。愛しいコーネリア」
だが、扉の向こうにはアレクセイの姿があった。
「まさか、お前だったとは、バーナード。親友だと思っていたのに…」
「なんで、お前がいるんだ。コーネリアはどうした?」
「ここにはいない。お前が雇ったゴロツキ共は今頃、牢屋で尋問されている。残念だったな」
バーナードは、腰の剣を抜き、アレクセイに襲いかかったが、剣ではアレクセイに勝てなかった。するりと交わし、潜んでいた騎士達に取り押さえられ、バーナードは敢え無くお縄になったのだ。
「何故、こんな事をした。バーナード。幼い頃からの友人で親友だったろう。違うのか?」
「ああ、確かに俺もそう思っていたさ。あの時まではな。お前が俺からコーネリアを奪うまでは」
「コーネリアを奪う?僕は君から彼女を奪った覚えはない」
「ふん、お前は本当に何も知らないのだな。いや知らされていないか?あのデビュタントの日に、俺はコーネリアに引き合わせられて、婚約を結ぶはずだったのに、お前が彼女を好きになったことで、状況が一変したんだ」
「そんな事は、侯爵から聞いていないし、何故、言ってくれなかったんだ。そうすれば、僕は…」
「言ってどうする。言えば、諦められたのか?俺がそうなのに、甘ちゃんのお前にそんな事が出来たのか?」
バーナードの言葉にアレクセイは押し黙った。彼の言う事には一理ある。もし逆の立場なら、自分はコーネリアを果たして諦められただろうか。だが、だからと言って、コーネリアの意志を無視してこんな行いを正当化しようとしているバーナードを許せるはずもなかった。
「僕達はお互いに愛し合っている。それの何がいけないんだ」
「お前は、貴族には向いていない。ギャロット公爵家とオルフェ侯爵家は政敵同士だ。そんな家が婚姻によって絆を結べば周りはどう見る。『王族派』で今は王太子に付き従っているギャロット公爵家と『中立派』で第二王子の母君、現王妃様の実家ローレン公爵家と姻戚のオルフェ侯爵家。誰もが王太子を退け、第二王子を掲げる気だと思っても当たり前だ。現にお前の兄は、国王に推挙された側近なのに、大部屋執務官の一人に過ぎない扱いを受けている。元々、第二王子の側近だった彼を煙たがっているという噂位、お前だって知っていただろう。なのにお前は、政敵の娘を妻にした」
「確かにそうだが、僕らはそんな政治の駒で結婚したのではない」
「だから、甘ちゃんで世間知らずなんだ。実際にお前が落とした波紋は広がり続けている。誰も彼もがお前達を祝福なんてしないんだ。今まで保っていた見せかけだけの平穏をお前はいや、お前達は壊したんだからな。お前に掛けられた呪いは当然の報いだよ」
バーナードは悲しげな瞳をしながら、アレクセイを嘲笑っていた。アレクセイも政治的な意味で最初から両家から歓迎されていないことは知っていた。だから5年もかけて、その誠意をオルフェ侯爵に見せて結婚したのだが、周りはその結婚を本当の意味での祝福をしていなかった。
僕はただ、コーネリアと一緒に幸せになりたかっただけなのだ。誰かを不幸にしたかった訳ではない。
もしかしたら、一歩間違えば僕が彼の立場になっていたかも知れない。
そう考えていた。憐憫の眼差しで連行されて行く、かつての親友を見送りながら複雑な思いが駆け巡るのだった。
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