【完結】旦那様は元お飾り妻を溺愛したい

春野オカリナ

文字の大きさ
17 / 31

ローランド

しおりを挟む
 やれやれ、私の可愛いダ犬アレクセイは今日も元気に脳筋だな。剣を振ること以外にもやれることはあるのだが、本人は気付いていない。

 どんなに愚かでも私にとってはたった一人の弟。可愛くない訳がない。

 昔はよく私の後ろを付いてくる可愛い子犬が、今は大型犬に成長したが、中身は子供のままだ。進歩がない。

 だから、私と父上で身の振り方を考えていたのに、弟は騎士を目指した。彼は何処までも真っ直ぐで眩しい位誠実な男だ。

 他人を直ぐに信じ、あっけなく許してしまう姿は聖人君子の様だが、貴族としては致命的。貴族社会は騙し、化かし合いそして、他人を蹴落とすことなど何とも思っていない連中の集まりの様なもの。そんな中で一人、自分の正義を貫ける程、社交は甘くない。

 父と相談して、叔父の養子縁組で伯爵家を継がそうと決めたのは、彼が10才の時。叔父が突然やって来たことに驚いていたが、叔父との仲も良好で何とか上手くいきそうだと安堵した。

 アレクセイが成人した時に、結婚を機に叔父の養子になって伯爵家の家業を手伝う様に、父が言い渡した。酷く不満の様で、素直な彼にしては納得がいかないと駄々をこねた。

 そして出した条件が御前試合で勝ったなら、彼の思う様に生きて良いと。

 彼は年少部門の勝利者となり、その名を轟かせてしまった。自分は凡人だと思っている彼は、誰より努力を惜しまない秀才だという事に、まったく気付かない。

 そこから彼は本格的に騎士を目指して、騎士学校に入った。その上、上下身分の隔たりが無いと信じているアレクセイは平民との交流を求めて、寄宿学校にまで入ったのだ。

 これには私も呆れて物が言えなかった。身分の差はどこまで行っても付きまとうのに、彼の頭からは抜け落ちているらしい。

 体ばかり大きくなって、手間のかかる事この上ない。

 そんな彼にも良きライバルが出来た。アイゼンという平民での男だ。私からすれば彼の方が弟よりよほど貴族社会を理解している。惜しいな。家に妹がいれば彼を家に取り込めるのに。残念でならない。

 ククク、良い事を考えたぞ。私の従妹にあたるペドラー侯爵家のリディアに彼を紹介してやろう。確か侯爵家は婿を探している。彼女が気に入れば婿に招き入れるだろう。今あそこの領地は砂漠の民ルガールの度重なる略奪で、強い男が必要だ。アレクセイを婿に欲しがったくらいだ。見目も良い逞しい男のアイゼンならきっと彼女のお気に召すだろう。

 アレクセイもあれで無意識で我々の役にたってくれた。オルフェ侯爵の愛娘を射止めるとは、ある意味大した男だ。

 オルフェ家のコーネリアは家族に愛された箱入り娘。しかも最大の派閥『中立派』で、筆頭侯爵家の娘だ。社交にでる前から彼女を誰が射止めるか噂になっていたほど。

 見目麗しい彼女の愛くるしさに狂った男はバーナードだけではない。他にも大勢の男が彼女を狙っている。そんな彼女に一目惚れしたアレクセイが父の反対を押し切って、猛突進した。

 父は相手が政敵だから慎重に事を勧めたかったのに、アレクセイは『待て』の出来ないダ犬で、誰の忠告も聞かずにコーネリアを探し回った。

 全く困った奴だ。でも、相手の懐に無自覚で入り込む癖のあるアレクセイは、その誠意を侯爵に認めさせた。

 あの気難しいと言われる侯爵に娘婿として扱われ出した時の周りの反応は、実に気分が良かった。

 内心、良くやったと思ったが、逆に不安も覚えた。どちらの家も政敵が多い。いくら愛があっても周りは政治がらみだとみているだろう。だからこそ心配だった。

 王太子派は『貴族派』の連中が多い。何か仕掛けてくるのではと懸念していたが、まさか結婚式で仕掛けるとは思わなかった。計算外の出来事をまたもや規格外な行動をしたアレクセイのおかげで、危機を脱出できた。

 結婚式での王太子の発言が元で冤罪をかけられたアレクセイは、自ら無実を証明して王太子の力量の無さを貴族達に示したのだ。

 今まで王太子に付いていた『王族派』の残りも、その筆頭であるギャロット公爵家を貶めたのだ。最早、これ以上王太子を支持する必要はないとばかりに見限った。

 政権は既に王妃マデリーナ様の実家ローレン公爵家にある。王太子が倒れ、次の国王となるのは私の親友第二王子ルイナード殿下だ。

 もうすぐ、この事件も結末を迎える。犯人の目星も付いた。後は蟻の子一匹逃さない。

 私達が受けた屈辱を何倍にして返すことにするよ。

 大切な弟の初夜が待っているからね。なるべく早く片付ける事にしよう。

 
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。

藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」 憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。 彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。 すごく幸せでした……あの日までは。 結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。 それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。 そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった…… もう耐える事は出来ません。 旦那様、私はあなたのせいで死にます。 だから、後悔しながら生きてください。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全15話で完結になります。 この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。 感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。 たくさんの感想ありがとうございます。 次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。 このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。 良かったら読んでください。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

[完結]離婚したいって泣くくらいなら、結婚する前に言ってくれ!

h.h
恋愛
「離婚させてくれぇ」「泣くな!」結婚してすぐにビルドは「離婚して」とフィーナに泣きついてきた。2人が生まれる前の母親同士の約束により結婚したけれど、好きな人ができたから別れたいって、それなら結婚する前に言え! あまりに情けなく自分勝手なビルドの姿に、とうとう堪忍袋の尾が切れた。「慰謝料を要求します」「それは困る!」「困るじゃねー!」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

処理中です...