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6.捨てられた子供達⑥
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レスティーナが『ローズ・ザ・エデン』に通い始めてから、全てが上手くいっているようにカインデルは感じていた。
この『ローズ・ザ・エデン』は元々、旧大公家が所有していた王都外れにある建物で、今は隠居して寡婦となった老婦人達のシェアハウス化している。
まあ、有閑マダムの溜まり場といった方が正しいだろうか?
国中の最新の話題や隣国の流行まで、どういった経緯で入手するのかというぐらい最新の情報を独自で持っている。
そんな所へレスティーナの様な少女が通う事になると、同居している貴婦人方は大騒ぎだ。
最初は物珍しさからだったようだが、次第にイレーネやソニアの『うちの孫娘が……』的な自慢話になっていくとそこは元は社交界を取り仕切っていたといっても過言でない高位貴族の有閑マダムだ。無駄で妙な闘争心をむき出しにした挙句、自分達も孫自慢がしたいと、領地で教育を受けていた令嬢を呼び寄せたり、孫息子しかいない夫人は娘を作れとまで催促する始末。
挙句にその噂が尾ひれはひれが付いて行き、『ローズ・ザ・エデン』は就学前の淑女教育を施すための通い塾として有名になってしまい。通いたい生徒が国の半分にも上る勢いにまでなってしまった。
こうなった理由は、レスティーナがある貴族に初のお茶会に出席したことに始まった。皆、生まれながらの王子の婚約者に興味津々だったのだ。
呼ばれたレスティーナの作法があまりにも洗練されていて、とても6歳の子供の者とは到底思えないようなことまで知っている。
ある伯爵夫人がレスティーナの母アマンダに問うと、レスティーナが『ローズ・ザ・エデン』にマナーを学びに通っていると聞きつけ、そこから噂が噂を呼び、社交界きっての高位貴族の老貴婦人が自ら若き令嬢を教えているとなって、我先にと問い合わせが殺到した。
いくら暇だといっても何人でも教えられるものではないし、基本も知らない子供の相手などできない老夫人達はある条件を付けた。
ここに通えるのは高位貴族の5歳以上の令嬢で、基本のマナーを終えた者が対象とし、その上で入塾するための小試験を突破した者だけを通わせるというものだった。
後日談として、ここに通える事が王都に住む令嬢たちのステイタスになっていき、そこを出た者はカリスマの様な扱いを受ける様になっていくことになり、最初の令嬢達……レスティーナ達の事を『ローズメイデン』と呼ぶようになる。
その噂はアマンダの両親マルロー前伯爵夫妻の耳にも届いた。
アマンダの両親はとても礼儀に厳しい人達で、その厳しい教育からの現実逃避があの愛読書なのだ。ある意味アマンダのお花畑思考は両親の厳しい教育の賜物なのかもしれない。
マリアンヌの5才の誕生日にアマンダの所にマルロー前伯爵夫妻が公爵家にやってきた。アマンダは意気揚揚と両親にマリアンヌを紹介したのだが、伝え聞いていた公爵家の令嬢とは全く違っていた。
しかもその礼儀作法は、下級貴族の令嬢とほぼ変わらず、上流階級の平民よりはましといった程度だった。マルロー前伯爵は、近くにいたレスティーナを見て納得がいった。
噂の公爵令嬢はレスティーナの事で、マリアンヌの事ではない事にがっかりした両親を悦ばせようとマリアンヌに練習した通りの挨拶をさせると、
「ねえ、お母様ご褒美ちょうだい!嫌いな勉強を頑張ったんだから…」
そうマルロー前伯爵の前で暴露したのだ。折角の誕生日もマリアンヌの余計なひと言で台無しになってしまい。アマンダは両親から公爵令嬢としての教育をやり直す様に叱責されたのだった。
マルロー前伯爵夫妻に叱られ項垂れている母親をぽかーんとした顔で見ているマリアンヌ。
その様子を見てカインデルは口元を綻ばせていた。
だが、その横で母アマンダから謂れのない叱責を受けるのではと青い顔をしたレスティーナも肩に手を置いて、
「そろそろ、別邸に帰ろうか?」
カインデルは優しく声をかけて、母アマンダの理不尽な怒りの矛先から逃れさせたのだった。
カインデルとレスティーナがいなくなった部屋にはアマンダの癇癪が盛大に爆発したと、後から侍従のクリスからカインデルは聞くことになる。
どうせ父上が上手く宥めるだろう。
そう思って、静かに自室の扉を閉めた。もうすぐ運命のお茶会がやってくることにカインデルは唇を噛み締めながら呟いた。
「俺を選んでよ。レスティーナ……」
暗い部屋の中でカインデルの小さな声は闇の中に消えていった。
その数日後、王都ではマリアンヌの勉強に差し障りがあるとして、父と共にアマンダとマリアンヌは領地に向かうことになった。
こうして、カインデルとレスティーナは王都の邸宅に残されたのだった。
この『ローズ・ザ・エデン』は元々、旧大公家が所有していた王都外れにある建物で、今は隠居して寡婦となった老婦人達のシェアハウス化している。
まあ、有閑マダムの溜まり場といった方が正しいだろうか?
国中の最新の話題や隣国の流行まで、どういった経緯で入手するのかというぐらい最新の情報を独自で持っている。
そんな所へレスティーナの様な少女が通う事になると、同居している貴婦人方は大騒ぎだ。
最初は物珍しさからだったようだが、次第にイレーネやソニアの『うちの孫娘が……』的な自慢話になっていくとそこは元は社交界を取り仕切っていたといっても過言でない高位貴族の有閑マダムだ。無駄で妙な闘争心をむき出しにした挙句、自分達も孫自慢がしたいと、領地で教育を受けていた令嬢を呼び寄せたり、孫息子しかいない夫人は娘を作れとまで催促する始末。
挙句にその噂が尾ひれはひれが付いて行き、『ローズ・ザ・エデン』は就学前の淑女教育を施すための通い塾として有名になってしまい。通いたい生徒が国の半分にも上る勢いにまでなってしまった。
こうなった理由は、レスティーナがある貴族に初のお茶会に出席したことに始まった。皆、生まれながらの王子の婚約者に興味津々だったのだ。
呼ばれたレスティーナの作法があまりにも洗練されていて、とても6歳の子供の者とは到底思えないようなことまで知っている。
ある伯爵夫人がレスティーナの母アマンダに問うと、レスティーナが『ローズ・ザ・エデン』にマナーを学びに通っていると聞きつけ、そこから噂が噂を呼び、社交界きっての高位貴族の老貴婦人が自ら若き令嬢を教えているとなって、我先にと問い合わせが殺到した。
いくら暇だといっても何人でも教えられるものではないし、基本も知らない子供の相手などできない老夫人達はある条件を付けた。
ここに通えるのは高位貴族の5歳以上の令嬢で、基本のマナーを終えた者が対象とし、その上で入塾するための小試験を突破した者だけを通わせるというものだった。
後日談として、ここに通える事が王都に住む令嬢たちのステイタスになっていき、そこを出た者はカリスマの様な扱いを受ける様になっていくことになり、最初の令嬢達……レスティーナ達の事を『ローズメイデン』と呼ぶようになる。
その噂はアマンダの両親マルロー前伯爵夫妻の耳にも届いた。
アマンダの両親はとても礼儀に厳しい人達で、その厳しい教育からの現実逃避があの愛読書なのだ。ある意味アマンダのお花畑思考は両親の厳しい教育の賜物なのかもしれない。
マリアンヌの5才の誕生日にアマンダの所にマルロー前伯爵夫妻が公爵家にやってきた。アマンダは意気揚揚と両親にマリアンヌを紹介したのだが、伝え聞いていた公爵家の令嬢とは全く違っていた。
しかもその礼儀作法は、下級貴族の令嬢とほぼ変わらず、上流階級の平民よりはましといった程度だった。マルロー前伯爵は、近くにいたレスティーナを見て納得がいった。
噂の公爵令嬢はレスティーナの事で、マリアンヌの事ではない事にがっかりした両親を悦ばせようとマリアンヌに練習した通りの挨拶をさせると、
「ねえ、お母様ご褒美ちょうだい!嫌いな勉強を頑張ったんだから…」
そうマルロー前伯爵の前で暴露したのだ。折角の誕生日もマリアンヌの余計なひと言で台無しになってしまい。アマンダは両親から公爵令嬢としての教育をやり直す様に叱責されたのだった。
マルロー前伯爵夫妻に叱られ項垂れている母親をぽかーんとした顔で見ているマリアンヌ。
その様子を見てカインデルは口元を綻ばせていた。
だが、その横で母アマンダから謂れのない叱責を受けるのではと青い顔をしたレスティーナも肩に手を置いて、
「そろそろ、別邸に帰ろうか?」
カインデルは優しく声をかけて、母アマンダの理不尽な怒りの矛先から逃れさせたのだった。
カインデルとレスティーナがいなくなった部屋にはアマンダの癇癪が盛大に爆発したと、後から侍従のクリスからカインデルは聞くことになる。
どうせ父上が上手く宥めるだろう。
そう思って、静かに自室の扉を閉めた。もうすぐ運命のお茶会がやってくることにカインデルは唇を噛み締めながら呟いた。
「俺を選んでよ。レスティーナ……」
暗い部屋の中でカインデルの小さな声は闇の中に消えていった。
その数日後、王都ではマリアンヌの勉強に差し障りがあるとして、父と共にアマンダとマリアンヌは領地に向かうことになった。
こうして、カインデルとレスティーナは王都の邸宅に残されたのだった。
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