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閑話 巻き戻し前の密談
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王城の一室で二人の青年が溜め息をついている。
「はあ─っ、また兄上は時間を巻き戻すつもりなのかな?」
「まあ、そうなるだろうな」
「兄上は平気なの?こんなに何回も同じ時を過ごさなくていけないのに……僕は嫌だな─…。一体いつになったらリーゼロッタと結婚できるのさ」
「それを言うなら俺は子供に会いたい…」
「そうだよね。義姉上のお腹の子供が生まれてきたことがないもんね」
「ああ、いつも生まれる前に時を戻されるからな」
「よく落ちついて居られるね。僕はもう我慢の限界だよ!大体女神の石版は、緊急時の時、王国が取り返しがつかない事態に陥った時にしか使っちゃいけないのに、こんな私的なことで使っているのはいいの?」
「よくないだろう。心配しなくてもその次はない…」
「はははっ、断言できるってことは、その兄上の眼には未来が見えているんだよね。僕と違って兄上はその眼のおかげでやり直しの記憶を持っている。僕はいつも時間が撒き戻る時に思い出すんだ。それはきっとあの兄上も一緒なんだろう。だから女神の石版に触れて何度も時間を戻すんだから……呪われているのにさ」
「本人は知らない。最初の時にした行いで女神クレマンテの怒りに触れた事を分かっていない。いや分かっているのかもしれないが、理解しない様にしているんだろう」
「ほんと─っっ、迷惑な話……いい加減に認めたらいいのに、レスティーナとの縁の糸はとっくの昔に切れているんだ。どんなにクロイツェル兄上が足掻こうと元には戻らない。自分が選んだ偽りの愛にしがみ付けばいいんだ」
「その愛が作られたものだから認めるのが怖いんだろう…。自分で全てを壊した事実を受け入れられないのだ」
「もう、どうしてカインデル兄上はいつも落ち着いて居られるの?レスティーナを最初の時みたいに失ったらどうするつもりなの?」
「心配してくれるのか?アーロン。そうならない様にいつも平静を装って我慢しているんだ。出ないと壊しそうだから…」
アーロンは目の前のカインデルの左眼がエメラルドの瞳が鋭く光ったような気がして、ゾッとした。
この一番上の兄は、何時も何時も王城から出されて、サトラー公爵家で秘密裏に育てられる。
表舞台に立てない兄の心中は表面の穏やかさと違ってきっと嵐が吹き荒んでいるのだろう。
部屋の外には、アーロンの婚約者リーゼロッタとレスティーナが仲良く、楽しそうにお茶を飲んでいる。きっとこれからのお互いの未来について話しているのだろう。
まだ来ないその先の未来を夢見て……。
カインデルとアーロンは「そろそろ時間だ」と言わんとばかりに部屋から出て行った。
彼らの向かう先にはそれぞれの愛しい者達が微笑みながら手招きをしているのだった。
カインデルは見ている。
近い未来、あの石版が壊れて行く様を……。
もう少しだ…もう少しで全てが終わる。
今度で最後なのだ。
もうじき女神の最後の審判が下るだろう。
その時になれば自分の愚かさにやっと気付くのかもしれないな。クロイツェル……。
すぐ下の弟の名を心の中で呟きながら、カインデルはレスティーナの元へ早歩きで向かうのだった。
そうして、その夜にまた時間が撒き戻る光が皆を包み込んでいった。
──これで最後……。
カインデルの耳に誰かの囁きが聞こえたような気がした。
それは弟の声なのか…。
それとも他の誰か…女神の声なのかもしれない。確かめる術もないカインデルは、その光に身を任せていった。
「はあ─っ、また兄上は時間を巻き戻すつもりなのかな?」
「まあ、そうなるだろうな」
「兄上は平気なの?こんなに何回も同じ時を過ごさなくていけないのに……僕は嫌だな─…。一体いつになったらリーゼロッタと結婚できるのさ」
「それを言うなら俺は子供に会いたい…」
「そうだよね。義姉上のお腹の子供が生まれてきたことがないもんね」
「ああ、いつも生まれる前に時を戻されるからな」
「よく落ちついて居られるね。僕はもう我慢の限界だよ!大体女神の石版は、緊急時の時、王国が取り返しがつかない事態に陥った時にしか使っちゃいけないのに、こんな私的なことで使っているのはいいの?」
「よくないだろう。心配しなくてもその次はない…」
「はははっ、断言できるってことは、その兄上の眼には未来が見えているんだよね。僕と違って兄上はその眼のおかげでやり直しの記憶を持っている。僕はいつも時間が撒き戻る時に思い出すんだ。それはきっとあの兄上も一緒なんだろう。だから女神の石版に触れて何度も時間を戻すんだから……呪われているのにさ」
「本人は知らない。最初の時にした行いで女神クレマンテの怒りに触れた事を分かっていない。いや分かっているのかもしれないが、理解しない様にしているんだろう」
「ほんと─っっ、迷惑な話……いい加減に認めたらいいのに、レスティーナとの縁の糸はとっくの昔に切れているんだ。どんなにクロイツェル兄上が足掻こうと元には戻らない。自分が選んだ偽りの愛にしがみ付けばいいんだ」
「その愛が作られたものだから認めるのが怖いんだろう…。自分で全てを壊した事実を受け入れられないのだ」
「もう、どうしてカインデル兄上はいつも落ち着いて居られるの?レスティーナを最初の時みたいに失ったらどうするつもりなの?」
「心配してくれるのか?アーロン。そうならない様にいつも平静を装って我慢しているんだ。出ないと壊しそうだから…」
アーロンは目の前のカインデルの左眼がエメラルドの瞳が鋭く光ったような気がして、ゾッとした。
この一番上の兄は、何時も何時も王城から出されて、サトラー公爵家で秘密裏に育てられる。
表舞台に立てない兄の心中は表面の穏やかさと違ってきっと嵐が吹き荒んでいるのだろう。
部屋の外には、アーロンの婚約者リーゼロッタとレスティーナが仲良く、楽しそうにお茶を飲んでいる。きっとこれからのお互いの未来について話しているのだろう。
まだ来ないその先の未来を夢見て……。
カインデルとアーロンは「そろそろ時間だ」と言わんとばかりに部屋から出て行った。
彼らの向かう先にはそれぞれの愛しい者達が微笑みながら手招きをしているのだった。
カインデルは見ている。
近い未来、あの石版が壊れて行く様を……。
もう少しだ…もう少しで全てが終わる。
今度で最後なのだ。
もうじき女神の最後の審判が下るだろう。
その時になれば自分の愚かさにやっと気付くのかもしれないな。クロイツェル……。
すぐ下の弟の名を心の中で呟きながら、カインデルはレスティーナの元へ早歩きで向かうのだった。
そうして、その夜にまた時間が撒き戻る光が皆を包み込んでいった。
──これで最後……。
カインデルの耳に誰かの囁きが聞こえたような気がした。
それは弟の声なのか…。
それとも他の誰か…女神の声なのかもしれない。確かめる術もないカインデルは、その光に身を任せていった。
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