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猛獣に気を付けて!
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今、わたしは混乱している???
目の前に枕持参で別館に来ている夫レイモンドを見て再び、頭を捻っている。
それは、数刻前…。
この間の話し合いでわたしは別館へ、かわりにシュゼットが本館に移り住む事になったのだが、牢獄に入れられた所為で、中断したお店に飾る巨大なテディベアの創作を再び開始した。
体に細かなビーズを付けて、あとは目に大き目の赤いビーズを取り付ければ完成なのだが、そこでわたしはビーズを転がしてしまった。
大きいビーズなので、直ぐに探せると高を括っていたのが甘かった。コロコロと部屋にある机の下まで転がっていた。何とか手を届かせてビーズを取ろうとしたら、側に紙切れが落ちているのを発見した。
よく見ると、紙切れには、日時と場所が書いてある。
何か予定があった様な気がするが、どうにも思い出せない。
これが、ビーズ制作の予定や今日の晩御飯のメニューならすんなり思い出せるのにとじれったく思っていたら、専属侍女が呟いた。
「その日って、公爵閣下の将軍就任式典ではなかったですかね」
「そう言えば…そんな事言ってたかも…」
わたしは、自分に関係がないやとばかりに記憶の彼方に葬り去っていた。
そんなわたしを専属侍女に昇格したアリスは、
「いくら、関心がないと言ってもそこは覚えておくところでしょう。奥様…夫に関心が無さすぎます」
といつものように叱られた。
仕方がないのよね。放置された時間が2年にも及ぶから、その間、レイモンドの情報はシュゼットを仲良くしてたというものばかり。
あまりに頻度が多いから、聞かない様にして、出来るだけ気にかけない様にした。その結果が今のわたし…。
レイモンドへの関心が薄れ過ぎて、夫と云うより同居人に近い感情しかない。
まあ、とりあえず、元シュゼットの部屋で見つかったものだから、持ち主は彼女だろう。なら、これは何かの手がかりになるかもしれないとレイモンドに連絡をとろうと考えたのだが……。
どうすればいいのかな?
アリスに渡して貰うのもダメな様な気がする。勿論、わたしが直接レイモンドに渡すのはもっとダメだろう。
ならば…。
「ロン、お使いを頼まれてくれない?」
「ガウッ?」
「これをレイモンドに届けて欲しいの」
「ガウッ、ガウッ」
ロンは頷くような仕種をした。
そして、私は猛獣を解き放った。
わたしがロンを放した瞬間、アリスは素早く何か「ピー―ッ、ピイイー――ッ」と笛を鳴らして合図した。別館にいる護衛達や使用人らが慌ただしく、長い棒を片手に持っている。その棒の先にはUの字型の金具が付いていて、まるで東洋の捕り物道具の様だった。
騎士達が持つと違和感が半端ない。
ロンは機嫌よく首輪に付けたレイモンド宛ての手紙を渡すべく本館に向かった。
何も起こらない様に、わたしはメイドに変身してこっそりと後を付けた。
そんなわたしを呆れて冷ややかな視線を浴びせるアリス。
主をなんていう目で見るんだよ。
文句を言いたいが、ありすに勝てる気がしない。毎回、言い負かされるのはわたしなのだから…。
主を主と思ってなさそうなアリスの事はさておき、わたしはまるで泥棒のようにこそこそとロンの後を付けている。
途中、わたしを見て使用人達が慌ててお辞儀するのを何度も止めた。
解せない?なんでわたしがサブリナだとわかるのかしら?完璧に変身しているはずなのに…?
納得がいかないが、今はロンを追う事の方が先決だ。
ロンは途中、使用人らを怯えさせながら、軽快に本館に辿り着いた。
そこで、最大の難関?シュゼットに出くわしたのだ。
シュゼットは、ロンの首輪に括りつけた紙を見つけて奪おうと、ロンに手を出した。
ロンは遊んでくれているのだと勘違いした様で、最大級の好意?ハグしとうとシュゼットに飛びかかった。
そして当然のようにシュゼットは気絶したが……???
これは何事??
わたしとその場にいる使用人らも神妙な面持ちで謎の物体Xを見つめている。
これが本当にシュゼットなのかと、初めて間近に見た謎の物体Xをまじまじと見ていると、騒ぎを聞き付けたレイモンドが駆け付けた。
「こ…これって本当にシュゼットなのか?」
何故疑問形でわたしに問い掛けて来るんだ?そこはレイモンドの方がよーーく知っている筈だが。
「それを、わたしに聞くの?」
その言葉を聞いて、レイモンドは項垂れた。
シュゼットらしきものは、髪は乱れてひっくり返った拍子にスカートがまくれて、中からトランクスのような下着がちらりと見えている。
よーく見ると顔には髭を剃ったような痕跡が…それを化粧で誤魔化しているようだが…至近距離で見ればバレるだろう。
何より…大きく開いた襟元からパットのような上げ胸用のものがポロリと床に落ちていた。
誰が見ても女性ではない…。
この謎の物体Xと皆に認識されたシュゼットは、その後医師の診断で「男」だと判明した。男の部分はついていたらしい。
確認したんだ…。
その医師の勇気に感謝しつつも、隣で何度もキラキラしたものを吐きにトイレに通うレイモンドを見て、
「やっぱりレイモンドは殿下と同じなんだなあ」
と呟いた。
そう、レイモンドも殿下も仲良しトイレ組になったのだ。
その後吐き収まったのか、げっそりしたレイモンドが深夜にわたしの別館を訪れて、「襲われそうで怖いから、ここで寝させてほしい」と枕持参でやって来ているのだ。
目の前に枕持参で別館に来ている夫レイモンドを見て再び、頭を捻っている。
それは、数刻前…。
この間の話し合いでわたしは別館へ、かわりにシュゼットが本館に移り住む事になったのだが、牢獄に入れられた所為で、中断したお店に飾る巨大なテディベアの創作を再び開始した。
体に細かなビーズを付けて、あとは目に大き目の赤いビーズを取り付ければ完成なのだが、そこでわたしはビーズを転がしてしまった。
大きいビーズなので、直ぐに探せると高を括っていたのが甘かった。コロコロと部屋にある机の下まで転がっていた。何とか手を届かせてビーズを取ろうとしたら、側に紙切れが落ちているのを発見した。
よく見ると、紙切れには、日時と場所が書いてある。
何か予定があった様な気がするが、どうにも思い出せない。
これが、ビーズ制作の予定や今日の晩御飯のメニューならすんなり思い出せるのにとじれったく思っていたら、専属侍女が呟いた。
「その日って、公爵閣下の将軍就任式典ではなかったですかね」
「そう言えば…そんな事言ってたかも…」
わたしは、自分に関係がないやとばかりに記憶の彼方に葬り去っていた。
そんなわたしを専属侍女に昇格したアリスは、
「いくら、関心がないと言ってもそこは覚えておくところでしょう。奥様…夫に関心が無さすぎます」
といつものように叱られた。
仕方がないのよね。放置された時間が2年にも及ぶから、その間、レイモンドの情報はシュゼットを仲良くしてたというものばかり。
あまりに頻度が多いから、聞かない様にして、出来るだけ気にかけない様にした。その結果が今のわたし…。
レイモンドへの関心が薄れ過ぎて、夫と云うより同居人に近い感情しかない。
まあ、とりあえず、元シュゼットの部屋で見つかったものだから、持ち主は彼女だろう。なら、これは何かの手がかりになるかもしれないとレイモンドに連絡をとろうと考えたのだが……。
どうすればいいのかな?
アリスに渡して貰うのもダメな様な気がする。勿論、わたしが直接レイモンドに渡すのはもっとダメだろう。
ならば…。
「ロン、お使いを頼まれてくれない?」
「ガウッ?」
「これをレイモンドに届けて欲しいの」
「ガウッ、ガウッ」
ロンは頷くような仕種をした。
そして、私は猛獣を解き放った。
わたしがロンを放した瞬間、アリスは素早く何か「ピー―ッ、ピイイー――ッ」と笛を鳴らして合図した。別館にいる護衛達や使用人らが慌ただしく、長い棒を片手に持っている。その棒の先にはUの字型の金具が付いていて、まるで東洋の捕り物道具の様だった。
騎士達が持つと違和感が半端ない。
ロンは機嫌よく首輪に付けたレイモンド宛ての手紙を渡すべく本館に向かった。
何も起こらない様に、わたしはメイドに変身してこっそりと後を付けた。
そんなわたしを呆れて冷ややかな視線を浴びせるアリス。
主をなんていう目で見るんだよ。
文句を言いたいが、ありすに勝てる気がしない。毎回、言い負かされるのはわたしなのだから…。
主を主と思ってなさそうなアリスの事はさておき、わたしはまるで泥棒のようにこそこそとロンの後を付けている。
途中、わたしを見て使用人達が慌ててお辞儀するのを何度も止めた。
解せない?なんでわたしがサブリナだとわかるのかしら?完璧に変身しているはずなのに…?
納得がいかないが、今はロンを追う事の方が先決だ。
ロンは途中、使用人らを怯えさせながら、軽快に本館に辿り着いた。
そこで、最大の難関?シュゼットに出くわしたのだ。
シュゼットは、ロンの首輪に括りつけた紙を見つけて奪おうと、ロンに手を出した。
ロンは遊んでくれているのだと勘違いした様で、最大級の好意?ハグしとうとシュゼットに飛びかかった。
そして当然のようにシュゼットは気絶したが……???
これは何事??
わたしとその場にいる使用人らも神妙な面持ちで謎の物体Xを見つめている。
これが本当にシュゼットなのかと、初めて間近に見た謎の物体Xをまじまじと見ていると、騒ぎを聞き付けたレイモンドが駆け付けた。
「こ…これって本当にシュゼットなのか?」
何故疑問形でわたしに問い掛けて来るんだ?そこはレイモンドの方がよーーく知っている筈だが。
「それを、わたしに聞くの?」
その言葉を聞いて、レイモンドは項垂れた。
シュゼットらしきものは、髪は乱れてひっくり返った拍子にスカートがまくれて、中からトランクスのような下着がちらりと見えている。
よーく見ると顔には髭を剃ったような痕跡が…それを化粧で誤魔化しているようだが…至近距離で見ればバレるだろう。
何より…大きく開いた襟元からパットのような上げ胸用のものがポロリと床に落ちていた。
誰が見ても女性ではない…。
この謎の物体Xと皆に認識されたシュゼットは、その後医師の診断で「男」だと判明した。男の部分はついていたらしい。
確認したんだ…。
その医師の勇気に感謝しつつも、隣で何度もキラキラしたものを吐きにトイレに通うレイモンドを見て、
「やっぱりレイモンドは殿下と同じなんだなあ」
と呟いた。
そう、レイモンドも殿下も仲良しトイレ組になったのだ。
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