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本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして
私と貴女は他人です!
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応接間に何だか大所帯の人数が入っている。
私の身体を心配したハルト様は、常に護衛や侍女たちを配置している。その数がざっと20人ぐらいはいるのではないだろうか?
普段は侍女が3人で護衛が3人ぐらいなんだけれど、何故か懐妊してから護衛と侍女の数が倍増したのだ。その殆どが自身で立候補したらしい。
理由はよくわからないが、私がどこに行くにも彼らは付いてくる。王族でもないのにこの数、しかも今はハルト様の護衛なども合わせると総勢30名以上の人間がこの部屋に集まっている。入りきれない人は外で待機しているらしい。
プルプルと怒りに震えながらウルスラは、
「どうしてなんですか?私はれっきとした伯爵家の令嬢ですよ。そんな平民の血が流れている偽物とは違います。それにその女は学園にも通っていません。淑女教育も受けていません」
「おや?おかしいな。家庭教師から基礎は学んでいると報告がある。社交も必要ないから然程重要ではない。今のままでアシュリーは十分公爵夫人としてやっていける。君にとやかく言われる筋合いはない」
「私は納得いきません!私に来た縁談だったのに…お義姉様が横取りしたのよ」
「何を言っているのかな。僕はある人を通して最初からアシュリーが来ることを望んでいたんだよ。それに王命にもデニーロ伯爵家の長子と書かれている。つまり伯爵は勘違いして君に話があったと思っただけで、実際はアシュリーの事を指しているんだ」
「そんな…嘘よ。私の方がお義姉より優れているわ……」
ウルスラは納得がいかず一人でぶつぶつ呟いていた。
「はあ~、君たちが来た所為で僕と妻との大切な時間が減ってしまった。さあ、アシュリーサロンにいってお茶でも楽しもうか」
ハルト様は私を連れて部屋から出ようとした時にウルスラが、
「あんたなんか生まれてこなければよかったのよ」
そう叫んで、私を突き飛ばした。倒れると思ったら、
パフン、パフン、パフン……。
柔らかい感触が背中にあたっている。よく見ると辺り一面にクッションが敷かれていた。
こんなに多くのクッション…一体どうしたのかしら。
侍女や護衛騎士がドヤ顔でハルト様を見ている。ハルト様は「素晴らしい働きだ。後で特別報酬を渡す」と彼らに向かって言っている。
「よっしゃあーっ、クッション隊に志願して良かったぜ!!」
「嬉しい。特別報酬よ。何に使おうかしら」
侍女や騎士たちがざわめきながら、口々に報酬を喜んでいた。
でも、クッション隊って何?
「奥様の為に公爵閣下が『クッション隊』を結成され、いかなる時もお守りする為にクッションを持ち歩いているのです」
「クッションをですか…」
「そうです。彼らを見て下さい。奥様の為に自ら作成したクッションもありますよ。奥様は人気者ですね」
とルファスさんが言うと、アデイラ様やウルスラは呆気にとられていた。
「僕の奥さんを傷つけようとした罪は重いよ。その身で償ってもらおうか」
ハルト様は射る様な視線を向けながら、今まで聞いたことのないような低い声で言った。
ウルスラは、私に助けを求めて、
「お義姉様を傷つけるつもりはなかったのよ。誤解です」
「そうかな。君はアシュリーを押したよね。懐妊しているのに。そんな事をしたらどうなるか子供にだって分かることだよ。それなのに悪意がないって言うのかな」
「ち…違います。そんなつもりはなくて…」
「ここにいる全員が君が今したことを見ている」
「お義姉様、ごめんなさい。あたっただけよ。突き飛ばすつもりなんてなかったわ。だから、家族でしょう。殿下に取り成して下さい」
ウルスラは目に涙をためて、私に縋ってきました。
家族…、私の家族は母とニックだけだった。今はハルト様がいる。でもデニーロ伯爵の伯爵夫人もウルスラも殆ど会ったことも無い人たち。
私達母娘を屋根裏部屋に閉じ込めて、知らぬ顔をしていた人たち、そんな人たちを家族と呼べるのだろうか。それに…私が伯爵家を出るときに、彼らは言ったわ。
「ねえ、デニーロ伯爵令嬢。貴方達は言ったわよね。嫁いだら二度とデニーロ伯爵家に関わるな。お前と私達は他人だと、だから、私と伯爵令嬢も他人です」
私はウルスラに向かって満面の笑みを見せたのだった。
でも、何故か隣のハルト様とルファスさんや侍女・護衛騎士達まで、肩を震わせて笑うのを我慢している。
えっ?違うの?だって向こうがそういったのだから、他人なんでしょう?
私は何がおかしいのか分からず、きょとんとしているとハルト様に「可愛いアシュリー最高だ!」と抱きつかれた。
私の身体を心配したハルト様は、常に護衛や侍女たちを配置している。その数がざっと20人ぐらいはいるのではないだろうか?
普段は侍女が3人で護衛が3人ぐらいなんだけれど、何故か懐妊してから護衛と侍女の数が倍増したのだ。その殆どが自身で立候補したらしい。
理由はよくわからないが、私がどこに行くにも彼らは付いてくる。王族でもないのにこの数、しかも今はハルト様の護衛なども合わせると総勢30名以上の人間がこの部屋に集まっている。入りきれない人は外で待機しているらしい。
プルプルと怒りに震えながらウルスラは、
「どうしてなんですか?私はれっきとした伯爵家の令嬢ですよ。そんな平民の血が流れている偽物とは違います。それにその女は学園にも通っていません。淑女教育も受けていません」
「おや?おかしいな。家庭教師から基礎は学んでいると報告がある。社交も必要ないから然程重要ではない。今のままでアシュリーは十分公爵夫人としてやっていける。君にとやかく言われる筋合いはない」
「私は納得いきません!私に来た縁談だったのに…お義姉様が横取りしたのよ」
「何を言っているのかな。僕はある人を通して最初からアシュリーが来ることを望んでいたんだよ。それに王命にもデニーロ伯爵家の長子と書かれている。つまり伯爵は勘違いして君に話があったと思っただけで、実際はアシュリーの事を指しているんだ」
「そんな…嘘よ。私の方がお義姉より優れているわ……」
ウルスラは納得がいかず一人でぶつぶつ呟いていた。
「はあ~、君たちが来た所為で僕と妻との大切な時間が減ってしまった。さあ、アシュリーサロンにいってお茶でも楽しもうか」
ハルト様は私を連れて部屋から出ようとした時にウルスラが、
「あんたなんか生まれてこなければよかったのよ」
そう叫んで、私を突き飛ばした。倒れると思ったら、
パフン、パフン、パフン……。
柔らかい感触が背中にあたっている。よく見ると辺り一面にクッションが敷かれていた。
こんなに多くのクッション…一体どうしたのかしら。
侍女や護衛騎士がドヤ顔でハルト様を見ている。ハルト様は「素晴らしい働きだ。後で特別報酬を渡す」と彼らに向かって言っている。
「よっしゃあーっ、クッション隊に志願して良かったぜ!!」
「嬉しい。特別報酬よ。何に使おうかしら」
侍女や騎士たちがざわめきながら、口々に報酬を喜んでいた。
でも、クッション隊って何?
「奥様の為に公爵閣下が『クッション隊』を結成され、いかなる時もお守りする為にクッションを持ち歩いているのです」
「クッションをですか…」
「そうです。彼らを見て下さい。奥様の為に自ら作成したクッションもありますよ。奥様は人気者ですね」
とルファスさんが言うと、アデイラ様やウルスラは呆気にとられていた。
「僕の奥さんを傷つけようとした罪は重いよ。その身で償ってもらおうか」
ハルト様は射る様な視線を向けながら、今まで聞いたことのないような低い声で言った。
ウルスラは、私に助けを求めて、
「お義姉様を傷つけるつもりはなかったのよ。誤解です」
「そうかな。君はアシュリーを押したよね。懐妊しているのに。そんな事をしたらどうなるか子供にだって分かることだよ。それなのに悪意がないって言うのかな」
「ち…違います。そんなつもりはなくて…」
「ここにいる全員が君が今したことを見ている」
「お義姉様、ごめんなさい。あたっただけよ。突き飛ばすつもりなんてなかったわ。だから、家族でしょう。殿下に取り成して下さい」
ウルスラは目に涙をためて、私に縋ってきました。
家族…、私の家族は母とニックだけだった。今はハルト様がいる。でもデニーロ伯爵の伯爵夫人もウルスラも殆ど会ったことも無い人たち。
私達母娘を屋根裏部屋に閉じ込めて、知らぬ顔をしていた人たち、そんな人たちを家族と呼べるのだろうか。それに…私が伯爵家を出るときに、彼らは言ったわ。
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でも、何故か隣のハルト様とルファスさんや侍女・護衛騎士達まで、肩を震わせて笑うのを我慢している。
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