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本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして
夜会の後始末~ラインハルト②~
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僕は次の部屋に向かったそこにいるのは勿論デニーロ伯爵夫妻だった。
彼らの罪は重い。
僕のアシュリーを蔑にした事だけでも赦せない。
しかもそれだけでは無かった。
僕に毒を盛るようにメイナード侯爵から指示を出されて、彼らはそれに従った。
母上の侍女を使って…。
僕の身代わりに母上が死んだ時、いつかこの報復をするのだと心に誓ったのだ。
今、ようやくそれが叶う時が来た。
歓喜で心が震えている。
これで、母上も安心して天国で暮らせるだろう。
「やあ、牢屋での一夜は快適だったかな」
「殿下、我々が何をしたと言うのです」
「そうですわ。わたくしたちは何もしていません。濡れ衣です」
昨夜、夜会での騒動でまだ御託を並べて白を切ろうとする根性は認めてやろう。だが、証拠は十分に揃っている。
メイナード侯爵に唆されて、側妃イランジェに愛妾アグネスの居場所を教えた。
王宮の奥深くに隠された国王の愛妾。彼女の居場所を教えれば側妃がどういう行動に移るかは誰にでも簡単に予測がついた。
だが、その凶行に巻き込まれてアシュリーは難産になったのだ。おかげで僕は危うく大切な妻を亡くすところだった。決して赦せるものではない。
「御託はいい。お前たちが行なった愚かな所業のせいで僕のアシュリーが何度も危ない目に遭ってきた。その罪を償う時が来たのだ。お前たちはこれから秘密裏に絞首刑に処せられる」
「こ…絞首刑。それはあまりにも重い罰ではないですか。仮にも私は殿下の奥方の父親ですぞ!」
「ふははは──っ!!何を言い出すのかと思えば、戯言もいい加減にしろ。昨夜も大勢の貴族の前で伝えたが、アシュリーの母親はサザーランドのペティール侯爵の縁者だ。既にデニーロ伯爵家の戸籍から抹消されているし、新しい義父はペティール侯爵だ。貴様の出る幕はないのだよ」
「くっ……」
苦虫を噛むような表情を浮かべながら、ぎりぎりと歯ぎしりしていた。
「まあ、貴様らに復讐したくて僕は機会を待っていた。その甲斐があったよ。かつて僕に毒を飲まそうとして代わりに母が生贄になってしまったからね。あの侍女は確か伯爵のお手付きだったよね。男爵家の令嬢が行儀見習いで王宮に上がることはよくあることだ。何れ妻にすると言って唆したんだよね。利用されているとも知らないで、言われた通りに僕のスープに細工した。でもその日僕は体調が悪くて、母のスープと交換してしまった。焦った侍女の取った行動で明るみになったが、黒幕までは突き止められなかった。おかげで全ての罪を背負って男爵家は人知れず断絶させられた。どう、これであっているかい?イランジェとメイナード侯爵が共謀した筋書きだったのだろう。侯爵家が持っている鉱山の利益の何割かを報酬にもらう為に手を貸したんだ」
「……」
伯爵の顔色はどんどん白くなっていく、逆に隣りの夫人の方は怒りで真っ赤に染まっていた。
「貴方、あの女とそんな約束をしていたの。貴方の為にどんなことでもやってきたわたくしを捨てるつもりだったんですか」
「ば…馬鹿をいうな。あれは遊びだったんだ。アシュリーの母親と同じだ」
「へえー、隣国の王族の血を引く侯爵家の令嬢を遊びで暴行したと、これは罪が増えたね」
僕はそう言って、牢番にある液体を持ってこさせた。
「これが何かわかるかい。これは少量の毒が入っている。しかも飲んでも死なない。ただ激痛が走るだけだ。痛みを通常の何倍にもしてくれるものだと聞いている。これを死ぬまでの間、飲ませ続けてあげるよ。楽に死なせるほど僕は親切ではないのでね。あの世で、死んだ侍女に謝るがいい」
僕はそう言って、彼らにその毒を飲ませた。彼らは狂ったようにもがき苦しみながらのた打ち回っている。
鉄格子の向こうで、「助けてくれーっ。悪かった」と叫んでいたが、僕は無視してささっとその場を後にした。
そして、最後の罪人の元に急いだのだ。
──ドナルド・メイナード侯爵。
かつての婚約者の父であり、僕の後ろだてになってくれた人でもあった。
情は既になく、あるのは憎悪に満ちた思いだけが僕を支配していた。
彼らの罪は重い。
僕のアシュリーを蔑にした事だけでも赦せない。
しかもそれだけでは無かった。
僕に毒を盛るようにメイナード侯爵から指示を出されて、彼らはそれに従った。
母上の侍女を使って…。
僕の身代わりに母上が死んだ時、いつかこの報復をするのだと心に誓ったのだ。
今、ようやくそれが叶う時が来た。
歓喜で心が震えている。
これで、母上も安心して天国で暮らせるだろう。
「やあ、牢屋での一夜は快適だったかな」
「殿下、我々が何をしたと言うのです」
「そうですわ。わたくしたちは何もしていません。濡れ衣です」
昨夜、夜会での騒動でまだ御託を並べて白を切ろうとする根性は認めてやろう。だが、証拠は十分に揃っている。
メイナード侯爵に唆されて、側妃イランジェに愛妾アグネスの居場所を教えた。
王宮の奥深くに隠された国王の愛妾。彼女の居場所を教えれば側妃がどういう行動に移るかは誰にでも簡単に予測がついた。
だが、その凶行に巻き込まれてアシュリーは難産になったのだ。おかげで僕は危うく大切な妻を亡くすところだった。決して赦せるものではない。
「御託はいい。お前たちが行なった愚かな所業のせいで僕のアシュリーが何度も危ない目に遭ってきた。その罪を償う時が来たのだ。お前たちはこれから秘密裏に絞首刑に処せられる」
「こ…絞首刑。それはあまりにも重い罰ではないですか。仮にも私は殿下の奥方の父親ですぞ!」
「ふははは──っ!!何を言い出すのかと思えば、戯言もいい加減にしろ。昨夜も大勢の貴族の前で伝えたが、アシュリーの母親はサザーランドのペティール侯爵の縁者だ。既にデニーロ伯爵家の戸籍から抹消されているし、新しい義父はペティール侯爵だ。貴様の出る幕はないのだよ」
「くっ……」
苦虫を噛むような表情を浮かべながら、ぎりぎりと歯ぎしりしていた。
「まあ、貴様らに復讐したくて僕は機会を待っていた。その甲斐があったよ。かつて僕に毒を飲まそうとして代わりに母が生贄になってしまったからね。あの侍女は確か伯爵のお手付きだったよね。男爵家の令嬢が行儀見習いで王宮に上がることはよくあることだ。何れ妻にすると言って唆したんだよね。利用されているとも知らないで、言われた通りに僕のスープに細工した。でもその日僕は体調が悪くて、母のスープと交換してしまった。焦った侍女の取った行動で明るみになったが、黒幕までは突き止められなかった。おかげで全ての罪を背負って男爵家は人知れず断絶させられた。どう、これであっているかい?イランジェとメイナード侯爵が共謀した筋書きだったのだろう。侯爵家が持っている鉱山の利益の何割かを報酬にもらう為に手を貸したんだ」
「……」
伯爵の顔色はどんどん白くなっていく、逆に隣りの夫人の方は怒りで真っ赤に染まっていた。
「貴方、あの女とそんな約束をしていたの。貴方の為にどんなことでもやってきたわたくしを捨てるつもりだったんですか」
「ば…馬鹿をいうな。あれは遊びだったんだ。アシュリーの母親と同じだ」
「へえー、隣国の王族の血を引く侯爵家の令嬢を遊びで暴行したと、これは罪が増えたね」
僕はそう言って、牢番にある液体を持ってこさせた。
「これが何かわかるかい。これは少量の毒が入っている。しかも飲んでも死なない。ただ激痛が走るだけだ。痛みを通常の何倍にもしてくれるものだと聞いている。これを死ぬまでの間、飲ませ続けてあげるよ。楽に死なせるほど僕は親切ではないのでね。あの世で、死んだ侍女に謝るがいい」
僕はそう言って、彼らにその毒を飲ませた。彼らは狂ったようにもがき苦しみながらのた打ち回っている。
鉄格子の向こうで、「助けてくれーっ。悪かった」と叫んでいたが、僕は無視してささっとその場を後にした。
そして、最後の罪人の元に急いだのだ。
──ドナルド・メイナード侯爵。
かつての婚約者の父であり、僕の後ろだてになってくれた人でもあった。
情は既になく、あるのは憎悪に満ちた思いだけが僕を支配していた。
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