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それぞれの目的 3
深緑の谷は謎が多い地域だが、距離自体はバスク地区から二日ほどで行ける距離だった。
道中、3人で深緑の谷の情報を整理した。
ラジオの実家ウェイズ家とリリアの実家アルバ家の間に挟まれる形で存在する地域だが、今は謎が多く、ほぼウェイズ家の領地として認識されている。
外交はなく、自給自足状態で土地を保っている。
貴族の称号を持っている人物が治めているが、その出身者が他領地にほぼ居ないことから人口もかなり少ないと予想される。
精霊との結びつきが強い地なので魔力も特殊で膨大な人物が多く、過去、政治や戦争などに利用しようと侵略対象になっていたと古い言い伝えもある。
「まさに謎のベールに包まれた地なのね。何でお母様がそのような地から嫁いできたのかも謎だけど…。」
「男女には色々あるからなあ。なあロイ。」
「何で俺に話を振るんだよ。変な目で見るなジジイ。」
「おっと、焚き火の薪がもう無いな。ふう。馬車も使えない道を使ったからもう体がガタガタだ。」
わざとらしくダンは腰をさする。
「くそ!ジジイ覚えてろよ。」と言いながらも薪を拾いに行ってくれたロイだった。
ロイを待っている間リリアはダンに話しかける。
「あのね、ダンさん。私バスク地区に来て知ったんだけど、この地で植物を育てる行為には色々意味があるってシスタージャスミンが言ってたの。
趣味や仕事のために育てる人もいるけど、もう一つは『弔い(とむらい)』を意味するって。
ダンさん、修道院であの庭をずっと手入れしていたのは亡くなった方達への祈りを込めていたんじゃ無いかって私、思ったの。」
「オレが植物育ててたって別におかしくねえだろ。変なこと想像するな。」
「だってダンさん、凄く優しい手つきでいたわりながら、植物と対話するみたいに草花を慈しんでいるから。
私が知っている人ね、亡くなった人のことを整理できずにずっとその人の遺品を手入れしているの。
いっつも語りかけてた。返事はないのにね。その姿とダンさんが一緒に見えるの。」
「お嬢ちゃんの大切な人か?」
「…。私がいた、別の世界の私のお母さん。
亡くなったお父さんのことずっと後悔してた。
もっと早く病気に気づくべきだったって。私はお父さんのことよく分からないけど、お母さん凄く寂しそうな時があったの。」皐月の母親のことを思い出して少し泣き出しそうになる。
「そうか…。」
二人でゆらゆらと燃える火を見ていた。
「オレはな、最低な仕事を生業としてきた。
暗殺ってのは要は人殺しだ。依頼されれば誰だって殺す。そうしねえとオレが食っていけねえからな。
女や子供をターゲットにした依頼は断ってきた。そうやって最低な奴の中でもマシだって言い訳にしていたんだよ。
でもな、結局オレが殺した男共にも家族や部下がいるんだ。殺されたやつは大体組織の大黒柱だったりするからな。
それが殺されたら下の奴らが不幸になるなんて、ちょっと考えりゃ分かることだ。
噂で聞こえるんだよ。頭をなくした組織が崩れてみんなとどめを刺されちまったとかな。」
「そうなのね…。もう仕事はしないの?マーガレットさんのこと何か決意があるようだけど。」
「あんな仕事もうやめだ。あの化け物マーガレットは最後の最後で決める。あの姉妹も見てられねえし。馬鹿二人だからな。」
「植物を育てていくのは亡くなった方のための行動?」
「こんなことしても何の罪滅ぼしにもなってねえよ。ただの自己満足だ。」
「この深緑の谷に来たのも、罪滅ぼし?」
「どうだかな。お嬢ちゃんに便乗して悪いが、こんな過去を持っていても見てみたかったのよ、亡き魂と近い存在と言われる精霊ってやつを。精霊に謝っても向こうは迷惑なだけだろうけどな。」自虐的にダンは笑う。
「お嬢ちゃんは、初めて会った時よりだいぶお嬢ちゃんらしくなったな。」
「私らしく?この肉体のこと?」
「中身もだ。でも、まだどこか迷っているな。さっき言ってた別の世界のお嬢ちゃんでないといけないのか?どうもまだババくさいところがあるぞ。」
「やっぱり、ダンさんは何でもお見通しなのね。
考えてみたら、今、心のバランスがおかしいの。
体は若いのに、心はこれ以上若くなっちゃダメな気がする、別世界の女性のままの方がいいのかしら…。分からないの。これ以上リリアに変化するのが怖い気がするの。」
「あの馬鹿王子、いや、ロイのことも関係あるんだろ?」
「そ、それは…。」
「見てりゃわかるよ。ロイのやつはお嬢ちゃんがずっと気になってたんだぞ。あんた鈍感だからな。」
「え?そうなの?
私、別世界で年はとっていたけど仕事一筋だったの。結婚の話もあったけど、ちゃんとしたデート一つしたことないわ。私がちょうど適齢期だったからプロポーズしてくれた男性はいたけど、結婚しても仕事を続けたいって言ったらあっさり振られちゃった。だからずっと独身。ロイみたいな素敵な男性が気に入ってくれるような女性じゃないのよ。それこそババくさいし。」リリアが苦笑する。
「まあババくさいは言い過ぎたが、不安だからそうなってんだろうよ。修道院の奴ら全員、あんたの全部が好きなんだよ。
あんたの過去や精神の年齢とか関係ない。あんたのその心意気に惚れてんだぞ。
もっと自信を持て。」
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