前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな？

エレノアって誰よ

誰かに呼ばれている。


救急隊の人かな？

無理だよ。


もう私死んでるから。

もう何もしなくても良いよ。

私が死んでも困る人そんなにいないし。






「…様」


うるさいなあ。



「…ア様！」



しつこいなあ。



「エレノア様！！」




「もう、うるさい。しつこい。死んでるんだから安らかに眠らせて。」



「エレノア様、やっと起きましたか。死人は喋りません。早く起きて支度をしてください。」


「はあ？エレノアって誰？」



「あなた様ですよ。ベネット家のご令嬢ベネット＝エレノア様です。」


「え？何言ってんの？べ、ベネット、エロなんとか？うっそだ～？私、佐多ルキアでしょ？」



「サタ？ルキア？それはどちら様でしょうか？もういい加減にしてください。今日は旦那様から大切なお話があるのですよ。現実逃避はやめて早く起きましょう。」



メイド服を着たまったく可愛くもないおばさんが私の背中を強引に起こす。



いくらコスプレでもおばさんがメイド服はだめでしょ。


けど、おばさんなのに安物のメイド服じゃない。


結構本格的な服みたいだから様になってるわ。


訳が分からない状態であたりをキョロキョロ見渡してみる。

おばさんのメイド服だけじゃなく、この部屋も本格的だ。


シャンデリアが天井にあって壁も重厚な絵で埋められている。


ここ、めちゃくちゃ高いホテルみたいな病院なのかな？


あのメイドさんは看護師さん？


「さあ、まずはお顔を洗いますよ。エレノア様、まつ毛が頬についております。先にとられては？」

メイドなのか看護師さんなのか不明なおばさんは、ため息を吐きながら私に手鏡を渡してくれた。


そうだ、事故の衝撃で傷跡とかあるかもしれない。見ておかなくちゃ。



鏡を覗くと、そこには全く知らない、こげ茶色の瞳で白人のような女の子が映っている。




「ん？」誰だこれ？


頬を触ると、感触がある。


鏡の中の少女も頬を触れている。



ベロを上に出してみる。

やっぱり鏡の中の少女も同じようにベロを上に出している。



豚鼻になるよう鼻を引き上げると、鏡の中の少女も…。


ならこれはどうだ！！キャバ嬢の待機中に私が女の子たちに披露した渾身の変顔だ！


ほとんどの子は色々整形しているから真似できないって観念した凄い技だぞ！




やっぱり鏡に映っている少女も同じ物凄い変顔になっていた。


「これ…。やっぱり私だ…。」



私の奇行を見ていたメイドのおばさんが真っ青な顔で心配していた。



「エレノア様がおかしくなられた…。よっぽどあの事がショックだったのね…。」となにやらつぶやいていた。