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それ相応の礼はある
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「ケイト、大丈夫なのか?」
隣のディルが心配そうに声をかける。
何だかそれだけでイラっとしてしまう…。
「御心配には及びません、手当は受けました。」
相手は真顔だ。
ディルに心配してもらって特に嬉しそうにする訳でもなかった。
けど、何か嫌なもんは嫌だ。
「私、ローゼ家長女ケイトリーン=ローゼと申します。
どうぞ、お見知りおきを。」
ああ、ケイトリーンだからケイトなのね。
とかいうどうでも良い事が頭に浮かんだ。
ケイトリーンはカーテシーではなく胸に手を当て男性のように礼をする。
えっと…これはどう反応すればいいのかしら。
ああ、足を負傷しているしカーテシーは難しいからかな。
とりあえず、格上の令嬢がこちらより先に挨拶してくれているのだ、貴族としてはすぐにあいさつをし返さなければならない。
「ご挨拶が申し遅れました、私ディランの妻ルキア=マックレーンでございます。
こちらこそ、どうぞお見知りおきを。」
私の方はしっかりとカーテシーで返しておく。
ってか…さっきからこの人ずっと私を睨んでくるんですけど…。
これ、絶対私の事嫌ってるよね。
じゃなきゃ初対面でこんなあからさまに睨まないでしょ。
やっぱりあれだな…。
ディルの妻ってのが気に食わないんだろうな。
こんな事もいつかは起こるって分かってた。
職場に女性が居るって普通の事なんだからこんなことでいちいちイライラしてたらダメだよね。
まあ、いいわ。
私はこの人とは今後会う事もないだろうし、向こうもここまで嫌ってたらどこかで会っても避けるでしょ。
「まあ、そう言う事でルキア殿、私の娘ケイトをしばらく君のもとで仕えさせてもらいたいんだ。
ディランからは君が良いのなら構わないと言ってもらったところだ。」
は?
はあ?
はああああ?
そこのおっさん、今なんつった!?
あの女を私のもとで何するって…?
横で突っ立っているディルをじろりと睨む。
「俺はどちらでも構わないんだ。
ルキアが決めてくれ。」
ちょっと何それ。
私に決めさせて自分は部外者って立場に逃げるって事?
てか、この女は何考えてんの?
何で嫌いな私と一緒に過ごす事に拒否しないのよ。
あんた、自分の父親止めなさいよ。
ケイトという女の方を見るとまだこっちを睨んでいる。
はは~ん、そう言う事か。
職場だけでは飽き足らず、ディルの生活にまで足を踏み入れたいって事か。
妻である私に仕えるとか言いながら私たちの生活に入り込んでディルを奪い取る機会を伺うって魂胆ね。
ええ根性してるやないの。
ここまで派手に喧嘩売られたら私も買ってやろうじゃないの。
侯爵家のご令嬢が格下の私に仕えるなんて言った事を後悔させてやろうじゃん。
「ローゼ様、私に仕えるという意味を確認しておきたいのですが。
私はケイトリーン様よりも格下でほぼ商人のような生活を送っております。
そんな私と過ごす行為は花嫁修業などではなく、むしろ結婚から遠ざかる行為となりましょう。
ケイトリーン様にそれなりのお覚悟はおありでしょうか。」
「もちろんだ、娘たっての希望でな。
出来の悪い娘をそちらに押し付けるなんぞ無礼な振る舞いとは分かっているが、どうかこの依頼を受けて欲しい。
そちらに迷惑があればすぐ娘を返してもらって構わない。
どのような結果になってもそれ相応の謝礼はさせてもらうつもりだ。」
「それ相応の…?」
「ああ、マックレーン家は最近衣料だけでなく衛生分野にも事業を拡大しているらしいじゃないか。」
「ええ、そうですけど。」
「この国の軍施設は全て私が管轄している。
衣類関係の参入は難しいが石鹸や洗浄剤と言った物資であれば入手業者が決まっていなくてな…。
私が引退するとしても今であれば向こう20年は専売契約を結ぶことは可能だよ。」
パチッパチパチパチ…パチッッ!!
瞬時にソロバンが弾かれる。
この国には100か所以上軍の施設が点在しているから、そこに全てマックレーン家の洗浄剤類を卸すとなれば…。
しかも向こう20年契約っ…。
「こちらも商売ですので、失礼を承知で伺います。
そのお話は口約束ではなく早急に契約書を作成してもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。
大きな取引になるから最高法律所にも申請が必要だろう。
君が安心できる方法で進めてくれて構わないよ。」
「さらに失礼な事をお聞きしますが…もし、ケイトリーン様と私の関係が上手く成り立たなくてもその契約は破棄されませんか?」
「もちろんだ。
洗浄剤に関してはもともと入札を考えていたし、マックレーン家の品質は私自身が認めている。
今の時点で公私混合して無茶を言っているのは理解しているのだ。
これ以上上に立つものとして馬鹿な真似はしないさ。」
そ、そこまで言ってくださるのなら…。
「わ、分かりました。
ケイトリーン様との件承ります。」
もともと売られた喧嘩は買おうとしていたしね。
夫の職場でコソコソ動かれるより、堂々と敵陣に乗り込んでくる威勢の良さは買ってやろうじゃないの。
「おお、そうか。
無理を言ってすまない。
感謝する。」
「いえ、そんな…。」
洗浄剤の契約が固まってからそれは言ってください。
「立場のある人間であっても可愛い娘の力になってやりたいという親心が止められなくてな。
この子への罪滅ぼしに付き合わせて情けない限りだ…。」
ん?罪滅ぼしって聞こえたけど…。
「ああ、何でもない。
この歳になると色々喋りすぎてしまうな…。
では、準備出来次第ケイトリーンを向かわせてもらう。
よろしく頼む、ディラン、ルキア殿。」
「承知しました。」
ディルと私は同時に返事をした。
「よ、よろしく…お願いしますっ。」
ケイトリーン嬢は顔を真っ赤にして私を睨みつけながら挨拶していた。
真っ赤になるほど怒っていると言う事なんだろうな。
隣のディルが心配そうに声をかける。
何だかそれだけでイラっとしてしまう…。
「御心配には及びません、手当は受けました。」
相手は真顔だ。
ディルに心配してもらって特に嬉しそうにする訳でもなかった。
けど、何か嫌なもんは嫌だ。
「私、ローゼ家長女ケイトリーン=ローゼと申します。
どうぞ、お見知りおきを。」
ああ、ケイトリーンだからケイトなのね。
とかいうどうでも良い事が頭に浮かんだ。
ケイトリーンはカーテシーではなく胸に手を当て男性のように礼をする。
えっと…これはどう反応すればいいのかしら。
ああ、足を負傷しているしカーテシーは難しいからかな。
とりあえず、格上の令嬢がこちらより先に挨拶してくれているのだ、貴族としてはすぐにあいさつをし返さなければならない。
「ご挨拶が申し遅れました、私ディランの妻ルキア=マックレーンでございます。
こちらこそ、どうぞお見知りおきを。」
私の方はしっかりとカーテシーで返しておく。
ってか…さっきからこの人ずっと私を睨んでくるんですけど…。
これ、絶対私の事嫌ってるよね。
じゃなきゃ初対面でこんなあからさまに睨まないでしょ。
やっぱりあれだな…。
ディルの妻ってのが気に食わないんだろうな。
こんな事もいつかは起こるって分かってた。
職場に女性が居るって普通の事なんだからこんなことでいちいちイライラしてたらダメだよね。
まあ、いいわ。
私はこの人とは今後会う事もないだろうし、向こうもここまで嫌ってたらどこかで会っても避けるでしょ。
「まあ、そう言う事でルキア殿、私の娘ケイトをしばらく君のもとで仕えさせてもらいたいんだ。
ディランからは君が良いのなら構わないと言ってもらったところだ。」
は?
はあ?
はああああ?
そこのおっさん、今なんつった!?
あの女を私のもとで何するって…?
横で突っ立っているディルをじろりと睨む。
「俺はどちらでも構わないんだ。
ルキアが決めてくれ。」
ちょっと何それ。
私に決めさせて自分は部外者って立場に逃げるって事?
てか、この女は何考えてんの?
何で嫌いな私と一緒に過ごす事に拒否しないのよ。
あんた、自分の父親止めなさいよ。
ケイトという女の方を見るとまだこっちを睨んでいる。
はは~ん、そう言う事か。
職場だけでは飽き足らず、ディルの生活にまで足を踏み入れたいって事か。
妻である私に仕えるとか言いながら私たちの生活に入り込んでディルを奪い取る機会を伺うって魂胆ね。
ええ根性してるやないの。
ここまで派手に喧嘩売られたら私も買ってやろうじゃないの。
侯爵家のご令嬢が格下の私に仕えるなんて言った事を後悔させてやろうじゃん。
「ローゼ様、私に仕えるという意味を確認しておきたいのですが。
私はケイトリーン様よりも格下でほぼ商人のような生活を送っております。
そんな私と過ごす行為は花嫁修業などではなく、むしろ結婚から遠ざかる行為となりましょう。
ケイトリーン様にそれなりのお覚悟はおありでしょうか。」
「もちろんだ、娘たっての希望でな。
出来の悪い娘をそちらに押し付けるなんぞ無礼な振る舞いとは分かっているが、どうかこの依頼を受けて欲しい。
そちらに迷惑があればすぐ娘を返してもらって構わない。
どのような結果になってもそれ相応の謝礼はさせてもらうつもりだ。」
「それ相応の…?」
「ああ、マックレーン家は最近衣料だけでなく衛生分野にも事業を拡大しているらしいじゃないか。」
「ええ、そうですけど。」
「この国の軍施設は全て私が管轄している。
衣類関係の参入は難しいが石鹸や洗浄剤と言った物資であれば入手業者が決まっていなくてな…。
私が引退するとしても今であれば向こう20年は専売契約を結ぶことは可能だよ。」
パチッパチパチパチ…パチッッ!!
瞬時にソロバンが弾かれる。
この国には100か所以上軍の施設が点在しているから、そこに全てマックレーン家の洗浄剤類を卸すとなれば…。
しかも向こう20年契約っ…。
「こちらも商売ですので、失礼を承知で伺います。
そのお話は口約束ではなく早急に契約書を作成してもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。
大きな取引になるから最高法律所にも申請が必要だろう。
君が安心できる方法で進めてくれて構わないよ。」
「さらに失礼な事をお聞きしますが…もし、ケイトリーン様と私の関係が上手く成り立たなくてもその契約は破棄されませんか?」
「もちろんだ。
洗浄剤に関してはもともと入札を考えていたし、マックレーン家の品質は私自身が認めている。
今の時点で公私混合して無茶を言っているのは理解しているのだ。
これ以上上に立つものとして馬鹿な真似はしないさ。」
そ、そこまで言ってくださるのなら…。
「わ、分かりました。
ケイトリーン様との件承ります。」
もともと売られた喧嘩は買おうとしていたしね。
夫の職場でコソコソ動かれるより、堂々と敵陣に乗り込んでくる威勢の良さは買ってやろうじゃないの。
「おお、そうか。
無理を言ってすまない。
感謝する。」
「いえ、そんな…。」
洗浄剤の契約が固まってからそれは言ってください。
「立場のある人間であっても可愛い娘の力になってやりたいという親心が止められなくてな。
この子への罪滅ぼしに付き合わせて情けない限りだ…。」
ん?罪滅ぼしって聞こえたけど…。
「ああ、何でもない。
この歳になると色々喋りすぎてしまうな…。
では、準備出来次第ケイトリーンを向かわせてもらう。
よろしく頼む、ディラン、ルキア殿。」
「承知しました。」
ディルと私は同時に返事をした。
「よ、よろしく…お願いしますっ。」
ケイトリーン嬢は顔を真っ赤にして私を睨みつけながら挨拶していた。
真っ赤になるほど怒っていると言う事なんだろうな。
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