夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第8話 なんで止まったんだ?

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魔樹が止まった…

「なんだ…?なんで止まったんだ?」

『情報提示。こちらに敵性体、個体名、陸草鰐グラスゲーターが3体近づいて来ています。』

「なんか止まったね?」

「はい。どうしたんでしょう?」

優子マメ達も、止まったことに気がついたようで、不思議そうに首を傾げながら周りを見ている。

(ナビさん、なんで止まったんだ?なにかあるのか?)

『回答提示。旅する魔樹大老トラベルトレンダーの脅威になる敵性体が、旅する魔樹大老トラベルトレンダーの感知範囲に侵入したのが原因です。
現在は、攻撃を受けた際に倒れないよう、地中に根を張り姿勢を安定させています。』

脅威ってことは、陸草鰐グラスゲーターはこの木を相手に出来る程の大きさってことなのか?
もうそれは、ワニじゃなくて怪獣じゃないか…?

(ナビさん…陸草鰐グラスゲーターってそんなにデカイのか?俺はどうしたらいいんだ?)

『情報提示。陸草鰐グラスゲーターの体長は5m程度、雑食性で咬合力が非常に強いため、成長途中の旅する魔樹大老トラベルトレンダーにとっては、脅威になる存在です。
マスターであれば、毒液の檻ベノムケージによる防壁を準備すれば、対処は可能です。』

思っていたより小さかったのと、対処出来ると聞いたので、少しだけ安心できた。
それならさっさと準備してこよう。

優子マメ、シーホ。魔樹が止まったのは、さっき話してた魔物モンスターが来るからみたいだ。」

「え?ワニがくるの?どこどこ?」

「やめ!バカか!落ちるぞ!」

「わ!引っ張る方が危ないよー」

いきなり枝の端から身を乗り出した優子マメの腕を、咄嗟に掴んで引き寄せる。
文句を言われたが、落ちたらどうする気なんだって話だ…考えなしに動くのはやめてほしい…

「落ちるよりはマシだ。それより、俺は下に降りて迎撃準備をしてくるから、みんなはここに…」

「なんで?私も行くよ?」

「わ、私だって!」

一々彼女達に指示していたら、それこそ手遅れになる。
いつナビさんから警告が来るかも分からないけど、そんなに時間はない筈だしね。
全員で行くとか、正直邪魔でしかない…危険になるだけだから、ここから動かないで欲しいんだが…

「ダメだ。下に降りても、優子マメ達に出来ることはないだろ?危ないだけだからここにいろ。」

「私達にも出来ることはあるよ。危ないのはボンも一緒じゃん?」

シーホも頷いている…
言い合いしてる時間はないってのに…何で引いてくれないんだ?

『情報提示。陸草鰐グラスゲーターの反応が移動速度を上げました。到着まで2分です。』

おいまじか!?

「ちょ!もう時間ねーから!?俺は行くけど絶対降りるなよ!?毒蔦縛ポイズンアイビー!」

優子マメ達の返事を聞かずに、毒蔦を出して枝の根元と自分の体を結び、枝の端から飛び出した。
掴んだ毒蔦に魔力を流すと、一気に毒蔦が成長し、ドンドン長く伸びて行く…
感じとしては、緩いバンジーみたいなものなんだが、思った以上に速度が出たため、少し冷や汗をかいてしまった…
地上に降り立つ少し前に、魔樹の幹を蹴り、少しだけ離れた場所に着地する。

ザ…ゴロゴロ…

「あ、危な…」

綺麗に着地出来ずに転がってしまった…
二度とこの降り方はしない…

ズン…ズン…ズン…

地面に降りると、さっきまで感じなかった振動を足の裏に感じる…
顔を上げると、こちらに向かって来ている陸草鰐グラスゲーター達の姿が目に入った。

「ナビさん!罠の指示を!」

『要請受諾。毒液の檻ベノムケージの領域指定を開始します。旅する魔樹大老トラベルトレンダーから離れ、接近中の魔物モンスター側に移動してください。』

ナビさんの指示通り、俺は魔樹に影響しない場所に毒液の檻ベノムケージによるバリケードを作っていく。

GURRRRRAAAA…
GYAAAAA…

『情報提示。接敵します。旅する魔樹大老トラベルトレンダーの所まで戻って下さい。』

陸草鰐グラスゲーターが近寄る前に、なんとか合計12個の細長い毒液の檻ベノムケージを魔樹の三方を囲むように配置することが出来たが、既に声が聞こえるくらいに近寄って来ている…

GAAAAAAAA!!

「おいおい…」

魔物モンスターの叫び声に振り向くと、2足歩行で土煙を上げて疾走する、陸草鰐グラスゲーターの姿が見えた。

見上げるほどの大きさのワニは、口を大きく開けて迫ってくる…
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