3 / 14
2
しおりを挟む
数日後、辰夫が不慮の事故で亡くなったという知らせが、サークル員に広まった。
「ちょっと、どういうことですか? 先輩は、交通ルールをきちんと守る人だったのに」
寅雄は他の先輩たちに事情を聞こうとしたが、他の先輩たちはいずれも、「いや、実はおれたちも詳しく知らないんだ。ただ、極左組織の発表だというだけで」と繰り返すだけだった。それどころか、何か目に見えない魔物にでも、おびえているようだった。
(おかしい。これは絶対、裏で何かある)
寅雄は他の先輩たちを当てにせずに、自分で調べてみることにした。
サークルは、基本的に言論の自由が保障されており、上級生による下級生への不当な介入やイジメはない。もちろん、それは上位機関である極左組織も同様で、表面的にはサークル員は自由意志で極左組織に支持を表明しているように見える。しかし、その表情には、明らかに本心からの言葉ではない、よそよそしさが見てとれた。
そこで寅雄は、ちょっとしたトリックを考えた。独裁者のヒトラーは、オカルト好きだったという例に漏れず、サークル員はだいたい、オカルト好きである。そこを利用してみるのだ。まず、何くわぬ顔をして、
「先輩方、ふさぎこんでいても仕方ないですよ。気晴らしに飲みにでも行きませんか?」
と誘ってみた。先輩たちは、「そうは言ってもな……」などと参加をしぶっていたが、寅雄が「俺の行きつけの店ですよ。俺の先輩だって言えば、割引してくれますから」とダメ押しすると、「そうだな。辰夫のことで、いつまでもふさぎこんでてもダメだ。行こう」と、ようやく飲み会に行くことを同意した。
「ちょっと、どういうことですか? 先輩は、交通ルールをきちんと守る人だったのに」
寅雄は他の先輩たちに事情を聞こうとしたが、他の先輩たちはいずれも、「いや、実はおれたちも詳しく知らないんだ。ただ、極左組織の発表だというだけで」と繰り返すだけだった。それどころか、何か目に見えない魔物にでも、おびえているようだった。
(おかしい。これは絶対、裏で何かある)
寅雄は他の先輩たちを当てにせずに、自分で調べてみることにした。
サークルは、基本的に言論の自由が保障されており、上級生による下級生への不当な介入やイジメはない。もちろん、それは上位機関である極左組織も同様で、表面的にはサークル員は自由意志で極左組織に支持を表明しているように見える。しかし、その表情には、明らかに本心からの言葉ではない、よそよそしさが見てとれた。
そこで寅雄は、ちょっとしたトリックを考えた。独裁者のヒトラーは、オカルト好きだったという例に漏れず、サークル員はだいたい、オカルト好きである。そこを利用してみるのだ。まず、何くわぬ顔をして、
「先輩方、ふさぎこんでいても仕方ないですよ。気晴らしに飲みにでも行きませんか?」
と誘ってみた。先輩たちは、「そうは言ってもな……」などと参加をしぶっていたが、寅雄が「俺の行きつけの店ですよ。俺の先輩だって言えば、割引してくれますから」とダメ押しすると、「そうだな。辰夫のことで、いつまでもふさぎこんでてもダメだ。行こう」と、ようやく飲み会に行くことを同意した。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる